59話 王都のお祭り
街中は、すごいお祭りムードだ。
街のあちこちで花吹雪が舞っているし、大きな道の両側には沢山の屋台が並んでいる。
屋台の物はなんかいつもより美味しい気がするよね。どこの屋台から行こうかな? せっかくだし熱々の物が食べたいな。
「速報だよ〜! 出来たてアツアツのニュースだよ!」
ん? アツアツ?
小柄の男の子が建物の屋根を飛び回りながら、チラシを『バサァ』と撒き散らしている。
チラシには、『速報! 王子のパーティに目を惹く謎の美女、猫を連れ登場!?』とデカデカと書いてあり、写真まで付いていた。
恐らくこの写真の女性は・・・・・・僕に見える。そしてこの猫は、紛れもなくモコとキキョウだろう。
「あれ? この猫ってあの子じゃない?」「確かに似てるね」「でも連れてるの男? の人だよ?」「顔はそっくりだな!」「でも男だから違う・・・?」
チラシを手に取った人達が僕達を注目しているが、僕の性別が違うから混乱しているようだ。
「にゃおん?」
モコが僕の足に身体を擦り付けながら、可愛い声を聞かせてくれる。
「可愛い〜!」「フワフワしてそう〜」「黒い方は鳴いてくれないのかな?」「ソワソワ」
「ママ! 僕も猫が欲しい!」「ダメよ〜お世話できないでしょ?」「出来るもん!」「・・・"に"ゃ"ぁ"〜! そこの僕、お兄さんはどう?」「○ねよ」「反応しちゃダメ! ほらあっちに行くよ!」
幼い少年が1つの闇を見たのを僕は見た気がする。
周りの注目が多少あちらに集まったので、そのうちにその場を離れる。
「じゃあ改めて! モコ! キキョウ! 楽しむぞ〜!」
「にゃ〜!」「みゃ!」
とりあえず1番近くにあったソースのいい香りのする屋台を覗いてみる。
覗くとコワモテのおじさんがイカ焼きを焼いているのが見えるが、元の世界のものよりサイズが桁違いに大きかった。
食べてみたいのだが、どうやって頼めばいいんだろう? 1つ? いやでも1つだと今見えてる奴全部になるのかな?
「お! 兄ちゃん! 食べたいのか!?」
「あ、はい」
屋台の前でウロウロしていたから、コワモテのおじさんが気を利かせて話しかけてくれた。
「おっし! どこが食べたい!?」
「え〜とじゃあ・・・足をお願いします」
「あいよ!」
おじさんは焼いている大きなイカの足を1本切って、串に刺してくれる。
「お代は銅貨5枚だ!」
「はい!」
「まいど!」
「おぉ〜」
イカの足1本でも普通のイカ焼き1つの以上の量がある。
猫カラコンでモコとキキョウが食べられることを確認してから、ナイフで皿に分ける。
「いただきます」
「にゃ〜」「みゃ〜ん」
口いっぱいに噛みごたえのあるブリブリのイカの身に、甘辛いソースが絡んで美味しい!
「美味しい!」
「にゃ〜!」「んみゃんみゃ」
モコとキキョウも声が出るほど美味しかったようだ。
美味しくてすぐに食べ終わってしまった。
次は何を食べようかな?
とりあえず適当に回って見てみようかな!
本当に色々な屋台が出ていた。
焼きそばのような元の世界でも見た事がある物から、見たことの無い果実を焼いていたり、綿あめようにフワフワした肉みたいなもの。
食べ物だけじゃなく、射的のように魔法で的を当てるようなもの。
大きな黒塗りされた箱に手を入れて中の物を取る、度胸試しのようなものまである。あ、デカい蜘蛛掴んでるあの人・・・見てるこっちがゾワゾワするね。
ほんとどこを観ても、どれだけ見ても飽きないくらい面白い物がたくさんある。
「おかあ〜さ〜ん! おとお〜さ〜ん! どこ〜!」
と叫ぶ子供の声がどこから聞こえた。