黄金道路
1971年 7月10日
襟裳岬を後にして国道336号線を走る。
この道路はオートバイのライダーには有名な黄金道路で、当時は悪路の
代名詞だったがすでに函館の大沼公園で最悪の道路を経験していたので
難なく乗り切ることができた。
おそらく交通量が多いせいで砂利が沈み走りやすくなっていたのだろう。
広尾からは国道236号線で帯広に入りそこから然別湖に向かいさらに
その奥にある糠平湖でテントを張った。
7月11日
糠平湖を出て、国道273号線から上士幌を通り抜け国道241号線に入り
しばらく走って足寄に着いた。
長く悪路を走ってきたせいか後部に積んでいたテントや寝袋などを支える
キャリアが折れているのに気づき、鉄工所を探し修理してもらうことにした。
折れた部分だけでなく他の部分も補強をしてもらい、お金を払おうと
革ジャンバーの内ポケットに手を入れたが財布がない。
いつも持ち物は決まった場所に入れているので、落としてしまったのだと
思ったが一応、他のポケットやオートバイを離れる時には常に持ち歩く
ツーリングバックの中も探してみたが見つからない。
おそらく上士幌でガソリンを入れて支払いをしたあと、ポケットに
直すときキチンと収まっていなくて、走っているうちに
落ちてしまったんじゃないかと思った。
大きな紙幣は映画イージーライダーのように別の場所に保管していたので
財布にはたいした金額は入っていなかったのだが免許証が一緒だった。
修理代を支払うと工場のお兄さんが
「警察に行って事情を話せば免許証の代わりになる
ものを発行してくれるんじゃないか」
といったので近くの派出所に行った。
事情を話すと上士幌の警察に問い合せてくれたが届けられてはいなかった。
そして「証明書なんか出せないのでオートバイは汽車で送って帰れ」
と言われてしまった。
さらに「ここに来る前に戻って探せば良かったんだ」
「自分たちはこれから出かける」といったので、
どうやら『聞かなかったことにしてやるからすぐにオートバイに乗って
上士幌まで探しに行け』と言ってるんだと気がついた。
上士幌に着くとまずガソリンスタンドで聞いてみたが
「なかったよ」と言われた。
近くの交番を教えてもらって行ってみると届けられていた。
心の底からよかった助かったと思った。
書類を書き「拾ってくれたのは近くの人だからお礼を言いに行くように」
と言われて交番を出た。
しかしさすがに北海道、近くといっても一軒一軒が離れているので
遠くてなかなかたどり着けない。
やっと見つけて尋ねると高校生の女の子が出てきた。
お礼を言って謝礼を渡そうとしたが、なかなか受け取ってもらえない。
奥の方で父親らしい人がそのやりとりをみて笑っている。
「ほんとうに助かったのでどうしても受け取って欲しい」
となかば強引に手渡し、その家を出た。
いろんなことがあって時間がかかってしまい、この日は阿寒湖で
キャンプの予定であったが、疲れたし、阿寒湖につく頃には日が
沈んでいるだろうと思いユースホステルに予約をいれた。
案の定暗くなってしまい、さらにユースホステルを探すのに手間取り
やっとの思いでたどり着いてホッとしたとたん立ちゴケしてしまい
最後まで大変な一日だった。
マリモの歌
歌手:芹洋子
作詞:岩瀬ひろし
作曲:八洲秀章
https://www.youtube.com/watch?v=1Cx3BEWfl5Y