第49話 怒りの強力
「フハハハハ、面白い。正に強敵との邂逅というやつか。なればこれを使うとしよう。」
笑いながらジャビが懐から黒い水晶を取り出した。
あれは確か先日戦ったベルグの身体に埋まっていたものと似ている。
つまりはレギオンとかいう怪物に変化する道具。
「見るがいい、この俺が手に入れた大いなる力を!!」
黒水晶からどす黒いオーラが噴き出しジャビを包む。
はぁ、またあんな珍妙な奴を見ないといけないのか……
オーラが晴れると全身を甲殻類の様な装甲で覆い、蟹の様な兜を身に着けた戦士が姿を現した。
「ダークネスクラブを知っているか?堅牢な装甲に守られた蟹のモンスターよ。俺はその力を身に宿したわけだ。そしてこれは防具職人ドローガが鍛えた盾!この鉄壁の守りを貴様はどう攻略する?」
瞬間、俺の拳は恐らく高名であると思われる防具職人が鍛えたという盾に深くめり込んでいた。
その衝撃に盾が大きく凹む。
「どう攻略する?そんなものは簡単だ。そんなの、真正面から叩き潰すだけだ。」
そのまま拳で無理矢理盾を弾き装甲目掛けて更なる一撃を繰り出す。
重く鈍い轟音が響き、右胸の装甲の一部にひびが入る。
「ほう……ダークネスクラブの防御を砕くか。中々に剛の者!それでこそ楽しめるというもの。」
「楽しんでいていいのか?自慢の装甲は砕けるのがわかったぞ?」
その言葉にハッと状況に気づき顔を曇らせたジャビは後ろに飛びのき距離を取る。
「ダークネスクラブの生態を知っているか?重装甲の為に動きは遅い。しかしこいつは非常に魔法が使えるのだ。それこそが……重波!!」
魔法の名を口にした瞬間、上から何かで押さえつけられているかのごとく大きな負荷が身体にかかってきた。
「驚いたか。ダークネスクラブは重力魔法を使い獲物の動きを奪いゆっくり近づき狩りをするのだ!ダークネスクラブ単体でなら大した負荷はかけられん。だが人と融合することでその範囲は大きく変化するのだ。」
「なるほど、重力とは思っている以上に凄まじい負荷だな…………」
俺は重さに耐えつつ少しずつ歩みを勧めた。
「止めておけ。今貴様の身体にかかる負荷は体重の約3倍!まともに動くことなど出来るはずがない。貴様はただ俺に狩られるのを待つのみよ。」
「体重の3倍か。それは恐ろしい数値だ。だが……」
大きく息を吸い込み宣言する。
「何となく慣れたぞ。」
「何っ!?」
言ったとおりである。慣れたのだ。
呼吸を整え、集中していたら何となく動き方が分かるようになった。
負荷がかかっていない時に比べればはるかに遅いがそれでも歩行速度は普通と同程度にまで回復してきていた。
唖然とするジャビを尻目に俺はすぐ目の前まで接近。
「待て、貴様は、貴様は何だというのだ!?」
答えの代わりにラリアットがジャビの喉元に叩きこまれる。
俺はそのままラリアットでジャビの身体を力任せに振り回す。
1回転、2回転………そして3回点目で地面に叩きつけた。
俺は大地を蹴り大きく飛び上がると目を回し、地面にめり込み伸びているジャビ目掛け腕を突き出し落下していく。
「アサルト・フライングナックル!!」
ジャビのボディに拳がめり込み衝撃と共にクレーターが生まれる爆発した。
「こ、小僧!?」
アカツキの声が響く。
「大丈夫だ。ああいうのは『様式美』ってあやつだから問題ない。」
ジョーカーの言う通り、俺は爆発の中から無傷で生還した。
クレーターには完全にのびたジャビが倒れていた。
「お前がどんなイベントの主催者かは知らんが仲間を傷つけたのは間違いだったな。」
「あんた、まだ何かのイベントと思ってるのかよ……」
呆れ気味にジョーカーが言った。
え、違うのか?
「まあ、いい。あんたが無事でよかった。」
◇ジョーカー視点◇
俺の名はジョーカー。
ある『使命』を帯びてナナシとアカツキのクエストを監視していた。
それにしても本当にトラブルメイカーな奴だ。まさか適当にクエストを選んでナダ解放騎士団の拠点にたどり着くとは……『導き』の通りだな。
当初の予定ではスチームフロッグの討伐をさっさと終わらせて街へお帰り頂く予定だったというのに交戦しご丁寧に敵将まで潰してしまうとは。
「やれやれ、無茶苦茶な奴だ。」
だがこれでいい。確かに予想出来ない行動を取るがつまりこれは……
「着実だな。着実に『筋書』を外れ始めてくれているわけだ。それに、『俺自身の事』も、な。安心したよ……」
もちろん不安要素はまだある。だが『導き』の使命の先に俺の目的がある。
「面白くなってきたぜ。」
俺は静かにほくそ笑むのだった。
季節の変わり目だからか調子がちょっと悪いです。
評価ポイントとか入ると喜ぶので良ければお願いします。




