6話 出会い
ふぅ、ひとしきりモコの堪能した。
もちろんモフモフの体毛にも埋まってみた。
あれはいいものだ。
さて、これからの目標を決めないと。
王道としては街を目指すのが良いだろう。
でもどうやって街に行こう?
そうだ! サバイバルブックの後ろに地図があると言っていたな。
日向がサバイバルブックの地図のページを開くと、どこからともなく声が聞こえきた。
「初めまして。私はサバイバルブックの地図案内人、サフィラスと申します。気軽にサフィちゃんとお呼びください。」
女性的だが機械的な声で本から声がした。
でも妙に馴れ馴れしい。
「それでサフィラ・・・」
「サフィちゃん」
「サフィちゃん、これからどこへ行くのがいいと思う?」
なかなかにいい性格してる。
「はい、まずは自身の現在地を確認した方がよろしいかと。」
そういうと、地図の中に青く点が出てくる。
「そこが現在地です。そこから近くの街だと、このセイカイギ国に属する街、タナシバの街を推奨します。」
地図の中に赤い点が光る
「タラレバ?」
「タナシバです。アホ。」
「え? 今アホって言った? ねぇ」
「言っておりません。タナシバの街は人間族が統治する街ですが他の種族も大勢います。割合としましては人間族60%、他の種族40%となります。そしてタナシバの街は紡績の街でもあります、衣服が少ない現状ここで衣服を揃えるのがよろしいかと。」
うん、明らかにアホと言われた気がしたけど、まぁ良いか。
確かに衣服なんて今着てるものしかない、言ってることは正しいな、このサフィちゃん。
「うん! タナシバの街にしよう! モコも良いか?」
「ガウ!」
おぉ、内蔵に響く鳴き声だな。
「では私はこれで」
「あぁ! ありがとう!」
そういうと声が聞こえなくなった。じゃあこの赤い点を目指して行こう!
でもどうやって行こう?
走る? いや走っても5日はかかるだろう。
とりあえず、こういう場合は道に出た方がいいだろう。
幸いな事に道には歩いて5分もしないで着けた。
「この道を行けばタナシバの街に行ける!」
「ガウ! ガウ!」
そして歩きながら考えた。モコに乗れば2日で着くのだろう。だが問題があるモコが乗せてくれるかどうかだ。
「モコ、背中に乗っても大丈夫か?」
「ガウ!」
なんなら乗ってくれと言わんばかりにモコは鳴いた。
「ありがとうモコ」
そういうとモコは伏せをするように這いつくばる。
その上に僕は乗る、とても暖かい、そしてフワフワだ。最高。
「じゃあモコ! 行こう!」
「ガウ!」
そういうとモコは立ち上がり、走り出した。これなら2日もかからないかもしれないと思った。
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結論 めっちゃ速い、途中で速すぎて首が取れそうになったので、今は抑えて走ってもらってる。
道なりに進んでいくと、なにやら前方が騒がしい、距離にして多分400mくらいだろうか。
100mくらいになると何をしているのかが見えた。
どうやら馬車が襲われているらしい。襲っているのはオオカミのように見える“物”が7匹、戦っているのは5人の男女。どうやら押され気味のようだ。
どうしよう、モコなら多分追い払えるが怪我をするかもしれない。
「モコ、前の人たちを助けられるかい?」
「ガウ! ガウ!」
モコはやる気のようだ。
「よし! 行こう!」
前の馬車に追いつくとモコはすぐにオオカミ1匹に噛み付いた。
「なぁ! なんだあの化け物は」
化け物? あんなに可愛い生き物いないだろ!
とりあえず
「助太刀します!」
「た、た、たすかる」
男の戦士風の人が答える。怯えているようにも見えた。
「ガォォォォン!!」
モコが今まで聞いたことない咆哮を放つとオオカミは金縛りになったように動けなくなった。これがモコのスキルか、すごいな。
そこからはモコの独壇場であった。
噛み付く、引っ掻く、体当たりなど、普通の攻撃なのだが、圧倒的な格の違いによる暴力だった。
5人の男女も動けていない。多分モコが怖くなったんだろう。
だが!あえて言わせて貰おう、うちの子最強!
そんなことを考えていると、馬車の中から太り気味の気の良さそうな男が出てきて話しかけてきた。
「魔物を追い払ってくれてありがとうございます。ところでそちらの魔物は・・・」
「魔物じゃないです! 猫です!」
「は、はぁ、とにかく本当にありがとうございました!」
まったくところで魔物と言ったか?
「すみません、魔物とはなんですか?」
そう質問すると先程の男女5人組の戦士風の男が答える。
「魔物は野生の動物とは別に“魔石”を宿した生物のことを言う。先程は助かった、街も見えてきて油断した。ほんとに君の助力がなかったら危なかったかもしれない」
「いえいえ」
なるほど魔物と動物はそんな感じの区別なのか。覚えておこう。
「申し遅れました。私はカール商会の会長をやっています、カールと言います、そしてこっちは」
と言うと今までカールの大きな身体で気づかなかったが影に小さな女の子がいた。
「あ、あ、あの、アイ、アイって言います」
恥ずかしがり屋さんなのかな? いやモコに怯えているよう見える。
「初めまして、僕の名前はヒナタって言います。こっちは猫のモコ、モコを解いてもらえる?」
「ガウ!」
そういうとモコの身体はまた光に包まれるといつものクリーム色の猫の姿に戻った。
やっぱこっちの姿も可愛い! 最強に可愛い!
「にゃおん!」
女の子のアイちゃんの目が輝いた。
おや? 猫好きの素質があるな。いいことだ。
「モコと遊んでみるかい?」
「い、いいの?」
「おう!モコ行っておいで」
そういうとモコはアイちゃんの足元にスリスリした。
アイちゃんは幸せそうだ。良かった良かった。
そこからは5人の男女の自己紹介をしてもらった。
戦士風の男の名前はガリスというらしい。スキンヘッドでちょっと顔が怖い。武器は大剣のような物を持っている、相当重そうだ。
マフラーを巻いた軽装の男はサインというらしい、茶髪でチャラそうだ。武器らしい武器を持っていないと思ったが、腰にしっかりナイフを沢山持っていた。小瓶も沢山見える。
ローブを着た女の人はアナリアというらしい、金髪で整った顔をしている。武器は杖のようなももの先に宝石がハマっているものだ。
修道服のような物を来ている女の人はセリアというらしい、金髪でおっとりとした見た目をしている。武器はメイスのようなものを持っている、怖い。
侍のような見た目をしている男の人もいる、名前はライガンというらしい、和服を着ていて刀を持っている。しかし髪色は白髪だ。
どうやら彼らは冒険者でガリスさんがリーダーらしい。
護衛の依頼を請け負ったらしいのだが、街が見えて油断してしまったらしい。
そこで魔物に襲われているところに僕とモコがたまたま出会ったらしい。
そして皆さんはタナシバの街に行く途中だったらしい。
そして僕は旅の田舎から旅をしてきたという事にした。ちなみに黒髪というのは珍しいらしく、あまり見かけないそうだ。
そういえば変態の加護を使っていなかった。今度実験がてらに変態の加護で髪色なんかを変えた方が良いかもしれない。
「どうでしょう、ヒナタさん私たちと一緒にタナシバに行くのは?」
とカールさんが提案をしてくれる。こっちとしては食料も無いし、モコと二人きりでは少し寂しかったところだ。
「はい!喜んで!」
そんな話をしているともう日も沈んで夜になっていた。
夜はモコが倒したオオカミをガリスさん達が解体して料理してくれた。
オオカミの肉は予想外に柔らかくて、ジューシーで塩加減も絶妙でとても美味しかった。
猫カラコンのおかげでモコも食べても大丈夫だということも分かった。
その後はガリスさんたちが夜の見張りをやってくれるらしい。
そこからはテントも寝袋もカールさんが貸してくれてモコと2人で寝た。
異世界での初めての夜、野宿を覚悟していたが快適すぎるくらいだ。やはり人助けをするといいこともあるもんだ。
「にゃお?」
寝袋の中にモコが潜ってきた、もこの暖かさが直に身体に伝わってくる、そしてフワフワだ。
ここで僕は眠りについた。
異世界で初めて見た夢は、猫だらけの楽園にいるようでとても幸せなものだった。
いつも夜遅くにすみません。
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