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第45話 塩顔の怪しい人

ネージュを救出した後、俺達は気絶したベルグを縛りギルドに連れてきていた。


「なるほど、人が怪物に変化……ですか。獣化魔道具などとも違うようですし何やらキナくさいですな。いずれにせよ彼の身柄はギルドセイバーに引き渡しましょう。」


「ギルドセイバー?」


「犯罪者を取り締まる組織のことだよ。」


 そういえばそんな説明を登録時に軽く聞いたような気がする。

 要するに警察か。


「彼の身柄を引き取りにマロージャ氏が来るそうです。」


「その人って確かこの辺のエリアの支部長さんだよね。」


「ええ、かつては冒険者であり上級重装職ギガスについている御肩です。たまたまコランチェ近くに出張で来られていたようです。」


 支部長か、どんな人物だろうか。

 この世界は冒険者が多いからそれなりに腕の立つ、そうだな歴戦の戦士な気がする。

 するとギルドの扉が開きたくましい筋肉を持つ巨漢の老人が姿を見せた。

 眼光は鋭くむき出しの上半身にはいくつもの傷が刻まれている。

 その迫力に思わずつばを飲み込んだ。


「この人が……」


 そう言えば上級重装職ギガスと言っていたな。

 なるほど、確かギガスっぽい巨漢だ。

 セドリックはカウンターから出てくると男性へと歩み寄っていく。


「ああ、いけませんよベルヘルトさん。また抜け出してきたんですか?職員の皆さんも心配されていますよ?」


 あれ、ベルヘルトってことは別人なのか?

 だが職員の皆さんとはいかに?


「ナタリアーナさんや、朝ご飯はまだかの?」


「はいはい、私はあなたのお嫁さんではありませんよ。さあ、早く施設に帰りましょうね。ちょっと彼を送ってきます。」


 セドリックはベルヘルト老人を促し外へと出ていく。


「ベルヘルトさんはギルドの隣にある老人院の入所者なんだぜ。元々、絵本作家だったんだ。」


 エルマーが横から解説してくれた。

 何だよそれ!

 どう考えても歴戦の戦士然とした雰囲気だったじゃねぇか。

 老人院というのは老人ホームみたいなところだろうか。

 となるとこの異世界、高齢者福祉の概念があるのか。

 しかし何かベルヘルトさんを見ていると妙な懐かしさを感じるな。

 知り合いということはまず無いんだが……


「やれやれ、扉を開けっぱなしとは物騒だね。」


 今度は塩顔の中年男性が入ってきた。

 頭には貝殻の様なとぐろを撒いた形の茶色い兜を被っていた。

 何と言うかパッと見はかなりやばいものを乗せているように見える。


「おいエルマー、何か不審人物が入って来たぞ。」


「馬鹿ッ!半端ねぇこというなよ。この人がさっき言ってたマロージャさんだぞ!」


 まあ、何となくそんな気はしていたんだがな。

 だがいくら何でもこの兜のデザインはなぁ。


「構わないさ。よく怪しいと言われるんだ。この塩顔のせいでね。」


「鏡を見てください。どう考えても怪しまれているのは別要素だから。」


「ハハッ!面白い青年だね。そうか、君がナナシだね。古の部族ダルガルマの末裔である超大型新人。」


 俺は無言でリゼットの方を見る。

 ダルガルマ云々を最初に言い出したのはリゼットだ。

 言いふらしたりしていないので噂の発信源はウチの連中だろう。

 そもそも、ダルガルマではないしな。

 

「えっと、そう言えば買い物行った時お店でちょっとしゃべっちゃったかなぁ……あはは」


 リゼットは口笛を吹きながら視線を逸らす。

 どうやらダルガルマ説を唱えた本人が洩らしたらしい。


「さて、この青年は……ベルグ、だったかな。いかにして魔の路へ身を落とすことになったのかゆっくり聞かせてもらうとしようかな。」


 こうして、ベルグはマロ―ジャに引き渡され連れていかれることとなった。

  

◇メイシー視点◇


 私の名前はミアガラッハ・ウォルロ・メイシー。

 ミアガラッハ家の当主として動く城で家宝マーナガルムを守り続けていました。

 今はわけあってリゼットさんの家に居候させてもらっているのですが……


「というわけで今日はボクとお兄さんで仕事に行ってくるから、アンジェラとメイシーは家の事をよろしく。ふたりで協力してね。」


「というわけだ。」


 朝方、ふたりから受けたのは恐ろしい宣告。


「ちょっと待ってリゼット!何であたしがこんなぐうたらと…」


 ぐうたらって失礼な。

 確かに私は面倒な家事は多少さぼります。

 というか正確には掃除・洗濯が苦手なのでそれの当番が来るとちょっと動くのが億劫なだけなんです。

 というわけで意趣返しです。


「何でこんな鍋を爆発させてしまうような人と……」


 意味が解りません。

 どこをどうやったら鍋を爆発させることが出来るんでしょう。


「まあ、人それぞれ向き不向きがあるとは思うがその辺は協力してくれ。」


「そうそう。ああ、アンジェラは料理禁止だからね。」


 はい、来ました。料理禁止。


「ちょっとリゼット!確かに鍋は爆発させたけどあれは事故なの!あたしの本来の実力はあんなものじゃないんだよ!!」


「本来の実力を出したら家を吹き飛ばすかもしれませんねぇ。」


「何ですって!ちょっと引きこもり!あんた表に出なさいよ!!」


「引きこもりなんで出たくありませーん。」


「ムッキー!あんたねぇ!!」


 ということでここ数日恒例のつかみ合いが始まりました。

 魔法職でありながらもアンジェラさんは接近戦にも長けていて中々のいい勝負に。

 しばらくして……私達は息を切らして床にへたり込むことになりました。

 ああ、だるい……

 結果として本日は私が料理・洗濯担当、アンジェラさんが掃除と買い出しの担当に。


「はぁ、だるい……」


 衣類を洗濯しながら呟く自分が居たのですが……城に居た時から自分の衣類を洗濯はしていたけど今は4人分。

 これが共同生活というものか……


「……悪くないですね。」


 騒がしい人達だが悪くはない。

 妙に充実した毎日がここにはあるみたいです。


「さて、お洗濯も終わった所ですし料理でもしましょうか!」

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