表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/112

第57話 カース・ミラーその1

 扉を抜けた先は思ったより広い部屋だった。

 暗闇を予想していたが数か所に淡い光を放つ石が埋め込まれている。確か魔照石というこの世界の照明器具的な役割を持つ石だ。


「倉庫にしてはあまり物が無いですね。まあ、打ち棄てられた小屋だから中身はとっくに引き上げているのかな?」


「だとしたら木箱で地下への階段を隠すのは不自然じゃあないのかな。しかもあの木箱、中身は見ていないがしっかりとした重さがあった。」


 部屋を見て回ると何処からか音が聞こえる。

 ビシッ!

 ビシッ!

 何かにひびが入るような音。


「おいおい、まさか崩れるとかじゃあないよな?生き埋めとかはごめんだぞ。アンジェラ、さっさと出よう。」


 しかしアンジェラは返事をせず固まって一点を見つめていた。


「アンジェラ、どうしたっていうんだ?」


「だ、だってあれ……」


 震える声で指さした先、立てかけてある姿見に少しずつひびが入っていくのが見えた。先ほどの音はこれの様だ。

 だがひびの入り方がおかしい。だんだんとひびが大きくなっていくのではない。出鱈目にいろいろな場所に増えているのだ。次にゴキゴキと形容しがたい耳障りな音を立て姿見はフレームごと歪み段々と別の形を成していく。

 人型の怪物。綺麗な歯並びを食いしばった様な口元。

 

「こいつはモンスターか!?鏡がモンスターになったってことか!?」


「もしかしてこの部屋はこいつを閉じ込めておくためのものだったのでは!?扉の魔除けはそういう意味だったって事!?」


 だとするならば俺達はこいつに誘い込まれてしまった。そして封印を解いてしまったという事なのか。


「だがモンスターというなら倒してしまえばそれで終わりだ!!」


 俺は拳を握りしめるとモンスター目掛け飛び込み顔面にパンチのラッシュを叩き込むと相手が少しよろめいた。だが所々に埋め込まれている鏡が光ると同時だった。俺の身体に強烈な衝撃が撃ち込まれたのだ。口が切れ、血があふれ、歯が一本飛ぶ。


「な、何だこれは……今何をされた?こいつ、腕を動かしたりはしていないぞ。しかもこのダメージ……この攻撃力はまずい。」


「ナナシさん!もしかしてそいつ『反射』のスキル持ちかもしれません!」


 反射能力だと?

 つまり俺が受けたダメージは俺が本来奴に与えるべきものだったという事か。

 俺はアンジェラの傍まで下がる。


「アンジェラ、対応策は!?」


「完全な反射スキルなんてものはそうそうありません。だいたい受けた攻撃の何割かを反射するというもの。」


「つまり、一応攻撃は通っているということだな?」


「はい。でも割合がわかりません!下手に攻撃することは自殺行為です。」


「ならばすべきことは戦略的撤退だ。部屋から出てリゼットたちに合流するぞ!!」


 二人して地下室の入口へ急ぐ………が。


「そんな、こんな事って……ダメです!ここから先へ進めない!」


 地下室の入口、階段との境界線でアンジェラがもがいている。


「アンジェラ!?何を言っているんだ!?先へ進めない!?」


「部屋から出られない!この地下室そのものが別空間として外と分断されているッ!あいつを倒さないと、この空間からは出られない。撤退が出来ません!!」


 背後から、ゆっくりと鏡の怪物が近づいてくる音が聞こえた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ