出張に行ってきます
「マリーさん…良い人だったのに…」
「勝手に殺すんじゃないよ!」
急に後ろから現れたマリーさんに背中をどつかれた。え、待って体力減ってるんだけど?マリーさん笑えないよ?ほんとに。
リューが襲われてから3日が経ちある程度リュー体調もよくなっていた。マリーさんの事はあまり心配していなかった。何故なら
「あんなへなちょこにあたしがやられるわけないだろう?これでもそこそこの冒険者だったんだから」
まぁ、不意打ちで少し手を切っちまったけどね!と言い、いつものようにハハハ!と豪快に笑うマリーさん。
そう、マリーさんは元冒険者のレベル116なのである。気にするなと言われたがこれも恐らく俺が原因だ。そうゆう訳にはいかない。俺が思い詰めていると
「変な気…起こすんじゃないよ?」
「ははっ、俺まだレベル10ですよ?憎いとは思いますけど、今行ったら自殺行為ですよ」
そうかい。とマリーさんはそのまま店の奥へ入っていった。この3日間、俺はリューにつきっきりだった。奴らに復讐するにしても今の俺には無理だ。早くレベルを上げないと。
だが、リューを1人にする訳には行かない。まだ低レベルの俺が近くにいても大してできることは無いが、また襲われた時、逃げる時間稼ぎくらいは出来る。そう思って看病していたが、レベルをあげることが出来なきゃ結局犠牲が出て八方塞がりだ。
1人唸っていると、男に声をかけられた。
「アキト。リューちゃんの具合はどうだ?」
「あー、ベルタか。って俺に声掛ける男はお前くらいしかいないよな」
自虐ネタを放ったが、1ミリも笑う気配はない。え?滑ったこれ?まずいな。自虐ネタで滑るのが1番キツい。
「すまない。これもあの時俺が…」
ベルタは地面に膝と拳をつき、申し訳なさそうにしている。いや、流石に大袈裟じゃない?てかこいつほんと卑屈だな。こんな時こそもっとポジティブに行こーぜほんと。
「いや、気にするなって。あ、そうだ!それよりお願いがあるんだけど」
俺はベルタにリューの看病件護衛をお願いすることにした。ベルタは俺たちに、この前の1件で大分くらってるようだったので、少しはこれで気持ちも楽になるだろう。
「リューちゃんの事は任せてくれ、憲兵団に大型新人の女性剣士が入ったんだ。レベルは92。その子にお願いすることにするよ。それでその間お前はどうするんだ?」
「ちょっとレベル上げに遠くに行ってくる。ガルダンまで」
は!?っとベルタは驚愕する。まぁそれもそうだろう、このニュートラの街からガルダンまでは、馬でも片道1週間はかかる。馬を持っていない俺は、恐らく3週間はかかるだろう。
「アキト、その旅俺も着いていっていいか?」
「え、やだよ!なんで男2人で旅なんか!」
「いや、俺がいれば馬も手に入る。それにあっちには、ここよりレベルの高い魔物も多い。俺がいれば戦闘で助けにもなるだろ?」
その後も拒んだが、ベルタの熱意に押され一緒に行く事になった。初めての冒険は女の子が良かったな…
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「初めまして!アキトさん!私アリーネです!リューさんの事は任せてください!」
「この女の人、誰なの」
俺は、例の女性剣士に会うことになった。アリーネという彼女は憲兵団に入って2ヶ月の一応レベル92の大型新人らしい。年齢はリューの1つ上で純金のような金髪に宝石のような青い瞳そして火傷しそうなほど赤くハリのある魅力的な唇。言わずもがなで絶世の美女だった。
ごついの想像してた俺にとっては結構衝撃だった。正直タイプです。はい。
「お母さんからおふたりの事はよく聞いてます」
「お母さん?」
俺の知り合いの女性と言ったらリューとマリーさんくらいしか…
「リューもしかして年齢サバ読んだのか!?」
「なんでそうなるの!普通に考えてマリーさんなの」
ですよね。でもあのごつくて大木2〜3本くらい平気でへし折りそうな人から、こんな綺麗な娘さんが産まれてくるなんて。
「マリーさんの娘さんなら安心してリューを任せられるよ」
「はい!リューさんには誰一人として指1本触れさせませんよ!」
アリーネに任せれば、アイツらも容易にリューに近づけないだろう。これでレベル上げに専念できる。
後はリューに説明するだけだ。
「リュー俺、レベル上げついでにガルダンに行ってこようと思うんだ。彼女はその間のリューの護衛だ」
「それならリューもついて行くの!」
「それなんだけど、俺はまだレベル15になってないし、ガルダンの周りには強い魔物も多い、だから俺必ず強くなって戻ってくるから少しの間だけ待っててくれないか?」
そう言うとリューは悲しそうな表情を浮かべ。布団を頭まで被った。俺は、アリーネにリューの事を託し店を出た。
「やっぱ、行ってらっしゃいがないと寂しいな」
俺は街の門の前まで来ていた。ベルタと合流しいざ出発のタイミングで急に後ろから誰かに抱きつかれる。振り返るとそこには息を切らしたリューが裸足でたっていた。
「なるべく早く帰ってきてなの。帰ってきたら一緒に冒険するの」
「うん。約束だ!じゃあ行ってくるよ」
リューは、満面の笑みを浮かべた。俺も自然と笑顔になる。
「いってらっしゃいなの」
俺はリューに見送られながら街を出た。
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