33話 モコとキキョウの魔法
「さて!次はどっちの猫ちゃんがやるのかな?」
「猫も出来るんですか!?」
「もちろん! だけど指輪じゃなくて腕輪になるけどね〜」
とハクさんが言う。
モコとキキョウも出来るのか! それは見てみたい!
モコとキキョウは顔を見合わせてる。
「にゃ!」
どうやらモコが先にやるらしい。
「は〜い分かったよ〜、じゃあここに肉球を乗せてもらえる?」
「にゃん!」
モコはプレートにジャンプして乗る。
再びプレートが光り、フラスコの中に何かが見える。
あれは・・・子猫の時のモコと・・・子供の僕?
「ふ〜んふん! こういう青春もありだよね!」
僕が子供の時にモコを拾ってからの、今までの全ての思い出が映し出される。
初めて抱き上げた時、初めて肉球で踏まれた時などほんとに色々なもの見える。
最後は笑顔のモコと僕が“おでこを合わせて”1つの光の球体になり、花火のように打ち上がる。
淡いピンク色の花火が弾ける。
「はい! 猫ちゃん! 腕を前に出して〜」
花火のように弾けた中からは腕輪のようなものが出てきた。
モコはピョコンと肉球を前に出す。
すると腕輪のようなものがモコの腕に付いた。
痛がっている様子はなく、腕輪にはおでこを合わせている、猫と人間が彫られている。色はピンクゴールドでモコの毛並みとすごくあっている。
「にゃん!!」
モコはハクさんにイタズラされた事は忘れて、とても上機嫌になっている。
「さて! 次はそっちの黒猫ちゃんだね!」
「・・・みゃ」
「さ! 肉球をかざして!」
キキョウは静かにプレートに登り、肉球をプレートにかざす。
プレートが光り、フラスコの中に何かが見え始める。
黒い霧? 黒いモヤ? ドス黒い赤の何かが全てを覆っている。
とても嫌な感じがする。
これが・・・瘴気?
「・・・」
瘴気の奥には、見えづらいが子猫が泣いている様子が見える。
助けを呼んでも誰も助けてくれない。気づいてもらえない。一人で瘴気に抗う子猫の姿。
しかし瘴気が段々と薄くなり、晴れていく。
晴れた白い光の中から出てきたのは、泣いている子猫を抱き抱える僕の姿。
愛情を込めて名前を付ける、僕の姿。
一緒に隣を歩く僕とモコの姿。
最後は僕の胸にキキョウが飛び込んで1つの光の球体になり、花火のようにまた打ち上がる。
紫色の中に赤色が入った様な花火が弾ける。
「はい、腕を出して、ズズ」
え? ハクさん泣いてる?
キキョウが腕を前に出すと、先程と同じように腕輪がキキョウの腕に付く。
キキョウはガラスの様な紫を基調とした腕輪に、白と黒とクリーム色のハートが散りばめられていて、とても可愛いし、似合っている。
「・・・みゃん」
キキョウは照れくさそうに鳴く。
モコとキキョウどっちにも僕が出てきて、とても嬉しい!
「うんうん! 愛されてるんだね! お互いに!」
「はい! そうなんです!」
「みゃん!」
「・・・」
モコは自信満々に答えてくれるが、キキョウは答えてくれなかった。そこがまた可愛いのだが。
『ピー』
と研究所内に音が鳴り響く。
「おっと次のお客さんが来たみたいだ」
ハクさんはモニターのようなもの前に移動すると、手元にあるマイクのような物に向かって喋る。
「信ずるもの騙されたまへ」
とハクさんが言うと、モニターに映る男性が、壁に激突する。
なるほどこういう仕組みで弄んでいたのか!
「君たちも早く帰りな〜出口はあっちだよ〜」
と指が指された方には、嫌な思い出のある“口”が待機している。
そういえば、この街に来てからお金を取られた事がなかったがお金は要らないのだろうか?
「あの! 代金はいくらですか?」
ハクさんは何か分からないような顔をして、『あ〜』という顔をする。
「要らないよ〜君この街は初めてだろう? まぁ街を出る時に分かるよ〜とにかく早く帰りな〜」
街を出る時に分かる? まぁそう言うなら・・・
「は、はぁ、じゃあありがとうございました!」
「にゃん!」
「みゃ」
とスウィートマウスの前に立つと
「ガプンチョフ!」
また食べられる。そして個体によって食べられる時の音が違うのか、芸が細かいなこの街は!
「ヌンベッチョ!」
と吐き出される。いや音! こんなに違うのか!
優しい甘い匂いがするのは同じだけど。
外に出ると、いい匂いがする。スウィートマウスの匂いじゃないよ! 食べ物匂い!
道の端で屋台が出ている。
そういえば興奮して結構食べていなかったな。
屋台は串焼きを焼いているが、『ウソニク』と書いてある。
嘘肉? 匂いは完全にお肉を焼いているいい匂いだが、どういう事なんだろう?
猫カラコンでモコとキキョウも食べられる事を確認する。
「モコ、キキョウ、あれを食べよう!」
「にゃんにゃん!」
「みゃん!」
2匹ともお腹ぺこぺこの様子だ。
「すみません、串焼き6つください!」
「はいよ! 6つで銀貨1枚と銅貨2枚ね!」
僕はお金を取り出し、ちょうど払う。
「まいど!」
ちょうどいい椅子か、何か近くにないかなと探していると、カラフルな口が付いたベンチがあった。
また口か・・・まぁ座れるなら良いか。
「さて! 食べよう!」
モコとキキョウにも皿に出して、串から外してあげる。
「いただきます!」
「にゃ!」
「みゃん!」
串焼きを噛むと『サクッ』という音をたてて、噛み切れる。とても爽やかな甘酸っぱさが口の中に広がる。
なるほど果物なのかな?
次の1切れを噛むと『むにっ』とした感触がある。次は爆発的な甘みが口の中に広がるのだが、あとを引かない甘さだ!
美味しいな! というか食べてて楽しい!
モコとキキョウもびっくりしながら食べているが、美味しそうに食べているから良かった。
串焼きを食べ終わると、ベンチ付いていた“口”がゴミを手から勝手に回収して食べてくれた! すげぇ便利!
そしてちょうど昼頃くらいの時間になる。
良い時間なので僕達は魔物の解体をお願いしていた冒険者ギルドへ向かうことにした。
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