回り道も悪くない
「フンッ!!」
俺は、また草原に来てスライムを踏みつけていた。
「流石になれてきたな、スライムキラーも伊達じゃないぜ」
現在俺は、レベル9になっていた。運が高いおかげでレベルに見合わない魔物と遭遇することも無く。順調にレベルを上げている。
何度かゴブリンと遭遇したことがあったが、メタリンのおかげで無傷で倒すことが出来た。
ゴブリンの平均獲得経験値は16でスライムより少し多いのだが、武器持ってるし怖いのであまり遭遇はしたくない。
「メタリン、あと5匹倒したら帰ろう。あまり遅くなるとリューに叱られるからな」
『プルプル』
メタリンのあのプルプル体を震わせるのが、最近になって返事している事に気がついた。
あー、可愛い。メタリン可愛いよ。
俺は街につき。大通りを歩く。
「みろあれ。まだ性懲りも無くレベル上げしてるんだってよ」
「まだ生きてるのが不思議だぜ、どうせレベルも良くて2とかだろ?」
こっちに来て、あーゆう後ろ指刺されることには慣れてきたが流石にノーダメージでは無い。正直ムカつくのである。上司にいびられるのはなんとなく我慢できたがなにも知らない奴らに言われるのは嫌だった。
なので俺はいつも、凄く気持ち悪い笑みを浮かべてじーっと見つめてやるのだ。すると
「うわっ、キモっ」
「お、おいっ、あっちいこうぜっ!」
はい、俺の勝ちー。これはやってて自分が悲しくなるという諸刃の剣だが、何もしないのは俺の性分にあわない。
そして俺には、リューとベルタ以外にも知り合いができた。
パン屋のおばちゃん、マリーさんだ。
「あら、今日もレベル上げ行ってたのかい?あんたも頑張るねぇ。そうゆうとこ嫌いじゃないけど」
「いやー、マリーさんも今日もお綺麗ですね!」
「ハハハっ!バカ言ってんじゃないよ!今日もいつものかい?1個サービスしとくよ!」
マリーさんとは、リューのお使いで知り合った。経験値の件で俺の事を蔑むやつばかりなのに、マリーさんはその事を知っても優しくしてくれる。
「そういやあんた、この前あんたを襲った冒険者、もう釈放されたんだってよ?街では、憲兵さんがいるからいいけど、外に出た時は気をつけな?」
「あー…そうなんですか。ありがとうございます!気をつけますね」
俺はこの時メタリンがいるから大丈夫だと、あまり気には止めなかったが、後で後悔することになる。
「リューただいまー、パン買ってきたよ」
「おかえりなの、そこに置いといて欲しいの」
家に着くといつものようにリューが、夜ご飯を作って待っていた。ほんとにしっかりしてるな、と感心してしまう。
「今日はどうだったの?」
「んー、特に何も無かったよ、もう少しでレベル10になれそうってことくらいかな」
レベル10になると、いよいよ初級職を解放することが出来る。その中には、剣士、魔法使い、僧侶、商人、あとは少し変わってる職人という欄がある。これは鍛冶師や料理人などその派生先が様々でマリーさんなどがその例だ。
そして初級職というからには、上級職や、最高職もある、剣士の上級職は剣豪、最高職は剣聖。魔法使いは、魔導師、賢者。僧侶は、聖者、神官というふうになっている。いずれもなれる人は少ない。
職人だけは上級職がなく。あくまでそれになる為の資格のようなものらしい。後はその人の実力だ。
「明日でいよいよレベル10だ。リュー俺、まずは剣士になろうと思うんだ」
剣士になれば、剣を扱えるようになり力と防御が30%増える。レベル上げの効率も一気に上がるはずだ。
「いいと思うの」
何故か少し表情の暗いリュー。冒険者になりたかったと言っていたのを思い出し少し申し訳なくなった。
「違うの、少し寂しいの。アキトが強くなれば一緒に入れる時間も減ってしまうの」
また表情を読まれた。ただ、その言葉に俺は少し黙り込む。事実俺はリューがいなければ今頃死んでいた。
「リュー、もし俺が君を守れるくらい強くなったら一緒に冒険しないか?」
「え?」
リューは驚いた表情で顔を上げた。
「ゆっくりでもまたSP貯めれば。冒険者にだってなれるよ!それは俺が証明する」
「…」
リューは涙を流した。そして
「うん。じゃあ早く強くなってね」
任せてくれ!やる気がみなぎる。明日も頑張るぜ。ってあれ?『なの』口調は?
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次の日、俺はリューとレベル15になったら一緒に行くと約束した。
「リューじゃあ行ってくる!今日で俺も職持ちだ!」
「行ってらっしゃいなの」
家を出て草原に向かい大通りを歩いていると、マリーさんに声をかけられた。
「ちょっとあんた!これ持ってきな」
そう言って袋を渡された。中には出来たてのパン。すごくありがたい。
「いいんですか?でもお金もってないし」
「いいんだよ!あんた見てるとあたしまで頑張れるんだ」
少し涙が出そうになった。
「行ってらっしゃい。きをつけな」
「はい!」
俺は街を出た。
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「これちょっとまずいよな!?」
俺はレベル上げに出て初めてのピンチと遭遇している。ゴブリン6体に追いかけられているのだ。2、3体
ならばメタリンが攻撃を防いでくれるので問題ないが、これは多分無理だ。
『キシャァァァア!』
「ひいいいいい!」
クソっ!やるしかない!俺は体をひねり対面する。先頭にいるやつの目に砂を投げる。呻き声を上げた。そいつを飛び越えもう1匹が飛びかかってくる。
間一髪のところでメタリンがゴブリンの石斧を弾き飛ばした。
「メタリン!そいつを押えろ!」
メタリンは、防御以外にも自身の重さを生かして上に乗ればゴブリン程度なら動きを封じることが出来る。
俺はゴブリンの頭を踏み潰す。あと5体。
「メタリン!あと2匹倒せば形勢は逆転する!それまでどうにか俺を守ってくれ!」
『プルプル!』
俺は、次に襲ってきたゴブリンの攻撃をリューに借りてきた盾でいなす。だが後ろにいたゴブリンの攻撃を背中に受けてしまった。クソっ!俺はそいつを殴り飛ばした。
「メタリンやれ!」
メタリンは高くジャンプした。着地。ゴブリンの頭が潰れる。メタリンの自重攻撃そう名付けた。するとメタリンに異変が。ステータスを見る。そこには
『メタリンのレベルが上昇しました。メタリンは形状変化を覚えました。』
次の瞬間メタリンは、体中から針のようなものを出し。残りのゴブリンを一掃した。
「…え?メタリン強すぎない?」
呆気にとられてしまった。メタリンが体を使ってドヤ顔をつくる。形状変化便利だね。
そのあとも狩りを続け、俺はレベルが上がった。念願のレベル10だ!
そのまま俺は、急いで帰路に着いた。
街に着くと、通りがやけに騒がしかった。
「おいあのパン屋、通り魔にあったんだってよ」
「あぁ、これもあいつと仲良くしてたせいだぜきっと…っておい、あいつだいこうぜ」
嘘だろ。朝話したばかりなのに。そして俺はマリーさんとの会話を思い出した。『あんたを襲った冒険者。釈放されたんだってよ』と言われた事を。嫌な予感がする。
「リュー!頼む無事でいてくれ!」
俺は店に急ぐ。ドアを開けるといつもの出迎えがない。そして奥にはリューが血まみれで倒れていた。
「リュー!おい!しっかりしろ!」
「お、おかえり…なの…」
まだ息があった。だが虫の息だ。何でこんなことに。クソっ今はそれ所ではない。俺は頭を巡らせる。そしてある事に気づいた。
「ステータス!僧侶にSP全振り!頼む早く!」
僧侶は回復系魔法を覚えることができ、初級職でもヒールを覚えることが出来る。初級のスキルで治るか分からないが一か八かこに賭けるしかなかった。
「だ…だめなの…ハァハァ…アキトの大事なSPなの…剣士になるの…」
「いいんだ!またレベルなら上げればいい!一緒に冒険するんだろ!?」
『うん…』と言ってリューは涙を流した。俺はヒールを唱える何度も何度も。MPが尽きると同時に、リューの傷は塞がった。
「リュー!頼む!目を覚まじでくれ。だのむ。だのむ。いぎでぐれぇ」
「うるさいの。静かにしてなの」
「あ、あぁ。リュー!良がっだァァ」
俺はリューを抱きしめた。『苦しいのぉ』と言われたが俺は離さなかった。剣士にはなれなかったがまたレベルを上げればいい。今度はリューも一緒に。
読んでくれてありがとうございます。今回は少し長めに書きました!良かったら評価コメント。ブックマークお願いします!