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愛する猫と異世界へ  作者: 絵濡亥 家尾
1章 異世界で初めての街
18/80

18話 一悶着

「みゃ〜みゃ〜」


 腕の中の子猫が鳴く、先程までの圧倒的オーラなどは既になく、ただただ可愛い黒い猫。


「一体どうなったんだ?」


 トールさんがそう言いながら僕の傍に近寄ってくるが、腕の中の子猫を見て、僕の頭にゲンコツをする。


「後で話を聞かせろ、俺は全員の安否確認をしてくる」と言って、吹き飛ばされた、ガリスさんとベルンさんの安否確認をしに行く。


 頭が痛い。


「だ、大丈夫か?」


 ナタリーさんが僕を心配そうに見ている、手にはポーションが握られている。


 その後はずっとナタリーさんに謝られ続けた。

「すまない」「騎士なのに」「人を守る盾のはずなのに」

 など自分を責め続けていた。


「大丈夫ですよ」


 と僕が言っても、申し訳なさそうな顔を続ける。


「とにかくみんなの方に行きましょう」


 そう言い、ナタリーさんを連れて、みんなのいる方へ集まる。


「ところで、その子猫はさっきの“化け物”で合っているかい?」


 ベルンさんから質問が飛んでくる。ベルンさんは吹き飛ばされた拍子に、足を痛めたらしくセリアさんが聖魔法で治療をしている。


「はい、そうです」


 僕は正直に言う。ここで嘘をついても、意味が無い。


「そうか・・・“それは”もう危険がないのか?」

「分かりません」


 正直、僕はこの()について何も知らない。

 だから答えようがなかった。


 周りに沈黙が漂う。

 まだこの()に危険がないと断言出来ない以上、排除するか、生かすのか、誰かが発言するのをみんなが待っている。


「まぁいいじゃねぇの」


 トールさんが沈黙を破る。


「だが!安全だとは言えないだろう!いつまた襲われてもおかしくない!今ここで殺すべきだ!」


 確かにベルンさんの言うことはもっともだ。でも、僕は・・・


「安全じゃねぇならなんだ!

 こいつが本当に危険な存在なら、俺らは出会った時点で死んでる!

 確かに攻撃はされたが、俺は手加減されていたようにも感じた!

 それに!今ヒナタ腕の中で鳴いているこいつが本当に危ない存在か!?

 俺にはただの子猫にしか見えねぇがなぁ!」


 トールさんが少々強引だが激しく反論してくれている。

 確かにこの()が二度と暴れない保証はないが、僕はこの()を殺したくない。


「僕も・・・殺したくないです」


 僕もベルンさんに意思表示をする。


 その後、数分の再び沈黙が漂うが


「はぁ、ひとまずこの事は保留にするが、ヒナタくん、君が何をしたのかは話してくれるね?」


 僕は、ほぼ全てを話した。


 この()の助けを呼ぶ声が聞こえた事。

 僕が以前、夢の中で聞いた事のある声と同じだという事。

 僕のスキルがどういうものかという事。

 ニールちゃんに関すること以外の全てを話した。


 ベルンさん達は呆気に囚われていたが、咳払いをしてから、反応を示してくれた。


「まぁ、にわかには信じがたいが、この状況でそんな嘘をつくとも思わない。

 今は信じることにしよう。

 他のみんなもそれでいいかい?」


 ガリスさん達も頷く。

 どうやらベルンさんも他のみんなも“一応”は納得してくれたらしい。


 この()の事はギルドに混乱を招かないように、ギルドマスターには隠す事になった。

 この()は森でタラティマンティスを討伐した後に保護した事にするらしい。


 その後は、真っ直ぐタナシバの街へ帰った。

 タラティマンティスの死体やダークウルフの死体は、トールさんのアイテムボックスに入れて帰ることになった。


 帰り道、僕とトールさんは雑談をしながら帰ったのだが、他のみんなはお喋りする事は無かった。


 ナタリーさんはずっと僕のことを見つめていた。こちらが目を合わせると、すぐに目を逸らす。

 恐らく、申し訳ないんだろう。気にしなくてもいいのに。


 タナシバの街に着いた頃にはもう、朝日が出ていた。


 ギルドに到着し、クエストの達成、この()を保護した事を報告する。

 どうやら報酬の話は明日の昼頃にするらしく、今日は帰ってゆっくり休んでいいとの事。


 ちなみにこの()の保護は僕に一任されることになった。

 僕としては、こんな可愛い子猫を任せて貰えるなら本望だ!


 しかし、なんでこんな可愛い子に瘴気があんなに付いていたのだろう?

 しかもまだ子猫だ、そもそもこの世界にも瘴気があった事にも驚きだ。


 とにかく、後でニールちゃんに聞くことがいっぱいだ。

 そう考えながら、僕達は蜘蛛の巣窟に着いた。


 とりあえず明日はみんなでギルドに行こうという話になり、各々の部屋に吸い込まれるようにみんな入っていった。


 冒険者の朝帰りはこんな感じなのかなぁと思いながら、僕も部屋に入っていく。

 そのままベットにモコと子猫とダイブすると、すぐに意識を離した。


「にゃ〜さっきぶりだにゃ〜日向くん!!」


 何度か見た光景の先にいつも通りのニールちゃんが手を振りながら立っていた。





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