40話 勧誘
オンバインさんのお店を後にしたあと、僕たちはまた屋台で買った串焼きをベンチに座って食べていた。
この街も結構遊んだし、そろそろ次の街に行こうかなと考えていると、隣にスーツを着ているが、ピエロのメイクをしている男性が座ってくる。
「ちょっといい〜かい? 今は話を聞く時間はあるか〜い?」
何かイントネーションと喋り方が個性的な人だな。
まぁでも時間はあるし、話を聞こうかな。
「えぇ、大丈夫です〜よ」
ちょっと真似してみちゃった。
「お〜お、なかなか面白いひ〜と。単刀直入に言うとこの街で働かないか〜い?」
「働く? ですか?」
「う〜ん、君さ〜最近流行り〜の鍛冶屋で客び〜きしてただろう? 僕も見て〜たんだけど、上手だな〜ってね!」
客引きしてるところ見られていたのか、ちょっと恥ずかしいな。あと喋り方うざくなってきたなぁ・・・
でもこの街で働くってどういう事なんだろう?
「まぁ簡単に〜言えば〜あっちこっちにある乗り物の客引きをやらない〜かって勧誘だよ!」
「いや、いいです、僕は冒険者をやって世界を旅したいんで」
この街で働くとなると、当分旅なんて出来ないだろう。
「ま〜まぁそう言わずにど〜お? 給料はたか〜いよ?」
給料が高いのか、でもなんで高いんだろう?
僕はこの街に来てから、食事にはお金を払ったけど、乗り物とかにお金を払っていない気がする。どこからそのお金は来ているんだろう?
「なんで給料が高いんですか?」
純粋な疑問を聞いてみた。
「? あ〜あ! き〜みは知らない〜んだね! それなら! 付いてくるといいさ〜」
とスーツピエロが立ち上がって、手を引っ張ってくる。
モコとキキョウも後ろに付いてくる。
路地裏に入ったと思ったら、目の前にはスウィートマウス・・・もしかして
「さぁ! こ〜こに飛んで込んでみな〜さい!」
やっぱり?
「べ、別の入り口はないんですか?」
「な〜いね! い〜から行って〜こい」
「マジ!?」
「ギャランベチュ!」
背中を押されてスウィートマウスに食べられる。
食べる音すごいな、こいつ。
スウィートマウスに食べられてから、恐らく体感5分経っただろう。
「カ〜ッペ!」
吐き出される、汚ぇ音だな。
気の所為かもしれないが身体が臭い気までする。
「さぁこ〜こが! この街の中枢にして資金源だ〜よ!」
「おぉ〜」
「にゃ〜」
「みゃ〜」
真っ白な壁! 真っ白な床! 真四角の巨大な箱の中にいるみたいだ!
あっちこっちの天井から虹色? の光が中央に集まってでかい球体を成している。
「あな〜たはこの街で、眠気に〜襲われたり、疲労が〜溜まったり、しなかった〜だろ?」
「確かに・・・そうです」
確かにそうだ、ここ何日も寝ていないし、疲れすら溜まっていない、普通に考えればおかしい事なのに目の前で色々なことが起こり過ぎて、考えてなかった。
「その疲労〜と眠気〜があの光!」
すごいな! 疲労と眠気を人から吸い取れるのか!
でも、疲労と眠気を集めたところでどうしてお金になるんだろう?
「疲労〜と眠気がおか〜ねにならないと思ってるね」
「はい、誰が買うんですか?」
「それは考え方の〜問題だ〜ね。もっと頭を柔らかく、ビジネ〜スを考えようよ。結構色々なところに買い手はいるん〜だよ!」
なんか遊園地のような所に働いてる人からビジネスって聞きたくなかった・・・
「例えば誰が買うんですか?」
「そうだ〜な、まぁ宿屋さ〜んとか、どこかの王〜族とか、いろいろだよ〜」
王族! そんな人たちまで買うのか!
・・・なんで?
「なんで買うんですか?」
「う〜ん? まぁ使ってみたら分かるよ〜」
「そうですか・・・」
使ってみるという事は、飲むのか? 吸うのか? と考えているとピエロが口を開いた。
「ただ人の欲求は結構強いんだよ」
そう笑うピエロは、笑ってはいたが不気味で怖かった。
蛇が身体を這っているような、不意に来る寒気のような、嫌な感じだ。
その後は勧誘の話をお断りさせてもらった。
正直悪い人では無いと思ったのだが、怖かったし、まだ僕は旅を続けたい。
でも旅が終わったら、ここで働いてみるのも良いかもね。
さて! この街も結構遊んだし! そろそろ次の街を決めるとしよう!
「サフィちゃん!」
「はいは〜い」
あれ? ちょっとラフ?
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