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第54話 灰色の森

 転移空間の中を飛びこちらに迫ってくるフードの人物。転移空間を散歩しているどこかの誰かって感じじゃないだろうから俺たちを追ってきていると考えて間違いないだろう。もうこのタイミングで来るとか嫌な予感しかしない。そう思っていると相手はこちらに手をかざす。ほら、やっぱりね。

 掌に魔法陣が現れ、魔力の高まりを感じた。魔法を使ってくるということだ。


「ちょ、お兄さん!あれってもしかしたらだけど攻撃してくる気だよね!?」


「まあ、もしかしなくてもそうだろうな。」


「大丈夫、ここはあたしが!」


 アンジェラの手から水流弾(アクラル)が放たれる。しかしそれは敵に届く直前で凍り付き砕け散った。


「嘘っ!あたしの魔法が!!」


「察するに氷使いと言ったところか……」


 属性相性というやつか。どうやら水魔法は氷魔法と相性が良くないようだ。そんな事を考えていると敵の掌から明らかに大の大人と同じくらいの巨大な氷塊が放たれる。うん、あれを迎撃するのはちょっと難だな。避けられるかどうかと聞かれれば避けられるかもしれないが下手に喰らって結果としてリゼットやアンジェラと分断されるというのも面倒だ。まあ、メイシーは背中に括りつけているから大丈夫だろうが……うん、これは仕方がない。


「ふたりとも、しっかり掴まっていろ!!」


「うぇ?お、お兄さん何をいきなりってうぇぇぇぇ!?」


 迫りくる氷塊から逃れるため、俺は両手に二人を抱え、背中にひとりを背負ったまま宙を蹴り転移空間の「壁」へ飛んだ。俺が思うに目的地にはたどり着けなくともこの空間からは逃れられるのではないだろうか。そう考えた故の行動である。

さて、本番一発で飛び出したが結果としては正解だった。俺たちは転移空間からどこかの空中へ飛び出した。直前に「それでいい」という言葉が聞こえてきた気がする。そして空を覆う黒い雲、そして灰色の木々に覆われた森が見えた。随分と暗いが一応は昼の様だ。


「うぇぇぇ、ここどこ!?ていうか高いぃぃ!!」


 確かに結構な高さだ。このまま地面に落下したら幾ら何でもさすがに死ぬだろう。だがそれについてもすでに考えていた。


「問題ない。アンジェラ、魔法の絨毯だ!」


「はい、はいっ!!」


 俺の言葉にアンジェラが魔法の絨毯を召喚。絨毯が落下する俺達を受け止めてくれた。


「うぇぇ、助かったぁ……あ、あれ。でもここどこ?」


「さっぱりわからん。とりあえず魔法の絨毯で安全そうな場所に移動を……ってアンジェラどうした?高度が落ちているぞ?」


「わ、わかりません。何か急に失速していって……重量オーバーかな。とりあえずそのぐうたら貴族落としたら何とかなるかも。」


「うぇ!?だ、ダメだよ!ていうか4人以上乗ってた時もあるから重量は関係ないって」


 アンジェラはちっ、と舌打ちしながら仕方なく魔法の絨毯はゆっくり高度を下げていく。本当にアンジェラとメイシーは相性が悪いな。何とかならないかと考えていると絨毯はやがて森の中の広い場所に不時着した。

 アンジェラは灰色の木に手を当てる。


「絨毯の高度が急に下がったの多分この木のせいね。ジャミングツリー、魔力の流れを阻害する能力を持ってるの。1本程度だとそんなに効果はないけどこれだけ生えてるんだったらこの辺で絨毯は使えないなぁ。」


「メイシーを落とさなくてよかったぁ……ていうかそもそも仲間は落とすものじゃないからね。」


「そうだな。とりあえずさっき落ちてる最中に周囲を見渡したがあっちの方に街らしきものがあった。ここがどこにせよまずはそこを目指そう。」


 というわけで俺たちは灰色の森を進むことにした。


「ていうかこのぐうたらあの騒ぎの中でも眠ってる……ある意味すごいわ。」


 アンジェラは背中で相変わらず寝息を立てているメイシーをあきれた表情で眺めていた。まあ、このぐうたらぶりはある意味大物のそれだろう。

 歩き始めて1時間ほど経ったところで俺は立ち止まり腕を組む。


「お兄さん?」


「ふたりとも、重大な発表がある……どうやら迷ったようだ。」


「「ぇぇぇっ!?」」


 二人が目をむく。俺の目測だと街まで1時間も歩けばつくと踏んでいたのだが残念ながら町は影も形も見えない。となると考えられるのは歩いている内に迷ってしまったということだ。アスコーナで森歩きは慣れていたと思ったのだが油断したな。そんなことを考えていると前方に複数の人影が見えた。


「お兄さん、人だよ!町の人とか冒険者じゃないかな?あの人たちに聞こうよ。」


 手を振ろうとするリゼットを俺は制した。


「待て、あれは何かがおかしいぞ。人の形をしているが妙にフラフラしている。」


 人影はフラフラしながらこちらに近づいて来る。二十メートルほどまで近づいたところで、その姿をしっかりと確認することが出来た。ボロボロの服を身にまとった人型のそれは牙をむいた鬼のような形相をした怪物だった。


「人型モンスター!リゼット、あれは何か知っているか?」


「わ、わかんないよ。少なくともコランチェ周辺では見ないタイプのモンスターだよ!!」


 ああいう見た目のモンスターはゲームだとゾンビだとかそういう部類のはず。即ち、


「アンデットとかだろうか……」


 今まではコランチェの町周辺で動いていたのでモンスターの情報はリゼットたちから聞いており危険度などもある程度把握していたがこれは未知のモンスターだ。

 もし、これがアンデット……例えばゾンビだとかグールとかそういう奴で何かしら状態異常攻撃をしてくる可能性があるなら慎重に事を運ばねばならないだろう。例えば毒だ。アンジェラが解毒魔法を使えるが解毒魔法と言っても様々な種類・ランクがあるそうだ。薬と同じで毒の種類に合った魔法でないと効果は薄いらしい。

 要するに毒というのは意外と厄介な状態異常なのだ。


「こういう相手の正体がつかめない時は……そう、『鑑定魔法』!!」


 そんなものがあったのか?初耳だがこれは助かる。敵がどんな攻撃をしてくるかなど分かれば対処しやすい。アンジェラの右目周囲に魔法陣が展開される……だが形が妙に歪だった。。


「ダメ、ジャミングツリーのせいで術式をきちんと展開できない。」


「ああ、そうなるのか。だけどアンジェラ、鑑定魔法も使えたんだな。」


「いや、実は最近使えるようになったんです。これって結構レアな魔法なんですよ。まだ詳細なステータスが見られるほどのランクは習得できてないですけど……」


 なるほど、鑑定魔法とはレアなのか。鑑定系の魔法なんかMP消費1とかで商人とかが覚えているぐらいにしか思ってなかった。


「殆どステータスも文字化けしちゃっててわけわかんない感じでした。でも分かった情報も幾つかあります。あのモンスターはポープ。種族は……まずい、ゴーストです!!」



ポープ

平均Lv#&(文字化けの為確認できず)

平均HP#&@

種族 ゴースト


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