第58話 カース・ミラーその2
◇アンジェラ視点◇
『反射』は非常に厄介なスキルだ。こちらの与えた攻撃ダメージの何割かが跳ね返ってくる。その割合は弱いものなら1割程度で済むが4割を超えたあたりから危険度が格段に上がってしまう。
目の前にいる鏡のモンスターは何割反射のスキルだろう?ナナシさんのダメージを見る限り5割は超えている気がする。つまり、こちらの攻撃は半分ないしそれ以下は通るもののほとんどのダメージはこちらに跳ね返ってきてしまう。
「アンジェラ、こいつに何か弱点は無いのか?」
「弱点……鑑定が出来ればもしかしたら……」
だが小屋の周囲にもジャミングツリーは生えていた。魔法がうまく発動できない可能性が高い。とは言え出来ることをやってみないと。
あたしは鑑定魔法の術式を展開し敵を視る。外よりはきれいに術式が展開されたが結果は残念なものだった。
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平均Lv???
平均HP???
種族 ゴースト
わかったのは敵の種族がゴーストだったという事のみ。
「ダメッ!あたしの鑑定ではこいつがゴーストだって事しかわからないです!!」
だがふと気づいた。反射スキルは物理か魔法どちらかのみを反射する場合が多い。敵はゴースト。『打撃軽減』のスキルを持つゴーストならば反射能力も物理を対象としている可能性は高い。
「魔法攻撃ならもしかしたら……水流弾!!」
ジャミングツリーの影響により少し勢いが劣るが精一杯の力を込めた水の矢がモンスター目掛け奔った。
矢はモンスターに直撃し大きくのけぞらせる。やっぱりそうだ。こいつは物理攻撃特化型の反射能力を……と思った瞬間、体の各所に埋め込まれている鏡が光を放っていた。
「そんな……まさかこれは……ま、魔法攻撃も反射するっ!?」
まずい、やられるッ!!
そう思った瞬間、あたしの前にナナシさんが両手を広げて立ちはだかる。。
直後に何かが衝突する轟音。
「ナ、ナナシさん……?」
背を向けられているので表情はうかがえない。でもきっといつもみたいに「何だこれ?」とか緊張感の無い事を言いながらあたしを脱力させてくれるはず。そう、何事も……
そんな希望を打ち砕くように、ナナシさんはゆっくりと崩れ落ちた。
………え?
「な、何で………」
見るとナナシさんの腹部には大きな穴が開いて血があふれていた
「ハアッハアッ、ハアーハアー!!そ、そんな。ナナシさん、あたしが、あたしがうかつに魔法なんかを撃ったせいで……あああああっ!!!」
取り返しの無い事をしてしまった。全部あたしのせい。もっと威力を絞って慎重に試しすだけにしていれば、もっと鑑定魔法の精度が高くて物理も魔法も反射することがわかっていたら、地下室の存在に気が付かなければ、魔法の絨毯でこんな森を駆け抜けることが出来ていたら……
「あああああああっ──っ!!」
床板に拳を力いっぱい叩きつけ絶叫する。
手遅れだ。もうこのまま敗北してしまう。
『泣いていてはだめ。』
そんな中、あたしの耳に女性の声が響いた。




