53話 ダンスの時間
結構な量があったデザートをすべて食べ終わる。
大分お腹がきつい、食べすぎた。
でも元の世界で食べた事がありそうなものから、初めて食べるもの。美味しいものばかりだったから反省はしてない!
「いや〜お姉さん綺麗な顔して、結構食べるんだね」
と白髪のイケメン風の男に話しかけられた。何か用だろうか?
「お姉さん、どうでしょう、あっちの外でお酒を飲むのは?」
「いや、大丈夫です」
お酒は未成年だから飲めないし、この人はちょっとチャラそうで誠実さが無さそうでなんか・・・嫌だ。
「じゃあ、お茶ならどう?」
「いや、いいです」
「じゃあちょっと外を散歩するのは?」
「いや、いいです」
その後も「じゃあ」「じゃあ」としつこく迫ってくる。
めんどくさいな〜と思っていると、会場がいきなり暗くなり、中央の大きな剣だけが光り輝いて、会場にピアノの音だけが鳴り響く。
そうすると白髪の男は
「では、ダンスはどうでしょう?」
とニヤニヤしながら、ダンスを申し込んでくる。
でも残念、先客がいるもんね!
「ごめんなさい、先客がいるんです」
そう断ると、白髪の男は顔を真っ赤にして、怒鳴り散らしてくる。
「なんなんだ君は! さっきから断りやがって! この俺が! 申し込んでいるのに断るなんて! この俺のお誘いだぞ! 誰だ! そいつの名前は!」
といきなり男が怒り出した、モコとキキョウももう限界のようで、『グルル』と唸っている。どうしようと思っているその時
「僕だよ」
「あぁ!? あ、あぁ、シヴァン・リュクシルン様・・・失礼します」
と笑顔ではいるのだが、明らかに怒っているシヴァン様がいつの間にか、白髪の男の後ろに立っていた。
白髪の男は、シヴァン様と気付いてから、さっきまで赤くなっていた顔を真っ青に染めて、どこかへ消えてしまった。
「ふぅ、ヒ! ヒナタさん! お迎えに上がりました」
「ふふ、ありがとうございます」
シヴァン様が先程とは別人のように緊張しながら、ぎこちなくお辞儀をしてくれる。こちらもお辞儀で返す。
「ヒナタさん、お手をお貸しして貰えますか?」
とシヴァン様は手を差し出してくれたので、私もそれに答えるように手を乗せる。
「ではこちらへ」
モコとキキョウには、リュジンさんのところへ行くように言い、リュジンさんは手でグーとハンドサインをしてくれる。
その後はシヴァン様に連れられるまま、会場の真ん中、大きな剣の下まで行く。
もしかして1番目立つところじゃない?
「ヒナタさん、ここに手を当ててもらって大丈夫ですか?」
「はい」
言われるがままに手を繋ぎ、腰に手を当てると、今まで鳴っていたピアノが別の楽曲に切り替わる。
そのまま、シヴァン様の動きに合わせながら、身体を動かす。
すると、シヴァン様に足を踏まれてしまった。
「す、すみません」
足を踏まれたのだが、シヴァン様の体重が軽いからかそこまで痛くはなかった。
「大丈夫ですよ」
「すみません」
また足を踏まれる。
「すみません、すみません!」
「ふふ、大丈夫ですよ、緊張してるんですね」
「そ、それはもう、緊張してます///」
「それより、先程はありがとうございました」
と先程の白髪の男の件のお礼を伝える。
「いえいえ、僕も貴女を取られると思ってちょっとムキになってました」
「そうですか、それでもありがとうございました」
「は、はい!」
シヴァン様は恥ずかしがりながら、答えてくれる。
そのままダンスは順調にいく。意外とダンスが簡単なもので、私でも踊ることが出来た。
そうしてピアノの曲が終了する。
『パチパチパチ』
周りからは拍手が鳴り響いている。
シヴァン様は私に向き直り
「では、ありがとうございました! 楽しかったです」
とお辞儀をしてくれる。
「いえ、こちらこそありがとうございました」
正直、ダンスの時間が経つのが早い気がした。
そして次のピアノの曲が流れ始めるが、シヴァン様はその場に立ち尽くして、モジモジしている。
「ヒナタさん」
「はい?」
「もう一曲どうでしょうか?」
「喜んで!」
正直、楽しかったので喜んでOKをする。
マリンさんの言ってた事もちょっとわかった気がする。
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その頃、馬車の警備をしているマリン。
「ヘクシュ」
「お大事に、マリン嬢」
「いえいえ、ふふふ! これは良い予感がします!! フッフッフッフ!」
「マリン嬢が壊れたぞ、アロン殿」
「放っておけ」
その夜、お城の外では女性の笑い声が鳴り響いたそうな。