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下積みは得意な方なんで

「え、えーっとですね…大変申し上げにくいのですが…」


異世界に転移して数時間。俺に告げられたのはチートスキルでも膨大な魔力でもなく、1レベル上げるために必要な経験値が平均の600倍だということだった。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「やっぱ最新話も最高だな〜!」


ブラック企業に入って3年目。明日は久々の休み、酒を煽りながら大好きな深夜アニメを見ていた。


「俺も異世界行きたい。ハーレムしたい。会社辞めたい。くそぉ」


愚痴を垂れながら飲み干した酒の缶を机に置く。

高卒でも給料が良い!先輩が優しく教えてくれます!長く務めていれば誰でも出世出来る!何て言われて入った会社。

開けてびっくり中身は清々しい程の大ブラック。毎日ボロ雑巾のように扱われるのだ。ため息しか出ない。

上司にはいびられ、残業の毎日。休みも少なく今日の休みも大体1ヶ月ぶりだった。そんな荒んだ日々の唯一の楽しみである深夜アニメ。これだけが今の活力だ。


「ブラック異世界とかあったりしてな〜」


敵クソつえぇ!!全然モテねぇ…。金がねえぇ!の三拍子ハード過ぎワロタw、の異世界。

一人で吹き出す。

こんなくだらないこと思いつくなんて少し飲み過ぎたかもしれない。


「寝るか」


俺は部屋の明かりを消し眠りについた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


『グオァアーーーーーー!!!!』

俺は次の朝、アラームでも鳥のさえずりでもなくドラゴンの咆哮で目が覚めた。やばい頭痛い。二日酔いだ。こんな変な夢を見るなんていよいよ末期だな。一応頬をつねる。普通に痛い。おっと?


「こ、これはまさか…異世界転移ってやつか…」


…一旦整理しよう。まず空には太陽が2つ。その横にドラゴンが飛んでる。あとは変な草花。うん、ここ異世界だわ。

極めつけは、目の前にいるプルプルボディのあいつである。


「スライムって意外と硬いんだな」


落ちていた棒でつつく。灰色で光沢のある金属のような質感。水銀のような見た目のそいつは逃げたり襲いかかったりすることも無くしばらくするとドロリと溶け黒い玉だけ残して消えていった。


「あれ?死んだのかこれ」


玉を拾い上げる。大きなパチンコ玉のようだ。ずっしりと重みがあり太陽の光を反射している。とりあえずそれをポケットにしまった。貰えるものは貰っとけよく上司に言われたものだ。

(上司?あれ?異世界ということはつまり…)


「俺もう出勤しなくていいんじゃね!?」


そもそも出来ないだろ!と自分でツッコミを入れる。あまりの嬉しさにテンションがおかしくなってしまった。ふぅ、危ない危ない。


俺はルンルンで草原を歩っていると少し先に街がみえた。初めての街に興奮して駆け足で向かっていると何かを踏みつけた。最悪だ。足がスライムまみれになった。先程とは違う緑色のスライム。そのスライムの赤い玉を見事に踏み砕いていた。スライムは玉も一緒に結晶のようになり体の中に入ってくる。


「これはゲームで言うあれだな多分」


とりあえず『メニュー』と言ってみる。何も出ない。『セレクト』『ホーム』何も出ない。


「うーん『ステータス』」


これが正解らしい、半透明のスクリーンがでてきた。そこには



名前ー桜海アキト 性別ー男 職業ーなし


LV.1 SP1


HPー36 MPー16

力ー12 防御ー11

知力ー16 器用ー10

速ー11 運ー28


次のレベルまで9992EXP


「うーん、良いのか悪いのか分からん」


まぁ、運はいいのだろう。他に比べて高めだ。一つ気になるのはやけに必要経験値の数値が高い。こんなもんなのか?まあいい、ひとまず気にするのはやめよう。


「そうするとさっきのやつは殺しきれてない?」


玉を取りだし先程のように踏みつける。地面にめり込むばかりで壊れる様子はない。


「硬っ。さっきの奴は簡単に砕けたのにな。まあいいや、とりあえず街だ街」


玉を拾い街へ向かう。結構大きい街のようだ。入り口では検問をしていて、長蛇の列ができていた。


「すみません。街へ入りたいのですが」


「はい、こちらへ」


やっと俺の番、ボディーチェックを受け門をくぐる。以外にもすんなり入ることが出来た。結構不安だった言語も同じようだ。門を抜けると、目の前に広がったのは中世風の街並み、出店が沢山並び通りは老若男女で溢れかえっていた。


くぅぅ!いよいよ異世界らしくなったきた。やはり最初は冒険者ギルドに行くのが定石だろう。冒険者になり、かわいい女の子と一緒に冒険。ふへ…男のロマンである。


しばらく道なりに進むと目の前に大きな建物が現れた。


「ギルドはここっぽいな。あっ、文字まで一緒なのね」


看板には日本語で『ニュートラギルド』と書いてあった。入るの少し勇気がいるな。絡まれたらどうしよう。意を決して扉を開ける。ギラついた視線が刺さり萎縮しながら早足で受付を目指した。受付の前に立ち女性に声をかける。


青緑で大きな瞳に、腰まである黒髪。知的な雰囲気の綺麗な女性。こんな人が上司だったらブラック企業でも頑張れるんだけどなぁ。


ひとまず要件を述べる。


「冒険者になりたいんですけど」


「はい、かしこまりました。こちらの紙に記入をお願いします。」


その後はすぐだった。記入した紙をだして。石で出来た板に血を一滴垂らすだけで登録は完了した。

何でもステータスは自分しか見ることが出来ないがその石板には魔力が籠っており人のステータスを可視化することができるらしい。


俺はこの時心躍らせていた。夢の異世界。チートスキルや膨大な魔力何かしらの恩恵があるはずだ、と。だがそれは違った。


「え、えーっとですね…大変申し上げにくいのですが、アキトさんはその…平均の600倍です…」


「え、なにが?」


この時まではワクワクしていた。何が600倍なのだろうと。魔力?力?だが次に言われたのは


「レベル2になるのに必要な経験値…です…」


『はっ?』と間抜けな声が出て思考停止。異世界に夢を見ていた俺はその言葉を素直に受け止められなかった。

しばらくして落ち着いてからこの世界について説明を受けた。


スライムの経験値は8前後、普通の人間ならば2〜3匹狩ればレベルが上がるらしい。そしてレベルが上がるにつれ次に必要な経験値も増える。ちなみに10000という数字は、レベル60から70の人間がレベルを上げるために必要な経験値の量らしい。


そしてレベルアップの際貰えるスキルポイント。これで自分の職業が決まるらしい。そもそもギルドには、レベルをある程度上げ戦闘系の職業についたものが来るのだという。


だから皆小さい頃からレベルを上げスキルポイントを振り分け、剣士や、魔法使い、鍛冶師や商人などの職に就くのだそう。


スライム狩りまくればいいのでは?と聞いた時も、レベルに見合わない魔物が出てくる事もあると言われた。さっき飛んでいたドラゴンがその例だ。さらに大怪我などでレベル上げができなくなってしまうとなんの職にもつけず奴隷としてこき使われるハメになるらしい。


つまり何が言いたいかと言うとレベルを1上げるのも難しい俺は、異世界転移早々詰んだのである。


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