57話 誕生日会の終わり
二次誕生日会も大分時間が経ち、王様、リュジンさんがベロベロに出来上がっている。
「お〜いヒ・ナ・タ〜」
「なんですか? 陛下」
王様も相当酔っ払っていて、もうただのおじさんみたいになっている。
「なんでもないわ!」
「え〜??」
「陛下も悪ですね〜ハッハッハ!!」
「そうだろうそうだろう! ガッハッハッ!!」
王様だけでもちょっとめんどくさいなって思っていたのに、リュジンさんも合わさって、よりめんどくさくなってきた。
そう思っていると
『ゴツン!!』
鈍い音が王様の頭から聞こえた。王様の頭から煙のが上に昇っている見える。
傍らには王妃様が手をグーにして立っている。
王様は白目をむいて、気絶したように突っ伏している。
一緒にふざけていたリュジンさんは、酔いが覚めたようで顔を真っ青に染めている。
「ごめんなさいね〜ちょっと“これ”捨ててくるから待ってて貰える?」
「は、はい!」
王妃様は笑ってはいたが目が笑っていなかった、あれは完璧に怒っている。王妃様は王様を引きずりながら、闇に消える。
王様は尻に敷かれているのか・・・
「ヒナタさん、父上がすみません」
「いやいや! シヴァン様が謝ることじゃありませんよ」
シヴァン様から謝罪される。シヴァン様も大変なんだな。
「あ〜陛下やっちゃったね、ああなったら長いよ〜」
「危なかった、私もやられるかと思った・・・」
ロルド様があちゃ〜という顔でちょっとニヤついているような感じがする。
リュジンさんは、王様のようにならずに済んでほっとしているようだ。
「あら、やられないと思ったの?」
「ギギギギ・・・え?」
『グキ! ゴキ! グリン!』
リュジンさんはあられもない姿になった。
首ってあんなに後ろ向けるんだ・・・ピクピクしてるけど大丈夫なのかな? 死んでない?
「カイナさ〜ん、これどうします?」
ロルド様が床でのびているリュジンさんを指でつんつんしながら聞く。
「放っておきましょう、ゴミです」
「は〜い」
カイナさんも笑顔だったが、確実に怒っていた。
でもロルド様の対応もどこか慣れた感じがしている、もしかしていつもこんな感じなのかな?
「さ! うるさいのがいなくなったし、何かしない?」
「はい! マリーはお姉ちゃんの魔法が見たい!」
「ぼ、ぼくもヒナタさんの魔法見てみたいです!」
「へぇ〜ヒナタは魔法が得意なの? ボクも見てみたいな〜」
「・・・コクコク」
みんながもう見る気満々でこちらを見てくる。
「じゃあちょっとだけ」
水魔法で様々な猫を数え切れないほど造る。
ペルシャやマンチカンなどからヒマラヤンやソマリなどを毛の様子まで再現して、遊ばせて見せる。
「わぁ!!」
「足が短くて、可愛いのもいるわね!」
「可愛い、ふわふわな毛並みが触れそうです!」
「ヒナタは芸が細かいね」
『パァァ』
みんなが喜んでくれて良かったが、一つだけ問題がある。
色がない! 色がないのだ! 全部水色! いつか色を付けてやってみたい!
そう思いながら魔法を終わらせる。
「ありがとうございました」
『パチパチパチ』
「いや〜ヒナタちゃんの魔法は見てて楽しいね!」
いつの間にかリュジンさんが起き上がって拍手を送ってくれていた。
「・・・にゃ〜」「・・・みゃ」
モコとキキョウはもう眠そうだ。目をふわふわの手で擦っている。目を擦るところも可愛い! うちの子たち最強では!?
「あら、猫ちゃんたちはもうお眠なの? じゃあそろそろお開きにしましょうか」
「それじゃあシヴァン様! 一言お願いします!」
「えぇ!?」
またリュジンさんからシヴァン様に無茶振りがいく。
「え〜と、じゃあ・・・ありがとうございました?」
『おめでとうございます!!』
そう言って誕生日会が終了すると、リュジンさんたちはロルド様の近くに寄る。
「ほら、ヒナタちゃんも早くおいで?」
「? はい」
モコとキキョウを両腕に抱え、ロルド様の近くに寄る。
「さっきの魔法は見事だったよ、ヒナタ」
「ありがとうございます」
「今度はボクが見せる番だね」
と仮面の隙間からニコッと笑う顔が見える。結構仲良くなれたような気がする。
そう言うとロルド様の周辺の床が光る。
「ではシヴァン様、リリン様、陛下と王妃様によろしくね」
「はい! ヒナタさん、モコちゃん、キキョウちゃん、ロルドメンスさん、リュジンさん、カイナさん、マリーさん、今日は本当にありがとうございました!」
「ペコ」
「いえいえこちらこそ楽しかったです」
「にゃ」「みゃん」
「そうですか、良かったです!」
「じゃあそろそろ行くよ〜」
ロルド様がそういうと目の前が歪み、不思議な感覚に陥る。
次の瞬間には、パーティの行きで見た馬車の中にいた。
「えぇ!? なにこれ」
「これがボクの魔法だよ、じゃあまたねヒナタ」
そう言うとロルド様は一瞬で目の前からパッといなくなった。
「え?」
「あ〜ロルドもう帰っちゃったのか、ヒナタちゃんも呆けてないで出発するよ?」
「あ、はい」
「グレン! お願い!」
「かしこまりました」
やはりここは行きで来た馬車の中のようだ。グレンさんの声と同時に馬車が走り始める。
今日は色んなことがあったなぁ、女装? したのも初めてだし、ダンスしたのも、ナンパされかけたのも初めての事ばかりだった。
でも・・・
「ところでヒナタちゃん、モコちゃん、キキョウちゃん、今日は楽しかったかい?」
「はい! 楽しかったです!」
「にゃん!」「みゃんみゃ!」