25話 森の中の野宿
タナシバの街の最後の朝。というか早朝?
モコとキキョウは既に準備万端のように起きている。
「モコ、キキョウ、おはよう! そして出発の準備は良いか!」
「にゃー!」
「み、みゃー」
早朝ということもあり、食堂に降りても人は少なかったが、宿屋の女将はしっかりと起きていた。
その後は蜘蛛の巣窟で最後の朝ごはんを食べ、部屋の鍵を返した。
さて、まずはどこの門から出ればいいんだろう?
こういう時の
「サフィちゃーん」
まぁサバイバルブックはアイテムボックスの中なんだけどね!
しかし目の前のアイテムボックスが勝手に開き、サバイバルブックが出てくる。
「え? まじ?」
「まじです、まずは東門は進んでください。ちなみに東門はあっちです。」
とサバイバルブックから光の矢印が出る。
「おぉ、ありがとう、サフィちゃん!」
言われた通り、矢印の方向へ真っ直ぐ進んでいくと、街の門が見えてきた。あと見覚えのある人影も。
「ヒナタ〜!」
「トールさん!? 何してるんですか!?」
門の前にトールさんが仁王立ちで待っていてくれた。
「あ? 見送りに決まってんだろ、他に何するんだ?」
「・・・いつからいます?」
と聞くとトールさんが、指で何かを数え始める
「え〜っと分かんない! アッハッハッハッハ」
「えぇ〜????」
「にゃん・・・」
「み〜・・・」
モコとキキョウも流石に引いている。そこまでして待っていてくれたのか・・・
「あ、そうそうこれ! あいつらからのプレゼントだ」
「え? あぁありがとうございます」
トールさんから渡されたのは、様々な綺麗な石が付けてあるブレスレットだった。
「これは?」
「あぁあいつらが『綺麗な石拾ったからプレゼントしたい!』って聞かなくてな、だから俺がブレスレットにしたらいいんじゃないかって」
「そうなんですか! すごい綺麗ですね! ありがたく使わせてもらいます」
「そうしてくれ、じゃあ・・・・・・またな」
やばい、泣いてしまいそうだ、そんな悲しそうな声やめてくれよ
いやここは僕が元気にいこう!
「はい! またどこかで!」
「にゃん!」
「みゃ」
門を出て、僕は猫と旅に出る。
トールさんは僕が見えなくなるまで、手を振ってくれていた。
さて! まぁゆっくり行くとしよう!
そういえば道はさっきから整備されていない。
どう進めばいいんだろう?
目の前はほぼ森だ。というか森しかない。
「サフィちゃん! これどう進めばいいの?」
「はい、サバイバルブックの光の矢印に従ってもらえばロリングに着きます。」
「え? 光の矢印、森の中指してますよ?」
「はい、森です」
「え?」
「森です、突っ切ってください」
どうやら森の中を行くしかないらしい。
「よし! 張り切っていきましょう! な! モコ?キキョウ?」
「にゃ〜」
「みゃ!!」
キキョウが張り切っている、もしかして森が好きなのかな?
森へ入ると暗いのかなと思ったが、木々の間から光が漏れていて、意外と明るく、マイナスイオンが出ている雰囲気がした。
しかし、歩きにくいな、木の根が所々出ている。
キキョウはルンルンで歩いている、モコも何か楽しそうだ。良かった良かった。
頑張って歩いていると、モコがいきなり変身して、唸り出した。
「グルルルル!!」
キキョウもスキルの魔力体を使い、初めて会った時と同じ姿になる。
黒の中に赤く線のように生える体毛、緑と紅に光る瞳。あの時に感じた圧倒的オーラ。だけどあの時感じた嫌な感じはしない。
味方だとここまで頼もしいのか。
「ガルルルル!!」
僕もアイテムボックスから短剣を取り出す。
モコとキキョウが警戒しているほうを見ると、奥から緑の太った魔物が1匹出てくる。
怖い、怖いがあの時のキキョウほどじゃない。
「ブルル━━」
「グルルァァァ!!」
モコが魔物の声を遮って咆哮で相手を動けなくしている。
「ガルルルァァァ!!」
動けなくなっている間にキキョウが相手の首を落とす。
正直ここまで圧倒的だと何も言えない、けれど何故かモコとキキョウがソワソワしてると言うかウキウキしてる、もしかしてうちの猫、戦闘狂?
「グルルァァァ!!」
「ガルルァァァ!!」
モコとキキョウが叫ぶ、『キィィン』という反響音が耳に響く。
間違いない、戦闘狂だ! うちの猫!
かっこいい!でも可愛い! 最強!
とりあえず2匹に変身を解いてもらって、魔物を丸々アイテムボックスに入れて先に進むことにした。
その後は休憩して、歩いてを繰り返していると、あっという間に夜になった。
今日はここで野宿することにしよう、ちょうどいいスペースもある。
正直、森の中の野宿にワクワクしてます!
よし! テントを立てよう! この前はガリスさん達に立ててもらったからな、自分で立ててみよう!
アイテムボックスから、買ったテントを取り出す。形は完全にでかいおにぎりだ。
え〜と、え? ボタン押すだけ? おにぎりの真ん中に確かにボタンがある。
〈ポチ〉
ボタンを押すとおにぎりがちゃんとテントの形になる。
おぉぉ、これはなんか地球にもありそうだけど異世界ってすげぇぇ!
中はめちゃくちゃ広い! これなら猫たちとも大股開きで寝れそうだ!
そして野宿と言ったら! 焚き火! 焚き火をしよう!
でも焚き火ってどうやるんだろう? なんか生木はダメとか聞いたことあるような無いような・・・
ん?このためのサバイバルブックでは? サフィちゃんに気を取られすぎて気づかなかった。
サバイバルブックを見るとやはり生木はダメらしい。
なんか水分が・・・あれらしい・・・
水分? 水? これって操水の指輪でなんとかなるのでは?
まぁダメ元でやってみよう! カールも挑戦するならタダって言ってたしな!
「モコ、キキョウ、木の枝を集めてくれるか?」
「にゃ」
「みゃん」
結構大量の木の枝が集まったな、さて、やってみるか!
操水の指輪に魔力を通すと、指輪に嵌められている石が光る。
あとはイメージだ! 木から水を出すイメージ!
おぉ、おぉ!! 出た! 水出た!
木って意外と水分含んでるんだな!
早速役に立ったな、操水の指輪!
さて、ここに無限マッチで火を付ける!
ぽい! ぽいぞ! 憧れの野宿っぽい!
その後は興奮しすぎてあまり覚えてないが、保存食の肉を使った料理が意外と美味しかった、なんかこういう時の雑な料理って美味しいよね!
あと従魔用のエサが猫缶みたいなものでモコとキキョウがめちゃくちゃ美味しそうに食べていた。
よし! あとはテントで寝るんだがその前にナタリーに買った方がいいと言われた、この魔物避けの水!!
正直効果があるか分からないがナタリーはテントの周りにかけとくだけで良いって言ってたな。
あとはテントの中に寝袋! モコとキキョウ用のクッションと毛布!
よし! 寝る準備OK!
あとは寝るだけだ!
「モコ、キキョウ、おやすみ!」
「にゃ〜」
「みゃ〜」
・・・なんか、興奮して寝れないが、これも醍醐味?
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