58話 リュジンさんと一緒
「ゔぅぅ」
何か息苦しい、目を開けても何も見えない。ただ慣れ親しんだようなことのある香りがする。
恐らくモコだと思う、そのまま顔の上にいるモコを持ち上げる。ちょっと痩せたのかな? 軽い気がする。
「・・・みゃ〜」
「え? キキョウ!?」
モコかと思ったらキキョウだった! まだ僕に慣れてないと思ってたのにこんなに懐いてくれたのか!
「キキョウー!!」
持ち上げたキキョウのお腹へ顔を埋めようとする。
「みゃ!」
あ・・・まだダメらしい、可愛い足でブロックされてしまった。でも近々させてもらえそうだ!
すると布団の中からモコが出てくる。
「にゃ〜」
「モコー! クンカクンカ!」
モコはもう抵抗すらしないでお腹を嗅がせてくれる。いい匂いだなぁ。
そういえばここはどこだろう? 見たことの無い天井、知らない壁、目の動く絵画・・・絵画。絶対リュジンさんの別邸だ。昨日は眠たすぎて途中からちょっと記憶が無い。
『バーン!』
『ビクッ!!』
扉が急に開いた。
「お兄ちゃん! 起きてー! 朝だよー!」
「あぁマリーちゃんか、おはよう」
「にゃん」「みゃん」
「そういえばお兄ちゃん」
「ん? どうしたの?」
「パパがいないの、知らない?」
リュジンさんがいない? カイナさんに処刑されたとかかな? ちょっと分かんないな。
「ごめんね、分からないや」
「うん! 分かった! ありがとうねお兄ちゃん!」
『ダダダダ』
マリーちゃんは走り去って行ってしまった。元気なのはいい事だ。
それよりリュジンさんがいないのか。
・・・そういえば、僕の隣の布団に何か膨らみがある気がしないでもない・・・
いやいやいや! さすがにあの人もそんな事はしないだろう!
「ゴクリ…」
めくるぞ・・・めくるぞ! 3.2.1でめくる!
「3.2.1」
『バッ!』
「やぁ! 良くねむ『バッ!』」
何も見えなかったし、聞こえてもない。
パジャマのリュジンさんなんていなかった、リュジンさんて誰?
「もうひどいじゃないか〜」
「な、なんでここにいるんですか!」
「そんな、忘れたのかい! 昨夜はあんなに愛し合ったのに」
「嘘だ! 僕はそんなことしていない!」
「良く思い出してみなよ! 昨夜馬車に乗ってから君が何をしたのかを!」
昨日の馬車に乗ってから・・・だんだん思いだしてきたぞ。
確か、馬車に乗ってから、リュジンさんの別邸に着いたあとに姿を元に戻して・・・
そうだ! お風呂を貸してもらったんだ! 久しぶりのお風呂気持ちよかったなぁ。
「うんうん、一緒に入ったよね」
なんでこの人は、僕の思考に入ってこれるんだ?
そしてお風呂入ったあと、今いる部屋に案内されて、すぐに寝た気がする。
あれ? この人いつ一緒に寝た?
「ふっふっふ! 教えてあげよう!」
「いや、いいです、どうせろくな事ないんで」
リュジンさんが自信満々に聞かせようとしてきたので、話を遮ることにした。
「聞いてよ! お願い!」
リュジンさんが土下座までしてくる。
「分かりましたから、頭あげてください!」
「・・・聞いてくれるのかい?」
「聞きますから、はやくしてください」
「なら教えてあげよう! 昨日の夜何があったのかを!」
「私は昨日の夜、マリーとカイナと一緒に寝ようと思ったんだ・・・でもね! その時にマリーに「お酒臭いからや!」と言われてしまって、私だけ部屋を追い出されたんだ・・・うぅ、今思い出しても泣けそうだ、うぅぅぅ」
「追い出されてどうしたんですか?」
「追い出されたあと、私はヒナタくんと寝ようと思い、この部屋に入った」
「いやいやいや! ちょっと待って!」
「ん? なんだい?」
「なんでそこで僕と寝ようと思ったんですか!?」
「1人じゃ寂しいだろう」
「あ、そうですか」
この人の思考回路は、なんなんだ?
大の大人が寂しいってなに? 大人になるとそういうこともあるのだろうか?
「しかし! 君は寝てしまっていた! 猫ちゃんたちは起きてたけどね! その後、私はヒナタくんの布団に潜り込みそのまま寝たわけだよ!」
「結局なにもしてないんですね」
「うん、そうだよ? ニヤニヤ」
結局何もなかったが、ニヤニヤ顔がウザイな・・・
「モコ、キキョウ、やってよし!」
「グルルル」「ガルルル」
「待って! 待ってよ! 死んじゃう! 死んじゃうから!」
「ぶべぇ!」
その後はなんとか一命を取り留めたリュジンさん。
「ぎゃあ、ぢょうじょく、ちゃべにいごぉか?」
「はい」
「にゃん」「みゃん」
リュジンさんと一緒に朝食を食べに向かう。
「おはようございます」
「おはようヒナタさん、あら、あなたどうしたのその顔?」
「ぃや、じょっどね」
「お兄ちゃんと猫ちゃんはここ!」
「うん!」
「にゃん」「みゃ」
とマリーちゃんの隣に座る。
朝食には、ベーコンとサラダ、スープとパンと牛乳が出てきた。全部美味しかったのだが特にサラダが色んな食感がして美味しかった。
「ヒナタくんはこれからは祭りを楽しむ感じかい?」
「はい、そうしようかなと思ってます」
「そうか、なら気をつけた方がいいよ〜」
気をつけた方がいい? 何か盗みとかがあるのだろうか? それとも詐欺?
「何に気をつけた方がいいんですか?」
「まぁ色々だよ。ぼったくり、喧嘩、盗人、滅多にないけど人攫いなんかもあるから、まぁ君ならよっぽど大丈夫だと思うけど」
人攫い・・・そんなこともあるのか・・・巻き込まれないように気をつけよう。
「ありがとうございます、じゃあ僕たちはそろそろ行きますね」
「うん! 分かった!」
そのまま外の門の前まで、お見送りをしてもらう。
「じゃここで」
「じゃあね、ヒナタくん、猫ちゃんたち、祭り楽しむと良いよ! あと旅を再開する時は教えてね! 絶対だよ!」
「分かりました、絶対報告します」
「ヒナタさん、モコさん、キキョウさんまたどこかで」
「またね! お兄ちゃん! モコちゃん! キキョウちゃん!」
「ヒナタちゃん! また女の子になりましょう!」
「いやです」
「ガーン……」
「ヒナタさん、お元気で」
「ヒナタ殿、気をつけて祭りを楽しんでくだされ」
「はい! ありがとうございました!」
「にゃん!」「みゃ!」
そしてリュジンさんの別邸を後にする。
「ヒナタちゃ〜ん!! また! また! やりましょうね!」
後ろから何か聞こえるが、無視してそのまま祭りへ行く事にする。
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