35話 オンバインの依頼
手紙の内容は、タリバさんがオンバインさんに行っていた仕送りを辞める事。この手紙を僕達が届けるという事。手伝って貰うと良いだろうという事。
店を自分で構えているのに、仕送り? 相当売れていないのだろうなと思った。
「なんで仕送りなんかしてもらっているのかと、そういう顔だな!」
「え! いや・・・」
そんなに顔に出ていただろうか。申し訳ない。
「いやいいんだ! 聞いてくれ! 俺の話を!」
オンバインさんは、元々タリバさんと同じ店で鍛冶師をやっていたらしい。
しかし、タリバさんのように自分の店を欲しくなり、別の街でお店を出した。
その街がここ、ロリングに店を構えたようだ。
だがそれが問題だった。
ロリングは、確かに冒険都市と名がついてはいるが、実際は、遊びたい人が多く来る都市だった。
少なからず武器を買いに来る人はいるが、それでは生活できず、タリバさんに仕送りしてもらっていたらしい。
「え〜と、タリバさんのところに帰るのは無しですか?」
「それはほんとに最後の手段だ! まずはこの依頼をどうか受けて欲しい!」
オンバインさんは頭を下げる。
まぁ正直やってみるのも全然ありだ、まだこの街には居るし、なにより・・・なんかこの人が可哀想に思えてきた。
「分かりました、その依頼受けます」
「ほんとか! ありがとう!」
「モコとキキョウも大丈夫?」
「にゃ」「みゃん」
よし! さっそく! 改善点を探してみよう!
「まずは、どこを直したら良いのか、探してみましょう?」
「といっても、俺はこれが良いと思ってるからなぁ」
「そうですか・・・じゃあ僕が探すんで、どうやったら人が入ってくるか、考えていて貰っても大丈夫ですか?」
「それなら任せろ!」
「じゃあそういうことで」
まず、さっきから思っていたが汚い! よく見たらホコリだらけだ!
他にも、武器の置き方が雑! タリバさんの店は綺麗に並べてあって見やすかった! この店はなんか、樽とかに入れてあって、良いんだけど、どこに何があるのか分かりづらい。
この2つが主な原因だと思う。
他にも原因はある、特に入りたいと思う要素が少ないのも原因だと思う。
この街のお店は結構黙って歩いているだけでも、声をかけてくれて、「楽しそう!」という気持ちが出てきて入りやすい。簡単に言うとこの街は、客引きが上手い人が多い。
ここら辺を直さないと多分売上は上がらないだろう。
このことをオンバインさんに伝えると、その場に『ドサッ』とノックアウトされたようにうつ伏せで倒れてしまった。
「ひなたぁ、そこまで駄目か? この店は」
「はい、ダメじゃなかったらこんな事にはなってません」
「ぐはぁ!!」
完璧にトドメを刺してしまったが事実だ、これを最低限直さないと、この街では無理だろう。
この街のお店は、恐らくというか相当、見せ方や言葉が上手い人ばかりだ。
よく考えたら、水の中を滑る店もスウィートマウスの近くに店を構える理由、商売文句、全部考えていたように感じてきた。
「じゃあまずは、掃除からしましょうか!」
「もう、無理かもなぁ・・・」
「はいはい! やりますよ!」
「にゃん!」「みゃん」
倒れているオンバインさんを無理やり起こして、掃除を開始する。
オンバインさんが店の奥から掃除道具を持ってくるが、それすらもホコリが被っている!
「オンバインさん・・・今まで掃除をしたことは?」
「・・・・・・」
「したことは?」
「・・・ない」
「はぁ、とにかくやりますよ!」
「お、おう!」
ここまでとは思っていなかったが、乗りかかった船だ、最後までやりきろう!
ある程度、掃除が終わってあとは、雑巾がけをするところだ。
バケツに水魔法で水を貯める。
ここで気づいた。
操水の指輪でお店丸ごと、水洗い出来るのではないかと。
「オンバインさん、やってみたい事があるんですけど、やってみてもいいですか?」
「何する気だ? まあいいが・・・」
「ありがとうございます」
バケツに貯めた水を操り、床や壁に水を滑らせる、もちろん武器には当てないように。
丁寧に、丁寧に水を這わせる。
難しいな、結構集中力が必要だ・・・
「お、おう、なんだこりゃ!」
驚かれると、ちょっとドヤ顔をしたくなってくるが、まだ集中だ!
本当にガリスさん達には感謝だ。
最後に水をバケツに戻すと、水は真っ黒に染まっていた。
そして壁の本当の色が出てきた。
「そうだ、この壁はこんな色だった・・・」
とオンバインさんが壁を懐かしそうに撫でるように触っている。
大理石のように白く、所々様々な色に輝く紋様が見える壁。とても綺麗だ。
「さて! 掃除が終わっただけですよ! 本当に難しいのはここからです!」
「おぉ、おお!! 」
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