23話 ナタリーさんの勇気
冒険都市ロリングに行く準備をするために、まずは何が必要なのかを考えないと。
とりあえずカール商会に行って、カールに聞けば分かるかな?
というかカール、商会にいるのかな?
まぁ行ってみないと分からないか、とりあえず行ってみよう!
「モコ!キキョウ!行くよ〜」
「にゃ!」
「みゃ〜」
そういうことでカール商会に着いた。
まずはカールを探さないといけないんだけど…
商会のトップが会ってくれるんだろうか?
分かんないけど店員さんに聞いてみるか!
あそこの店員さんに聞いてみよう。
「すいません」
「はい」
「カールさんって今どこにいますか?」
「頭領ですか?頭領なら今は別の商会へ行ってます。何か御用がありましたら、伝言をお伝えしますが、どうしますか?」
「いいえ、大丈夫です、ありがとうございました」
「いえいえ、また何かありましたら、お呼びください」
カールは今居ないのか・・・
どうしよう、店員さんに旅のことを聞いても分かるものなのだろうか?
でも同じ店員に聞くのはちょっと恥ずかしいな。
「ヒナタ・・・ここで何やってるんだ?」
女性の声で後ろから呼び止められると、ラフな格好のナタリーさんが立っていた。
「何って・・・お買い物?」
「そりゃそうなんだが・・・」
「ナタリーさんもお買い物ですか?」
「今度、騎士団の遠征があってな、その買い物だ」
「へぇ〜そうなんですね」
そうだ!ナタリーさんに聞けばある程度必要なものが分かるんじゃないだろうか!
「ナタリーさん!旅に必要な物って何か分かりますか!」
「お、おおう、そんな距離を詰めてくるな!」
これは失礼した。改めてナタリーさんに事情を説明すると
「・・・そうか、この街を出て旅をするのか・・・
それで私に必要なものを知らないかと?」
「はい、そうなんです。何が必要か知りませんか?」
「いや知ってるぞ、そして多分全部ここで揃うものばかりだ」
「本当ですか!」
「あ、あぁ」
おっとまた距離を詰めてしまった。
しかし、ここで全部揃うならありがたい!
そのあとはナタリーさんに言われた通りのお買い物を済ませた、保存食に従魔用の食べ物、テントなど買ったのだが、無限マッチの様なものを見つけた。どうやら棒の先端に魔石の粉? 散りばめたものらしく、何回でも使えるらしい、異世界ってすげぇ・・・
そのあとはいい時間だったので、ナタリーさんと夕食を取る事になった。
「ここでいいかな?」
「はい!」
ナタリーさんの紹介で着いたのは、オシャレなところだった。
中に入るとこれまたオシャレで、なんか“水で出来た魚”が浮いてる、ファンタジー!
「ヒナタ、ヒナタ!」
「は、はい」
「行くぞ?」
ボーっとしてしまっていた。
席に案内されるとそこは個室だった。
「モコとキキョウがいるんだ、個室の方がいいだろう?」
というナタリーさんの気遣いだった。
でもこんなオシャレなお店は初めてだから緊張するな〜
「ふふふ、そんな緊張しなくても大丈夫だ」
ナタリーさんが笑った、笑ったところを初めて見たかもしれない。美人が笑うと絵になるな〜
「でも、お高いんでしょう?」
「大丈夫だ、意外とリーズナブルなんだ、ここは」
「そうなんですか?」
「そうなんだ」
なら大丈夫なのかな?
とりあえずメニューにあったオススメのステーキを貰うことにした。ナタリーさんはパスタのようなものを頼んでいた。
モコとキキョウには、従魔用のメニューからシェフのオススメを頼んだ。
食事が届くまで時間があったので、何か話さないと気まずい。
「ヒナタ・・・ヒナタは私をどう思う?」
ど、どう思う?そんな会ったばかりなのに・・・
「い、いやそういう意味では無くな、騎士としてな」
あ〜騎士としてか、危ない危ない誤解するところだった。
「立派な騎士だと僕は思いますよ?」
実際にそうだ、確かに最初はいざこざがあったが、この前のクエストでだってダークウルフに襲われた時や、キキョウの時も僕の前に立ってくれていて、力強かった印象がある。
「そうか・・・優しいんだなヒナタは・・・」
何かあったんだろうか? すごい自信が無い様子だ。
「私はな・・・元々貴族の末娘として生まれたんだ。」
ほ〜道理でどこか品のある所作だと思った。
そういえば、立っている時もすごい綺麗だったな。
でも何が関係あるんだろう?
「しかし、いい歳になって政略結婚させられそうになって、家を無理やり飛び出してきたんだ。
まぁ考えもなしに飛び出して来たもんだから行くあてもなくてな・・・
そこで私を拾ってくれたのがベルンさんだったんだ。」
政略結婚! 確かに知らない人と結婚は嫌かもしれないけど家を飛び出すのは凄いな。
「それで騎士団に恩返しをしたくて、強くなりたかったんだが、最近伸び悩んでいてな・・・君にもあんなこともしてしまった」
「そんな、大丈夫ですから頭を上げてください」
と頭を下げられてしまった。
こんな美人に頭下げさせるなんて、ここが個室じゃなかったら僕、殺されるところだったんじゃないか?
「その後のクエストでヒナタがいなかったらキキョウに・・・な」
ナタリーさんがキキョウの方を見る。
「みゃ?」
「こんな可愛いのにな・・・あの時は動けなかったんだ、怖くて、今も思い出しただけで震えるんだ
騎士として恥ずかしい限りでもう自信が無いんだ。
もっと私に力があったらなんて考える事もある・・・まぁこんなこと君に言ってもしょうがないんだがな!」
とニカッと笑顔を向けられるが、その悲しそうな今にも消えそうな声で言われても無理していることが分かる。
こんな時なんて答えればいいんだろう?
勇気づけるにはなんて言えばいいんだろう?
・・・そういえばあの時はキキョウ、ナタリーさんを狙ったよな?
なんでナタリーさんを真っ直ぐに狙ったんだろう?
1番弱い僕もすぐ近くにいたのに、なんでナタリーさんを狙ったんだろう?
「ちょっといいですか?」
「なにかな?」
「ナタリーさん、この前のキキョウに最初に狙われたの覚えてますか?」
「もちろん」
「僕が思うにナタリーさんを狙った理由は、多分1番危険だと思われたんじゃないでしょうか?」
「そんな訳ないだろう、私が動けなくなったからに決まっている」
「いや!あの時はみんな動けなくなっていました!しかも近くには、ナタリーさんより遥かに弱い僕がいました!」
ちょっと声が大きくなってしまった。
しかしナタリーさんは、俯いていた顔がどんどん上がってくる。
「だから、僕は1番危険なのは、強いのは、ナタリーさんだとキキョウに思われたんだと思います。
確かに今は満足がいかないくらい、強くないのかもしれません、でも潜在能力が高いからキキョウに狙われたんじゃないですか?」
そう言うとナタリーさんの目が輝く、あとちょっとで勇気づける事が出来そうだ。
「あと必要なのは、ちょっとの勇気だけだと思いますよ、まぁ僕が言うのも変なんですけどね」
「そうか・・・勇気か・・・う、うぅ」
泣いてしまった、泣かせてしまった、どうしよう、どうしよう!
「いや、大丈夫だ、まさか騎士が慰めてもらうことになるとはな
そうか、そうだな、ちょっとの勇気か・・・うん!あの時のヒナタを真似して、私もちょっとの勇気を出してみようと思う、ありがとうヒナタ」
「いえいえ、元気になって良かったです」
また笑顔を見せてくれるがその笑顔はどこかスッキリした様子だ。良かった良かった。
その後は食事が届いたので、ゆっくり食べることになった。
ステーキはとてもジューシーで柔らかく美味しかったんだが、何の肉かは分からなかった、後でナタリーさんから聞いたら“アクアカウ”という魔物の肉らしい。
モコとキキョウのシェフのオススメも餡がかかっている魚の刺身のようなものだった。美味しそうに食べていたので良かった。
その後は一緒に宿屋まで帰った。
先程のような暗さはなく、とても元気なナタリーさんを見れたような気がした。
宿に着くとナタリーさんからお礼を言われた。
「ヒナタ、今日はありがとう。」
「いえいえ、こちらこそありがとうございます、ナタリーさ━━」
「ナタリーでいいよ」
「そうですか、ではおやすみなさいナタリー」
「おやすみヒナタ」
そう言って部屋に戻る。
さて!準備は整ったし、明日はみんなにロリングに行くって挨拶回りをする事にしよう!
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