51話 ダンスのお誘い
僕たちは、リュジンさんの後ろを付いていきながら、玉座へと向かう。
玉座へ向かう途中、周りから注目をされている気がする。
私の格好変かな?
「あの子は誰だ?」「ルクレシオン辺境伯の連れか?」「綺麗な顔立ち・・・」
「注目されてるね」
リュジンさんがニコニコな笑顔で私にコソっと伝えてくれる。
「変じゃないですか? 私の格好」
「大丈夫、君はただ胸を張って歩いてれば良い」
「分かりました」
言われた通り、胸を張って歩く。
そのまま玉座にたどり着くと、リュジンさん達が軽くお辞儀をする。私もそれに合わせて頭を下げる。
「良い良い、頭なぞ下げなくても」
王様であろう人が口を開き、私たちは頭を上げる。
見た目は少し太っているが優しそうな目でこちらを見てくる。
「ありがとうございます陛下、そしてシヴァン様この度は誕生日おめでとうございます!」
「あ、ありがとうございます! ルクレシオン辺境伯!」
シヴァン様と呼ばれた、王子様は翡翠色の髪の毛が目立つ、あどけない美少年という感じだ。
「ところでそちらの美しい女性と猫ちゃんは誰かな?」
陛下から私たちに質問が飛んでくる、ほかの王族の方々の視線も私に集まる。
「こちらの女性は、マリーの姉とその従魔です、陛下」
「ほう、そんなに年の離れた姉がいたんだね」
それは流石に無理がありそう・・・大丈夫かな?
「陛下・・・嘘です」
「え?」
「え!?」
私も声が出てしまったがそれ以上に王様は驚いた様子で、リュジンさんを見ている。
「ガッハッハッ! わしに嘘をつくのは、先にも後にも君くらいだよ!」
「ありがとうございます」
しかしすぐに笑い飛ばす。なんか仲良さそうな雰囲気だ。
「まぁいずれはマリーの姉にしますがね」
やっぱりまだ諦めていなかったのかこの人。
「そうかそうか! なら姉で間違いないな! 君の名前はなんだい?」
リュジンさんが私に目配せをしてくれる。
「私の名前は日向、そしてこちらは、モコとキキョウと申します、陛下」
「ヒナタって言うのか! そしてモコとキキョウ! いい名前だ! 今回は楽しんでいってくれ!」
「ありがとうございます」
すごい話しやすい雰囲気が全身からにじみ出ていて、意外と緊張せずに話せた気がする。
それよりも
「・・・」
シヴァン様がすごい私の事を見てくる。何か粗相でもあったかな?
「あの〜シヴァン様、何かありましたでしょうか?」
王族の皆様、リュジンさん達は何故かニコニコしながら、シヴァン様を見ている。
「ほら、シヴァン、言わないとわかんないぞ?」
王様がシヴァン様に何かを言っているが、ここまで聞こえない。
「ヒ、ヒナタさん!」
「は、はい!」
いきなり大声で名前を呼ばれたので、声が大きくなってしまった。
「あ、あ、あの! 僕はシヴァン・リュクシルンって言います! ぼ、僕といっしょにだ、ダン、ダンスを踊って、くれませんか・・・?」
「・・・え? ダンス?」
ダンス? え? 王子様と? 私みたいなのと踊っても大丈夫なのだろうか?
「私なんかと踊って大丈夫なんですか?」
「だ、だ、大丈夫です! 貴女がいいんです!」
「・・・プシュー///」
ここまで素直に言われたら、何か目覚めてしまいそうだ。顔が火照っているのが分かる。正直悪い気はしない。むしろ・・・いやいやいや! 私は男だ!
それにダンスなんか踊ったことがないし・・・
「私、ダンスを踊った事がないのですが、それでも大丈夫ですか?」
これはちょっと意地悪な気がするが、本当の事だ。
しかしシヴァン様は
「大丈夫です! 僕がリードします!」
「そ、そうですか・・・」
周りの視線も生暖かい気がする。ここで断ることは私にはできない。
「分かりました、シヴァン様、謹んでお受けします」
「本当ですか!? ではダンスの時に迎えにいきます!」
「はい」
シヴァン様の顔が目に見えて笑顔になった。美少年の笑顔は可愛いなぁ。
周りのみんなもニコニコでこちらを見てくる。すごく恥ずかしい。
早く切り上げて欲しいとリュジンさんに目配せをすると
「では陛下、私たちはこれで」
「分かった、ではヒナタは後ほどよろしくな」
「は、はい」
こうして、王様の謁見を無事に乗りきった。
謁見後にも、何回か話しかけられそうになったが、リュジンさんが上手くカバーしてくれ、乗り切れた。
「いや〜ヒナタちゃん、モテモテで大変だね!」
「笑い事じゃないですよ!」
「・・・にゃ〜」「・・・みゃん」
モコとキキョウは何か複雑そうな様子に見える。
「まぁいいじゃないか! ちなみにダンスの時間はまだだから美味しいものでも食べて、楽しんでおいで」
「は! そうだ、美味しいもの食べないと!」
忘れていた、美味しいものを食べないとここに来た意味が無いと言っても過言ではない。
「ふふふ、じゃあ僕たちは、ちょっと用事があるから、ここからは別行動だね」
「あ、はい」
「じゃあ楽しんでね〜」
「じゃあね、お姉ちゃん!」
「ではまた後ほど」
「はい! また後で!」
と言って、リュジンさん達は偉そうな人が集まっているところに行ってしまった。
じゃあ私たちは美味しいもの食べて、ダンスの時間まで待ってよう!
「モコ、キキョウ、美味しいもの食べるよ!」
「にゃん!」「みゃん!」