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愛する猫と異世界へ  作者: 絵濡亥 家尾
リュクシルン国 王都
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54話 皇玉

 ピアノによる演奏が終わり、会場が明るくなるとシヴァン様は私に向き直る。


「ヒナタさんありがとうございました」


 とシヴァン様は、お辞儀をする。


「いえ、こちらこそ楽しかったです」

「そう言ってもらえると嬉しいです!」


 シヴァン様は、満面の笑みを見せてくれる。


「では僕はこれで」

「はい、ありがとうございました」


 こうしてシヴァン様と別れ、リュジンさんのところへモコとキキョウを迎えに行く。


「やぁ! ヒナタちゃん! 楽しかったかい?」

「はい、ところでモコとキキョウは?」


 モコとキキョウの姿が見えない。どこへ行ったのだろうか?


「あ〜それが・・・」

「?」

「実はかくかくしかじか」

「あ、そうですか」


 どうやらモコとキキョウは、マリーちゃんとカイナさんに連れられて、女子会に行ってしまったらしい。

 ならそこまで迎えに行かないと


「それってどこでやってるんですか」

「う〜んと、あそこ・・・」

「あ〜」


 指で指された先を見ると、女子達が集まっているのが見える。

 その中には、カイナさんとマリーちゃんはもちろんのこと、謁見の際に見た、王妃様や王女様までいる。

 見た感じ、モコとキキョウも注目の的にされていて、話が盛り上がっている様子だ。


 確かにあれに、男性は入れないかも。


「ちょっとリュジンさん行ってきてくださいよ〜」

「君も無茶言うねぇ〜さすがにあそこに行く勇気は私にはないよ、ヒナタちゃんが行きなよ!」

「え! さすがに私もあそこに行くのはちょっと」

「でも君、今女の子じゃん」


 ・・・確かに、でもあの会話に入っていけるだろうか? 正直ロイヤ〜ルな方と話が合う気がしない。

 でもまぁモコとキキョウ返してもらうだけだから、大丈夫かな?


「う〜ん、じゃあちょっと行ってきますね」

「うん・・・頑張りなよ・・・」


 うん? なんでそんな遠い目をしているんだ?


 そして私は、近づきやすいマリーちゃんの近くに行く。


「あ! お姉ちゃん!」

「にゃ」「みゃん」


 マリーちゃんの一言で全員の目が私に向く。


「あら、マリーさんのお姉様、シヴァンとのダンスはどうでしたか?」


 と多分謁見の時に王様の隣にいた、王妃様に言われる。


「あ、その、楽しかったです」

「それは良かった、どう一緒にお茶しない? あなたのことも色々聞きたいしね」


 これは断ったら、大変なことになりそうな予感がビンビンする。


「はい、ぜひご一緒させていただきます」

「そんな畏まらなくて良いのよ、ほらこちらに座りなさい」

「はい、失礼します」


 と王女様の隣の席に誘導されるがまま、座ってしまった。

 王女様はシヴァン様と同じ、綺麗な翡翠色の髪で、瞳は海のような青色をしている。


「さ、改めて自己紹介をお願い出来る?」

「はい、私の名前は日向って言います、よろしくお願いします」


「わ〜可愛い!」「きれいな顔立ち・・・」「珍しい髪色」「ヒナタ様、後でお部屋に・・・」

『パチパチパチ』


 自己紹介とかは少々苦手だったので、暖かい雰囲気で良かった。


「じゃあ、お茶会を続けましょう?」


 と女子会は続けられる。会話の内容は、普通のことばかりで「あの、3番街? のところにある焼き菓子屋さんが美味しいよね」とか意外と庶民的な話だった。


 モコとキキョウを迎えに来ただけなんだけどな〜どうしようかなと考えていると、ドレスの袖を『ちょこちょこ』と引っ張られた気がした。


 なんだろうと思い、そちらに視線を落とすと、王女様が無表情で、袖を引っ張っていた。


「何かありましたか?」

「・・・・・・」


 王女様は無表情のままで袖を引っ張ってくる。


「ヒナタさん、リリンは恥ずかしがり屋であまり言葉を話さないんです」

「あ〜そうでしたか」


 なるほど、確かに隣に知らない女性が座ったら、ちょっと嫌かもしれない。このくらいの年頃の子は特にそうだろう。


「名前、リリン様って言うんですね、素敵な名前ですね」


 リリン様のリリンって鈴の音みたいで、いい名前だと思った。


「・・・・・・あ・・・あり・・・」


 お? 喋りそうだぞ? すごい可愛らしい声をしている。


「あり・・・・・・がと・・・」

「いえ、ホントの事を言っただけです」


 袖を引っ張る力がさらに強くなる。ちょっと仲良くなれた気がした。


 すると、またパッと会場の灯りが消える。


「あら、もうそんな時間なのね」


 そんな時間? 何が始まるんだろうと思っていると、最初に入ってきた扉から、それは大きな台車で何かが運ばれてきた。


「ヒナタさんは皇玉(こうぎょく)を見るのは初めて?」


 と王妃様から質問される。皇玉なんて初めて聞いた、宝石の類だろうか?


「皇玉? 初めてです」

「そう、綺麗なものよ、よく見てなさい」

「はい」


 皇玉と呼ばれたものは、台車で会場の中央まで運ばれるが暗くて球体のような影しか見えない。


「さぁ! 会場の皆様! 魔力をお貸しください!」


 会場にマイクで喋ったような声が鳴り響く。


 周りの人達は手を前に出して、魔力を皇玉に集めているように見える。

 王妃様も金色のような色の魔力を手から出している。


「さ、ヒナタさん、魔力を出して、魔力を出したら勝手に皇玉に吸い込まれるから」

「は、はい? わかりました」


 言われた通りに手から魔力を放出してみる。

 放出された私の魔力は、皇玉に吸い込まれるように集められていく。


「綺麗な魔力ね」


 王妃様から魔力の色を褒められる。

 私の魔力の色は、綺麗な夕焼けのような色をしている。


「・・・・・・綺麗・・・」

「ありがとうございます、リリン様も綺麗ですよ」

「・・・・・・ありがとう・・・」


 リリン様にも褒めて貰えた。リリン様の魔力は、王妃様と同じく金色の中に翡翠色が混ざっている。


「にゃん!」「みゃ〜」


 モコとキキョウが私たちも見てと、私の方を見て鳴いてくる。


「モコとキキョウも綺麗だよ!」


 モコとキキョウも魔力を出している。

 モコは真っ白な魔力をしている、真っ白すぎて銀色のようにも見える。

 キキョウは黒色の魔力の中に私と同じ夕焼け色の魔力が混じっている。

 ふたりとも綺麗だ、本当に綺麗だ。


 そしてみんなの魔力が皇玉に集まっている。


 虹の七色はもちろん、ピンクや灰色、金や銀、黒や白、本当に考えつく全ての色が皇玉に集まっていく。


 それらの色は皇玉の中で、綺麗に混ざり会う。

 しかし赤と青がぶつかり合っても紫にはならず、それぞれの色として混ざり合う。


 まるで様々な色の波が渦をまいているような、綺麗な1つの宇宙のような、僕の表現力では表現出来ないほど綺麗な光景がそこにはある。


「綺麗・・・」

「にゃ・・・」「みゃん・・・」


 私たちは心を奪われたかのように皇玉を眺める。

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