62話 お礼参り
食事を平らげ、レストランの外へ出る。
「そうだ! ヒナタさん! まだお礼もしたいですし、一緒にお祭りを回りませんか?」
「お祭りをですか?」
「あぁ、嫌ならいいんです・・・」
「いや全然そんなことないですよ! 一緒に回りましょう!」
「そうですか!」
すごい可愛いなこの人。なんか考えていることが耳に出ている。
「ほら! 早く行きましょ!」
「は、はい」
クルトさんは耳が後ろにぺったんこにたたんでいるから怖いのかな? でも尻尾をブンブン振っているから嬉しいのかな? わかんないや。
「これやりたい!」
とミミくんが指を指したのは、金魚すくい?
いやよく見ると金魚では無い。いや金魚なんだが、本当に“金”の魚なのだ、他にも銀色が混じっているような奴もいる。すごい成金になった気分。
でも上の看板には『キンメッギョ釣り』と書いてあった。
恐らく金メッキなのかな?
「お兄ちゃんもやろ〜!」
「うん、いいよ!」
1回銅貨2枚だった。お金を渡すと、店主から渡されたのはお椀と小さな釣竿? を渡された。
竿の先にはラメのようなものがたくさん付いた様な小さな玉がついていた。
「なんですか? この玉?」
と店主に質問してみると
「あぁこいつらは光るものに食いつくんだよ」
「へぇ〜」
光るものに食いつくんだ、だから身体が金色になったりしてるのかな?
「あ! モコ! キキョウ! 遊んじゃダメ!」
「いにゃ!!」「・・・」
モコとキキョウは竿の先に垂れてある玉を手でペシペシとしている。可愛い、すごく可愛いのだが、ダメなもんはダメ!
竿を水中に垂らしてみると、いきなりキンメッギョが食いついてきたのだが、1匹食いつくと、その1匹にまた別のが食いつき、また別のが食いつく。
最終的に4匹釣ることが出来た。もしかして光るものって・・・自分たちも入ってるのかな? チョット怖くなった。
「カプ」
「あ! キキョウ! ダメだって!」
キキョウはキンメッギョに食いついて離れようとしない。野生の目をしている。なんとかキキョウを引き離すと
「お兄ちゃん! 見て見て! いっぱい!」
「凄いね! ミミくん!」
「でしょ!」
ミミくんはフンとドヤ顔をしている。子供は無邪気で可愛いなぁ。
そういえば、もしあの時にミミくんが攫われていたらどうなっていたんだろう・・・なんであの人たちは攫おうとしたんだろう・・・
「ヒナタさん! ヒナタさん!」
「は、はい!」
「考え事ですか? それよりキンメッギョを調理してもらいに行きますよ!」
「はい、キンメッギョを調理しに・・・調理!?」
今、調理と言ったのか? 金魚を? いや金魚じゃなくてキンメッギョなのだが・・・食べれるの?
「本当に調理するんですか・・・?」
「えぇ、ヒナタさんはここらの生まれじゃないんですか?」
「まぁ・・・そうですね」
生まれは地球の日本だから、確かに生まれはここらじゃない。
「じゃあ馴染みないかもしれないですが、脂が乗ってて意外と美味しいんですよ! キンメッギョ!」
「そうなんですね!」
とキンメッギョ釣りの隣のお店へ移る。
「食べ方はどうしますか?」
店の店主に聞かれる。正直何がいいのかが分からない。
「1番美味しい食べ方はなんですか?」
店主は数秒悩んだ素振りをすると
「まぁ焼くのが1番だな!」
「あ〜じゃあそれでお願いします」
「あいよ!」
数分、その場で待っていると、意外とすぐに焼けたらしい。
「はいお待ち!」
「ありがとうございます」
お皿に乗せられ、金色だったところはもう剥げていて、身が出ていた。本当に金メッキだったんだ。
邪魔にならないようにミミくん達とベンチへ座る。
「じゃあいただきましょうか!」
「はい!」
食べてみると、確かに脂が乗っていて美味しい焼き魚って感じ。鯛とかに近い? ような気がする。とにかく普通に美味しかった。
「にゃん」「んみゃ〜」
モコとキキョウ、特にキキョウはとても気に入ったみたいだ。
そして食べながら気づいたのだが、チラホラと獣人の方がいる。猫しか興味がなかったから気づかなかったが、色んな種の獣人の方がいる。
こう見ていると差別なんてあるのかなと思うほど、仲良く喋っている様子すら見える。
「お兄ちゃん! 次行こう!」
不意にミミくんに話しかけられる。またボーッとしてしまっていた。
「うん!」
その後も祭りを楽しみ、気が付けば日が沈んでいた。
「じゃあそろそろ時間ですね」
「えー! まだ遊びたい!」
「だ〜め! また明日遊べばいいでしょ?」
「・・・でも」
ミミくんが駄々を捏ねている。楽しいと帰りたくない気持ちはすごくわかる。
「じゃあヒナタさん、俺たちはこっちだから」
「バイバイ、お兄ちゃん! 猫ちゃん!」
「ではありがとうございました」
「はい、おやすみなさい」
「にゃん!」「みゃ」
こうして、ミミくん達と分かれ、僕たちは自分たちが泊まっている宿へ向かう。
宿の近くへ着くと、宿の前にはガラの悪そうな人が3人たむろしていた。
あれじゃあ宿へ入れないんだけど、どうしようと考えていると
「あー!! アニキ! あいつです! 昼間のクソガキ!」
と指を指される、よく見ると昼間のガリガリのミミくん誘拐未遂の人だった。
アニキと呼ばれた人はこちらを睨んでくる。
正直、前の世界だったらチビっていただろうが、キキョウの威圧に比べたら怖くない。
「おい、兄ちゃん! ちょっと来てくれるか?」
とアニキと言われた人が僕の前に立ち言ってくる。スキンヘッドで頭にタトゥーを入れていて、明らかに堅気の人じゃない。
「嫌です、なんで行かないといけないんですか?」
「俺らにもメンツってもんがあるんだよ!」
と怒鳴られるがここでついて行ったら思うつぼだ。
「嫌です、 行きません」
「おま! ・・・」
するとアニキと呼ばれた人は、胸ぐらを掴もうとするが、物怖じしない僕を見て、何かを思い出したかのように目を見開いてもう一度僕を見つめる。
「お前・・・敬語・・・黒髪・・・いやまさか・・・」
アニキと呼ばれた人は、何かを考え込むように立ち止まる。
「・・・やめだやめだ!」
「な、なんでですか! アニキ!」
と言ってどこかへ行こうとする。
「・・・あの特徴・・・俺の知ってる奴と似てる・・・」
「ちょっと! アニキ!」
アニキと呼ばれた人が歩きながら、そう言うのが聞こえた。
とにかくなんとかなったので、そのまま宿へ入る。
「おう、 1日振りだな、ご飯食うか?」
と怖い顔をしたおじさんが聞いてきた。なんかすごい久しぶりな感じがする。
「いや、お祭りで食べてきたんで要らないです、すみません」
「そうか・・・」
ちょっと寂しそうだ、明日はちゃんと食べよ。
その後は部屋へ行き、そのままベッドへ倒れ込むように眠ってしまった。
気がつくと、見た事のある真っ白の空間に僕とモコとキキョウがいた。
「にゃにゃ〜! 久しぶりだにゃ〜!」
「ど〜も〜」
そこには今までのニールちゃんだけではなく、気だるけそうなピンク髪の幼女が横たわっていた。
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