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第88話 邪悪登場

――メール湿地帯・遺跡リング――


 それにしても魔剣フッケバイン。厄介な代物だな。


「お、俺は一体……」


 伸びていたユーゴが目を覚ます。

 ちなみにティニアに膝枕をしてもらっている状態。

 幸せ者だな、こいつ。


「魔剣に操られていたようだな」


「その魔剣……最初はモンスターとかをあっさり倒せてTUEEEと思っていたけど段々自分が自分でなくなるような感覚に襲われるようになって……遂には剣を肌身離さず持っていないといけないような気になって……」


「とんでもない魔剣だな、これは……」


 というわけで魔剣はさっきから誰も手を触れずに地面に置かれている。

 下手に触って乗っ取られても困る。

 こんな事を言うのは悪いが、ほぼ初対面に近いユーゴだから遠慮なく技をかけることが出来たが女性陣が相手だとあんな真似、とてもじゃないができない。


「良かったわね、ティニア。彼が元に戻って」


「はい!ユーゴ、痛い目にあったのは皆さんに失礼な事を言った代金だと思ってよね」


「あれなぁ、マジで痛かったよ…………本当、すいませんでした」


 ほう、素直な好青年だ。

 恐らくこれが本来の彼なのだろう。


「ところでさ、ユーゴ君。ソニアって娘はは何処に行ったの?」


 リゼットの質問にユーゴは首を傾げる。


「……わからないです。ただ、彼女の誘いでここまで連れてこられて。何か『儀式』が何とか」


 瞬間、遺跡の陰から盗賊風の格好をしたソニアが飛び出し地面に落ちている魔剣をひったくると俺達から距離を取る。


「へへっ、もーらい」


「ソニア!あんた、その姿は!?それに魔剣をどうする気なの!?」


 盗賊……そう、これはリゼットが見た姿だ。

 だが俺を含め他のメンバーは彼女の職業について違う認識をしている。

 何ならギルドで会った時と口調も違う気がする。


「この時を待っていました。本来はユーゴが魔剣に取り殺されてから儀式に臨むつもりだったのだけれど」


 プリーストのような格好のソニアが別の場所から現れた。俺が見たソニアだ。

 更には戦士、重戦士、弓使いのソニアがそれぞれ姿を見せた。


「うえぇつ!?一杯いるよ!?五つ子!?」


 なるほど、『5人居た』わけか。

 だがそれでは俺達がそれぞれ違うソニアを見ていた事の説明はつかない。


「能力者。彼女、もしかして『悪魔の呪い』の能力者では無いですか?」


 メイシーの読みで当たっていると思う。

 恐らく彼女は……


「へへっ、そーだよ。あたしは『グラシャボラスの魂房』の能力者。自分の魂を分割させて新たな自分を作り出すことが出来る。更には同一の存在である自分は『重なる』事が出来るのさ」


「そういう事か。5人が『重なって』いたから見る人によって認識が違う」


「そこが可笑しいんだよね。だってユーゴ達には一貫して弓使いのあたしが見えてたのにさ。まあ、いいけどね。それじゃあ、みんな!行くよ」


 盗賊ソニアの声掛けで4人のソニアが彼女の元に集う。

 そしてプリーストのソニアが何やら呪文を唱えると5人のソニアが黒い渦に包まれる。


「ソニア、あいつ何をする気だ!?」


 ティニアに支えられながら立ち上がったユーゴが叫ぶ。

 正直ろくでもない事だろう。

 やがて黒い渦が消えるとその中央には魔剣フッケバインが腕と同化した盗賊ソニア『だけ』が立っていた。


「うぇっ!?一体何が……」


「ふふふ、ありがとうねユーゴ。これで魔剣フッケバインはあたしの所有物になった。5人に分割させたあたしの魂4人分を生贄にして所有者を書き換えさせてもらったわ」


 おいおい、こいつ分割した自分の魂を生贄にして魔剣を自分のものにしたっていうのか?


「所有者を……書き換えた?ソニア、あんた……」


 皆、突然の出来事に理解が追い付いていない。

 いや、アンジェラは何かを察している様だ。


「あなたもしかして……『破界の眷属』?」


 破界の眷属。

 アンジェラが未来から来た娘・ケイトから聞いた闇でうごめく存在。


「へぇ、あたし達の事を知っているんだ」


「イシダ・シラベ……未来から来た、彼女があなたと同じようなざらついたプレッシャーを出していたわ」


「ああ、わざわざ未来からやってきてあっさり敗れた愚か者か。そう、あたしは『破界の眷属』のひとり。魔剣をこの手に納める為、ユーゴのパーティに入り込んでいたわけよ」


 やれやれ、厄介なものをパーティに入れていたな、ユーゴは。


「その剣をどうする気かな?まあ、それで世界をどうこうしようとかろくでもない事を考えているのだろうけどね」


「まあ、そういう事さ。礼を言うよ、ナナシ。おかげで思ったよりも安全に魔剣を手に入れることが出来た」


「そうかい。だがお前たちの目的が人に害をなそうとしているものであるなら、放っておくわけにはいかないな。早速で悪いが、その魔剣を返却してもらおうかな」


 俺の言葉にソニアは不敵な笑みを浮かべ指を鳴らした。

 すると魔法陣が現れ5体程度の戦闘人形が出現する。

 全てが剣を持つタイプだ。


「返せと言われて素直に返すものですか。行きなさい、ターロス!!」


「仕方がない。アン、リズ、メイ!蹴散らすぞ。ユーゴとティニアは下がっていろ!!」


 襲い掛かってくる戦闘人形は初級モンスターの中でも上位の実力を持つが俺達からすれば雑魚でしかない。


水斬輪(アクラ・セリーニ)!!」


 アンジェラが呪文を唱えると水が円月輪のような形になり高速で敵へ飛んでいく。

 そしてそのまま3体が刃に斬り裂かれ倒れた。

 更にリゼットが一体の首を紅色刃で跳ね飛ばし倒した。

そのまま残り1体の背後からボディを刃で貫くと回転し投げ捨てる。


「くそっ、それなら!」


 更に3体のターロスが召喚されるがメイシーが大楯ごと殴り倒し2体を撃破。

 残りの1体は俺がパワーボムで片づける。

 あれ、俺が一番活躍少なくないか!?


「くっ、こいつら……」


 あっという間の出来事だったので逃げる時間を確保できなかったソニアが焦る。

 だが……


「手伝ってあげるわ」


 聞き覚えのある声。

 これは……こいつの声は


「久しぶりね、七枝。どれくらいぶりかしらねぇ」


 遺跡の上部に立つのはイシダ・シラベ。

 この時代のイシダ・シラベであった。

 俺と同様に転生前より若返っている。転生前の彼女は30近くだったはずだ。

 今の彼女は20代前半くらいの若さである。


「イシダ!あんた、この世界でも何か企んでいるのか!?」


「失礼ね。私はこのくだらない世界で私らしく生きているだけよ」


「シラベさん!」


 メイシーがイシダを睨みつける。

 彼女は未来から来たイシダに絶交宣言をしている。

 基本マインドはこの時代のイシダも同じはずだ。メイシーにとっては警戒すべき相手というわけだ。


「あら、メイシー。お久しぶりね。まさかあなたが七枝の妻になるとは人生ってわからないものね」


「お聞きします。あなたはナナシさんと……私の家族と対立するつもりですか?」


「彼とは決して交わらない平行線だからね。楽しみの邪魔をするなら排除するだけよ」

「そうですか……それなら、やはりこの時代のあなたとも相いれないと考えていいわけですね」


「まどろっこしいわね。まあ、そういう事ね。つまり私はあんたにとって敵って事ね」


 イシダがオカリナの様なものと黒い歯車を取り出す。


「イシダ、何を!?」


「魔剣士ソニア。実験ついでにあなたが逃げるのを助けてあげる」


 2つの歯車をセットしたイシダがオカリナを噴出す。

 陰鬱な気分になるようなメロディが流れると彼女の左右に2体のモンスターが現れた。

 1体はクアドラトロン。サートス村で戦った魔獣だ。

 もう1体は先日、街中で戦ったエリマキトカゲ。

 2体は黒い粒子になりイシダの身体を包み込んだ。

 そして…… 黒い粒子の渦から襟巻を生やしたクアドラトロンが飛び出しリングに降り立った。

 その体躯は依然戦ったクアドラトロンよりも一回り巨大であった。


「これが私の新たな研究成果。『魔獣融合化』よ!!」


 こ、こいつ。モンスターと一体化しただと!?


読んでくださってありがとうございます。

面白い、続きが読みたいと思った方は是非、評価とブクマをよろしくです。

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