何回やってもあいつが死ぬわ!!
魔王の攻撃を私が避けようとした時、目の前にあいつが両手を広げて立っていた。
「また失敗…」
そして世界は逆行する。
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私は容姿端麗、文武両道、金髪に緑の瞳を持った背が低いけど胸は大きい紛れもない美少女である。嘘よ。本当はあまり自分の事を気に入ってないわ。自分に自信を持った方が人生楽しいもの。
私は特に特徴はない普通の村で育ったわ。みんなと仲は良好だったし、たまに酔っぱらい達の喧騒が聞こえるくらいで比較的平和な村で、親の農家を継いで過ごそうと思っていたもの。
でもある日王都から兵士達がゾロゾロと村にやってきて私は勇者だと伝えられたわ。
私は勇者に憧れていたから、喜んで城へ行き王様から魔王を倒してくれと告げられて冒険の旅に出たわ。
隣国にも勇者がいるらしく、旅の途中でいつも出会ってしまうの。運命なのかしら?最悪よ。
隣国の勇者は赤髪に青い瞳を持っていて困った人がいたら必ず助けるお人好しな馬鹿よ。
やっぱり出会ってしまったわ。こいつストーカーなのかしら?でも実力は本物だもの。一緒に魔王を倒しましょ。
あいつとの二人旅は魔物を倒して走り回る傍から見たら勇者じゃなくてバーサーカーな私には話し相手が出来てちょうどいい息抜きよ。
そしてあいつは私の事を異常なぐらいに気遣う。私はか弱いお姫様じゃなくて勇者なのよ、魔物の血なんて見慣れてるから平気よ。
旅の途中力自慢だらけの街に来たから、他の人を仲間に加えてみたけれど、やっぱり一般人と勇者じゃ強さに差がありすぎて付いてこられないわ。
私達はそのまま二人で魔王城に辿り着いて、魔王との決戦を繰り広げて…それで…あいつがまた死んで………兵士が村に来る所に時が戻されるのよ………
魔王の攻撃を私は避けれたはずなのよ、あいつも私の力量は分かっているしいつもなら隙をついて攻撃に転じれたはずなのに。
あいつはいつも私を庇って死ぬ。
出会わないように街に寄らずにボロ雑巾のようになって魔王城に乗り込んだ事があるわ。あいつはどこからか出てきて私を庇って死んだわ。
拒絶してみた事もあったわ。そうするとあいつは泣きそうな顔をした後に覚悟を決めた顔をして私が無視をしても絶対に付いてくるわ。それは普通にストーカーよ?結局その後私を庇って死ぬ。
魔王城に付いてこられないように足を折ろうとして戦った事もあるわ。あいつの方が強くて私が疲れ果てたわ。
寝込みを襲って足を折る事に成功したこともあってけど、勇者の治癒力を舐めてたわね。少し遅れて文句を言いつつ付いてきたわ。
足を折るだけだと無駄だと分かったから、ボコボコにしようとした事もあったわ。途中で目覚めて失敗して怒鳴られたわ。本当に反省したわ、二度としません。
結局私を庇って死ぬ。
「付いてこないで」と説得しようとした事があったけれど、お人好しな馬鹿だもの。そんなの無理に決まってるわ。
結局私を庇って死ぬ。
あいつが居なくても魔王を倒せるように修行した事があるわ。それだと魔王が力を溜め込みすぎて世界ごとあいつと一緒に死んだわ。
あいつが痺れるように料理に毒を仕込んだ事もあるわ。効かなかったわ。
結局私を庇って死ぬ。
何をしてもあいつが死ぬ。無理してでも自分に酔いしれてないと自信を喪失して勇者なんてやってられないわ。
あいつが魔王城に来られないように試行錯誤してたけど、私一人じゃ勝てないし、あいつ一人でも勝てないのよ。
魔王の動きを覚えようとしたけれど、なぜかあの魔王毎回動きが違うのよね。
私達のコンビネーションはかなりのものよ。なのにあいつは魔王戦で私が追い詰められと焦り出して息が揃わないわ。
………
私には覚悟が足りなかったわ。あいつは私のために自分の身を投げ出せる。でも私は自分が死ぬのは怖くて…怖くって……いつもどこかあなたが庇ってくれるって甘えてた屑女よ…だから…次は……
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魔王の攻撃を私が避けようとした時、目の前にあいつが両手を広げて立っていた。
あいつは何を言っても私を庇うから殴って吹き飛ばす。
私に向かってくる魔王に最後の力を振り絞って剣を突き刺す、魔王の体を貫いたけれど、魔王の剣も私を貫いている。剣が刺さったまま魔王の体を捕らえる。
そして、私は最期に、意識を保ってるかも分からないあいつに言う。
「私は庇われるほど弱くなんてないわ。私は世界を救う勇者だもの。でも嬉しかった。ありがと。さよなら。」
私は自爆魔法を唱える。今まで覚悟が足らずに使わず宝の持ち腐れであった最高威力の魔法を。
そして私の意識は途絶える。