39話 報酬
今回のオンバインさんからの依頼、結論を言うと大成功だった!
どうやら僕の客引きが目立ってくれたらしく、沢山の人が付いてきてくれた。
加護と水魔法、そして火魔法を使うことで上手くいった気がする。火魔法は元々適性があり、予備知識があったためなのか意外と簡単に使うことが出来た。
朝からお客さんが途切れることなく入り続け、最後のお客さんが帰った時には、もう深夜になっていた。
「ヒナタァ! 大成功だな! ありがとう!」
「いいえ、オンバインさんの作ったものが良かったからですよ!」
「そ、そうかぁ? 猫ちゃ━」
「モコとキキョウ」
「モコとキキョウもありがとな!」
「・・・にゃ」「・・・みゃ」
モコとキキョウはもみくちゃにされて、ぐったりしている。
今日は大成功だったが、まだ問題は残っている。
「ですがオンバインさん、まだ問題は残ってますよ」
「? 何が問題なんだ? 今日はいっぱい客が来たじゃないか!」
「確かにそうなんですが、まず接客が下手です」
「そ、それはこれから慣れていく」
「あとは僕たちがいなくなったあと、お客さんがちゃんと来るのかです」
もしかしたらこれが1番の問題かもしれない。
僕たちがいなくなってから、お客さんが誰も来なくなった。でも僕たちは関係ないよ、なんて話にならない。
「なのであと2日間、僕たちは手伝いますが、その後は手伝いません」
「そ、そんな事言うなよぉ」
「これはオンバインさんのためでもあるんです、分かってください。もしダメだったら、その時はみんなでまた1からやり直しましょう!」
「・・・分かった! やってみよう!」
そこから2日間、僕たちは手伝いをした。
1日目よりもさらに、多くの人が来てくれたが忙しすぎて、何がなんだか分からないくらいに疲れた。
そしてここからは、オンバインさん1人でやってもらう。
「じゃあオンバインさん、頑張ってください!」
「にゃ!」
「・・・みゃん」
「おう! ありがとな!」
オンバインさんが1人でやる日が来た。
ちょっと心配なので、加護で変身して外から見守る。
どうだろう、人来てくれるかな?
オンバインさんも中で、またソワソワしている。
しかしそんな緊張も杞憂に終わった。
それから3日間、見守り続けたが普通に多くのお客さんが来ていた。
オンバインさんも最初の一日目に比べて、大分接客が上手くなっていた。
そしてお客さんの話に聞き耳を立てていると、どうやら冒険者同士の間で結構な噂になっているらしい。
こんなにお客さんが、来てくれているなら、恐らくこれからも大丈夫だろう。
閉店後のお店に入るとオンバインさんがホクホク顔で見てくる。
「ヒナタ! ありがとう! 本当にありがとう!」
と手を握ってくる。ドワーフの手ってでかいんだなぁ。
「ヒナタ、お前に頼んで本当に良かった!」
「いえいえ、これからも頑張ってください!」
「あぁ!」
今回の依頼、いきなりの事だったので驚いたが、なんというか・・・楽しかった、楽しかったんだ。
初めてやるお店の改善、客引き、接客どれも楽しかった。
「そういえば報酬を渡さないとな! ちょっと待ってろ!」
オンバインさんは奥に入っていき、刀を持ってきた。
「これをやる!」
オンバインさんが鞘から抜くと、その刀身が出てきた。
白と黒の混ざりあった刀身、そして猫の模様が刻まれている。可愛いなぁ。
しかしそれよりも鞘から抜かれた途端にオーラがハッキリと見える。
あれは・・・モコとキキョウ?
「これを貰ってくれ! 銘を猫刀日向、お前用に作ってみたんだ! 今度は、どこかに行っちまう前にな! ガッハッハ!」
「こんなすごいものいいんですか!? しかも僕、刀なんて使った事ありませんよ!」
この刀の刀身は僕の身長と同じ位の長さがある。
刀も使ったことの無いのに僕に使えるわけが無い。
「使わなくてもいい、俺の自己満足だ。
ただ俺の気持ちが入った刀、受け取ってくれないか? 今度こそ渡したいんだ」
「・・・そういう事なら、ありがたく受け取ります。ありがとうございます!」
「あぁ、喜んで貰えて良かった」
刀を手渡しで受け取る。
よく見ると鞘にも猫の模様がある。細かい所まで手が込んでいて本当に可愛いく仕上がっている。
「じゃあ! これで依頼完了だ! ありがとな、こんな無茶ぶりに答えてくれて・・・」
「いえ、こちらも楽しかったです!」
「にゃん!」
「みゃ!」
「そうか! それは良かった、この街はまだ楽しいところがあるから、楽しんでいけよ!」
「はい!」
「にゃ!」
「みゃん!」
こうして僕たちは店を後にした。
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