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初めての部下は硬派らしい

ギルドを出ると、もう太陽は落ちて通りは先程より人で溢れかえっていた。


「ここの人達はみんな定時に帰れるんだな〜」


時刻は恐らく7時くらいだろう。甲冑やローブを着たいかにも冒険者らしい人達がで店で酒を交わす。そんな様子を見て

羨ましいなと思った。


とりあえず通りの様子を眺めながら来た道を戻った。すると門では先程の兵士が上司らしき男に罵られている。


「何で、あんな賊のような奴らをいれたんだ!?問題が起きたら全部俺のせいなんだぞ!?」


部下は黙り込んでいる。確か俺が通った時、上司は奥の椅子で居眠りこいていたような。


「お前、どうなるか分かってんだろうな!?俺がクビになったらただじゃおかないぞ!?」


そういって部下の頭を殴る。

下唇を噛む部下。それを見て会社の事を思い出した。言い返しても、俺に文句でもあるのか!?とか言われるんだよな。わかるわかる。パソコンと睨めっこ、資料の山、終わらない残業、挙句は上司の機嫌取り。上座下座だ、乾杯は上司より飲み口を下にしろだの、肉は串から外せだの、あーうるさいうるさい。

俺もあんな環境で働いていたんだ。それに比べたらたかがきついレベル上げくらいどうってことない。


「舐めるなよ、異世界」


俺は死ぬ気でレベリングする事にした。


とりあえずひたすらスライムを狩ろう。街を出た俺は食事も睡眠も取らずひたすら草原でスライムを倒した。見つけては踏みつけ、見つけては踏みつけその繰り返し。ステータスを見返す度、卒倒しそうになったが、上司の顔を思い出し反骨精神で乗り切った。こんな所であのクソ上司が役に立つとは…

そして気がつけば2日が過ぎていた。


「ス、ステータス…」


俺はステータスを確認した。



名前ー桜海アキト 性別ー男 職業ーなし


LV.1 SP1


HPー36 MPー16

力ー12 防御ー11

知力ー16 器用ー10

速ー11 運ー28


次のレベルまで6704EXP



「412匹か、あとこれを2回とちょっと」


『ぐぅぅぅぅぅう』

腹が鳴った。そういえばこの世界に来てから何も食べていない。とは言ってもお金はない、どうしよう。ひとまず街へ戻る事にした。


俺はギルドに向かう途中で見かけた質屋へ向かった。何故か俺は、転移した時スーツ姿で、仕事に向かう格好だった。なので時計やペンなどを持っていたのだ。これを売れば多少はお金になるだろう。


中へはいると衣類や鎧、剣や鞭、見たことの無い装飾品などが並んでいた。


「すみません、これを買取ってもらいたいんですが」


「はいなの、ちょっと待つなの」


この子が店主なのか?タレ目でおっとりした口調の可愛らしい少女、眼鏡をかけそれらをじっと見つめる。10数分後、

査定が終わったのかメガネを外した少女は不思議そうに首を傾げている。


「どう?買い取れるかな?」


「こっちのペンは銀貨12枚なの、このブレスレット?は鑑定眼でもよく分からなかったの」


鑑定眼?アニメでよく聞くそれも職業スキルの一つなのか?情報は大事だ聞いてみよう。


「ペンは買取ってもらうよ。あー、その鑑定眼ってゆうのはスキルの一つなのか?」


「えっとね。鑑定眼は商人系のスキルなの」


彼女いわく商人系のスキルらしい。レベルでいうと30で覚えられるそうだ。商人系は鑑定眼まで取れると生きるのに困ることは無い。だが皆富や名声を求めて冒険者を目指すため商人なる人は少ないのだという。


「ありがとう助かるよ。あっ、そうだ。最後にこれも買い取れたりするかな?」


俺は最初に出会ったスライムが落とした玉をポケットから出した。


「これはメタリックスライムの核なの。メタリックスライムは攻撃こそしてこないけどダメージが通らないから倒すのが難しいの」


スライム系は核を壊さないと倒せないらしい。更にスライムには特性があり危険を感じると核に閉じこもり敵からの攻撃を防ぐのだとか。

その中でもメタリックスライムは核が硬く壊すのはほぼ不可能で生態もよくわかっていない。

そしてスライムは液状の主成分をかけるとまた元の姿に戻る。例えば青のスライムは水で、茶色は泥水、緑やピンクは樹液や花の蜜らしい。

人為的に元の姿に戻すと稀にテイムも出来るそうだ。


「スライムは弱いの。だからあんまりスライムをテイムする人はいないの」


「そうなのか。色々ありがとう。また何かあったらお願いするよ」


俺は時計とスライムの核をポケットにしまい店を出た。

出店でパンと魚の串焼き、水の入った木の実を買って銀貨1枚。恐らく銀貨は1枚500〜1000円くらいだろうか。ともかく異世界に来て初めての食事は泣きそうなくらいおいしかった。


「宿は借りれないよな。今日は野宿か…」


しばらく街を散策した。すると、協会の廃墟らしきものが現れた。ここで寝よう。俺は中に入り壊れかけのベンチに横になる。疲れが限界に達したのか、気絶するように眠りについた。


「おい!起きろ!」

俺は次の日の朝、3人の男に囲まれいて、その罵声で目が覚めた。こっちに来てからろくな目覚め方をしていない。まぁ前の世界でも、会社に泊まって朝上司に怒られてたんだけどね。


「おいお前、聞いたぞ。奴隷にしかなれない無能なんだってなぁ!」


男達のリーダーらしき男が言う。

兵士達が話してた賊ってこいつらのことか?


「え?何でそれを?」


「なんだ知らねぇのか?ギルドに登録すると新人は情報が張り出されるんだ。もうこの街でお前の事を知らない奴はいねぇんだよ!」


そう言われた後俺は思い切り腹を蹴られた。あまりの衝撃に後ろに飛ばされ、教会の壁にぶち当たった。


「クハッ!ヴェェ!」


衝撃で肺から空気が押し出される。口からは血の味。それにぶつかった衝撃で太ももから血が出ている。


「カッ…会社でも、暴力は…流石になかったぞ」


意識が朦朧とする。

脂汗と冷や汗が身体中から溢れる感覚と

裂けた傷口の熱だけが頭の中を巡る。


「俺の蹴りを受けても喋れるのか」


手加減し過ぎたなと男は言う。手加減?こちとらもう瀕死である。緊急を知らせる為かステータスが勝手に開きそこを見るとHPが残り4。赤く骨折と出血の文字も見える。くそ死ぬのか俺。せっかく会社から抜け出せたのにあんまりだ。夢の異世界に来たのに。理不尽だ。


「ここはレベルが全ての世界だ。お前みたいなやつを見ていると反吐が出る」


なんだよ!ただの八つ当たりかよ!


「クソっ…」


「まぁいい、次は本気だ」


男が足を上げ蹴りの体制に入る。俺が死を覚悟したその時。ポケットから何かが飛び出した。


「「「!?」」」


何かが男の蹴りを受け止めた。気絶寸前の俺は掠れた視界でそれを見た。灰色でプルプルボディのあいつである。


「何でこんなとこにメタリックスライムが!?」


男達は俺を蹴り飛ばそうとするがスライムがそれを全て受け止める。


守ってくれてるのか?

身動きの取れない俺は、今はただそいつに縋るしかなかった。


「なんだコイツ!?邪魔するんじゃねぇ!」


男達は剣を抜いた。スライムに斬り掛かる。


「は?」


なんとスライムに触れた剣先が丸々無くなっていた。


「食われた…?」


そういえば少女がこうも言っていた。スライム達は自分たちの主成分を溶かして食べるのだとか。つまりあのスライムは金属の剣を食らったのだ。


「こんなの聞いた事ねぇ!」


男達が、驚愕していると騒ぎを聞き付けたのか憲兵達がゾロゾロとやってきて男達を捉えていった。安心した俺は糸の切れた人形の様に呆気なく気絶した。

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