第69話 救済される魂
◇アンジェラ視点◇
「あたしがナナシさんを救う!それでもって、ナナシさんと結婚する!!」
「あなたそんなこと言っている場合ですか!!?」
ある意味ごもっともなメイシーの突っ込み。
だけどあたしは怯まない。
「場合なのよ!言っとくけどあたし、誰にも負けないくらいこの人のこと好きなんだから!伯母さんにだってね!!!」
「あーもう!訳のわからない事を言い出した!!」
「見てなさい。メイシー!これがあたしの、本気告白って奴よ!!!」
暴風の様に吹き荒れる力の奔流。
とりあえずはあれを何とかしてナナシさんに近づかなくてはいけない。
風迅脚を重ね掛けし身体能力を強化、ナナシさんの周囲を回りながら水流連撃弾をばら撒く。
ナナシさんは腕を振るってあたしの魔法を薙ぎ払う。
同時にエネルギーの塊が飛んでくるが身体強化をしているのでしっかり回避。
「わお、何これ。結婚前から夫婦喧嘩ってやつ?ナナシさんの意外な一面発見じゃない!!」
「ア、アンジェラ……」
リゼットとメイシーが唖然とし表情であたしを見ている。
「水流封!」
両腕から水の竜巻を放ちナナシさんを飲み込む。
一瞬でナナシさんは振り払うけどそこであたしは練りこんだ魔力を指先で『回転』させる。
伯母さんが苦しみの末に手に入れてあたしに継承してくれた能力。
「μ―ジック!ナナシさんを押えなさい!!」
放った水弾の一撃はあたしの『意思』の元、ナナシさんが払いのけた周囲の水を巻き込みナナシさんを覆い動きを止めた。
同時に力の噴出が収まり暴風が弱まる。
「動きが止まったよ……でもアンジェラここからどうするの!?」
どうするかって?
「魔法の絨毯!!」
ナナシさんから初めて貰ったもの。
知っていますか?男の人が女の人に指輪を贈るってもう凄い事なんですよ。
あたし本当にあの時びっくりしたんだから。
魔法の絨毯に乗ったあたしは更に2つ目の魔道具を起動。
「時刻みの砂時計!!」
出た数字は2。
2秒って空気読んでよこいつ!!
とは言え2秒もあれば十分。
何をするかと言えば……
「いっけぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
魔法の絨毯のスピード+時刻みの砂時計による高速移動。
即ち超高速移動でナナシさんの防御が復活する前に懐に飛び込み抱き着く。
「負けないで。あなたは誰でもない。ナナシさんだから!あたしの大好きな、ナナシさんだから!!!」
零距離でμ-ジックにより『回転』させたあたしの魔力をありったけ注ぎ込む。
あたしの想いの力は大きな奔流となりナナシさんの中に渦巻く『バルバトスの憤怒』の呪いとぶつかり合い……そして……
「あああああああああああああ!!!!」
あたし達を中心に緑色の淡い光があふれ出した。
◇???視点◇
俺は真っ暗な空間に居た。
「玲奈……」
目の前に現れたのは愛しい人。
俺が守れなかった人。
「ようやく会えたわね。丈一郎さん。」
丈一郎さん、と名前を呼ばれ自分の身体を見る。
ずっと慣れ親しんできたナナシの姿ではなく少しくたびれたスーツを着た中年男の姿。
「姪っ子が頑張ってくれたわ。久しぶり、というべきかな?」
「……玲奈、俺は。」
「謝らないでね。あたし、謝られるのは嫌いだから。」
「そう、か……」
ずっと後悔し続けていた。
愛する人を守れなかった事。
玲奈と丈里奈は俺の事を恨んだ犯罪者に殺されてしまった。
俺は絶望し、自暴自棄になった。
まだ守るべき娘はもう一人いたのに。
そっちを見ようともせず酒浸りになっていた。
「丈花は大丈夫。支えてくれる人がいるみたいよ。あなたの相棒の……何て言ったかしら?まあ、あの人。」
「あの野郎、俺が知らない内にそんな事になっていたのか?ていうか先輩の娘に手を出すなよ……」
苦笑。
とは言えあいつならまあ、大丈夫だろう。
「玲奈、俺ってやっぱり。」
「残念だけれど死んでいるわ。『彼』を救う為にあなたは自分の魂を融合させた。」
「ああ、そうか……だから微妙に記憶が混じっていたわけだ。……という事はナナシの基本人格は『あいつ』なのか?」
「そうね……ナナシの基本人格は『彼』だとおもう」
「そうか……なぁ、玲奈。俺はこの先どうなる……?」
「恐らくあなたの人格はもうすぐナナシから消えるわ。記憶は少し残るけれどね。あなたさえよければだけど……一緒に行かない?」
断る理由などあるはずもない。
俺は静かにう頷いた。
「そうだ、あの娘は……丈里奈は?」
「何だかね、あの子たちの事気に入ったみたい。当分留まるんですって。」
そうか、会って抱きしめてあげたかったのだがな……
そんな事を考えていると少しずつ身体が薄れていっている。
そうか。俺はようやく救われた、か。
ありがとうアンジェラ……頑張れよ。
◇リゼット視点◇
空間がどこか温かな、緑色をした淡い光に包まれた
その中で溶け合う様に感情が伝わってくる。
お兄さんの悲しみ、アンジェラの想い、メイシーのボクに対する怒り、彼女が感じていた絆。
やがてまばゆい光となってはじけた後。お兄さんとアンジェラの姿はどこにも無かった。
「お兄さん……アンジェラ………」
しばらく続いた沈黙の後、メイシーが動き出す。
「行きますよ、リゼットさん。」
「行くって……何処に?」
「決まっているでしょう。二人を探しにです。あなた、言わなければならないことがあるでしょう?逃げるなんて許しませんからね!!」
そうだ、探さなければ。
そしてみんなに謝らないといけない。それがボクの罪。
今やるべきことは……
この事件からしばらくして、ナダ王国の首都ベリアーノから少し離れた小さな村に一組の男女が現れ住み始めた。
それから数年の月日が経った……
次回から新章スタートです。
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