第44話 祝、合体技!!
俺達はアカツキに先導され逃げ出した誘拐犯を追跡することとなった。
犬の嗅覚は1億倍ともいわれている。
まあ、こいつは元々人間らしいから犬と同じ嗅覚を持っているかは不明だが追跡と言えば犬である。
「ところでリゼット、さっきの装衣の件なんだが……」
「うぇ!?えっと、あれはお兄さんが……」
「いや、飛天の装衣だが自由に飛び回ってただろ?意思があるんだなって……」
「うぇはっ!? え、そっち?え、えっとね。どうも金色の鍵の子は意思があるみたいであんな風に勝手に行動しちゃうみたいなんだ……」
そっち?
いや、思い当たる節はある。
恐らく俺がふと口にした「美しい」という一言だろう。
「そうだったのか……あ、あと急に変なこと言って済まない。単純に思ったことがつい口に出ただけだよ」
ぼふっとリゼットの顔が真っ赤になった。
ああ、またやってしまったか。
こういう事をあまり言わない方がいいんだよな。
セクハラになる。
何かで昔聞いたことがある。
興味のない人から向けられる好意ほど不快なものは無い、と。
正直俺は誰かに好意を向けられた記憶というものは無い。
恐らく失った記憶の中にも存在はしないのだろう。
故に、慎重に生きなくてはならない。
「……いや、いいんだ。済まない。忘れてくれ」
「え、あ、はい………」
そんなやりとりをしているとアカツキが脚を止めた。
「うむ。奴が逃げ込んだのはここのようだな」
アカツキが自慢げに鼻を鳴らす。
流石だと称賛したいところなのだが……
「まあ、何となく予想はしてたけどな……」
身勝手な誘拐犯、ベルグが逃げ込んだのは植物園から徒歩約2分程の所にある古びた教会であった。
「あっちゃー無茶苦茶近くだったね……」
「馬鹿だ。あんな馬鹿が姉ちゃんを攫ったのか……いや、馬鹿だから攫ったのか……」
良かった。アカツキのボロとかが出る前で。
これで一応、アカツキが役に立つことが証明されたわけだ。
もう駄犬呼ばわりはされないだろう……
とか言ってる横でアカツキは敷地内の大木にマーキングを施していた。
リゼットとジョゼの冷たい視線が注がれている。
フォローしきれんぞこれ……
「と、とりあえず行くとしよう」
教会の扉に手を掛けようとした瞬間、リゼットが俺の手を掴み首を横に振る。
「罠がある………と思う。迂闊に入るのは危険だよ」
なるほど。言われてみればその通りだ。
追跡されているなら罠の1つや2つ設置していてもおかしくはない。
何より、リゼットの勘はよく当たる。
「そうだな。だがこの扉を開けなければ中には入れないし……いや、そうか。」
俺は扉からずれると横の壁に向かって構えを取る。強く踏み込んで……
「拳の砲弾!!!」
教会の壁をぶち破った。
「な、何なんだこの兄ちゃんは!?」
「まあ、いつもこんな感じだから……」
「マジで!?」
あはは、と笑うリゼット。
一方、風通しの良くなった教会の中央ではベルグが唖然とした表情をしていた。
「ちょ、お前何やってんの!? そこは入ってくるところじゃないし、入り口に仕掛けた罠とか意味ないじゃん!!」
やはり罠が仕掛けられていたのか。
「そう思ったからここから入らせてもらった。それだけのことだ。それじゃあネージュを返してもらおうか?」
見れば教会の奥に横たわる金髪の女性がいる。
まあ状況からしても思うにあれが……
「姉ちゃん!」
はい、正解。
というわけで後はこいつを倒してお姉ちゃんを助ければミッションコンプリートというわけだ。
こっちは戦力として新たにアカツキも加わっている。
先ほどの戦いでもさして苦戦はしなかったしあっという間に勝負はつくだろう。
「あっ、ちょっと何だこれ。蔦が、蔦が脚に絡まって動けん!!」
と思た矢先、アカツキは入り口付近に設置された蔦の罠にひっかかり動けなくなっていた。
「何やってんのさ、このバカ犬……」
リゼットが心底呆れた表情でアカツキを見ていた。
何だろう、こいつは株を少し上げてそこから大暴落させるスキルとかを持っているのかもしれない。
「と、とりあえず観念してネージュを返してもらおうか。彼女を心配する弟、それに婚約者がいるのだからな」
「待てよ。エルマーは姉ちゃんを見捨てたんだぜ?あんな奴姉ちゃんに相応しくなんか……」
「そ、そうだ。ネージュには俺の様な素晴らすぃ男性こそが必要なんだよ。あんな丸々太った変わり者がネージュを幸せに出来るはずがない!!」
容姿については一度鏡を見て欲しいものだ。
差別は良くないが客観的に見てお前は化け物そのものなんだがな……
「さっきからエルマーをこき下ろしているがお前はあいつの何を知っている?確かに中々奇抜な見た目の男だ。だがあいつは伊達にあのカウンターに座っているわけではない。やってくる冒険者の無茶ぶりに出来る限り対応し適切な依頼を紹介してくれているんだ。俺の100倍はいい奴だな。それに……どうやらとても家族思いのようだぞ」
言い終わると同時に聞き覚えのある声が響いた。
「ネージュゥゥゥゥ!!!」
巨大な斧を担いだエルマーだった。
「エルマー、あなた何で!!」
「遅くなって済まなかったなジョゼ。俺だってネージュの事は半端なく心配してんだ。だからカウンターはセドリックさんに代わってもらって飛んできたわけよ」
「ほらな、あんたなら来ると思ってたよ」
「へへ、よせよ。惚れちまうじゃねぇか……って何だあの奇抜な奴は!?」
「貴様だけには言われたくないわ!!」
「いや、それそのまま返すからね!!」
リゼット、ナイス突っ込みだ。
「というわけだ、ベルグ。君の負けだと思うがどうかな?」
「う、うるさぁぁい!ネージュは俺にとって運命の人なんだぁぁ!!」
恐慌したベルグが振り返ると騒ぎで目を覚ましたネージュが身体を起こしてこちらを見ていた。
「エルマー、ジョゼ……それとえっと……って化け物ォ!?」
「化け物だと!?何処だ!?」
「いや、あんたでしょ!!」
まあ、ベルグ自体は自分の姿を素晴らしいと思ってるみたいだからな。
「待ってろ、ネージュ。今助けるぜ!!」
斧を構えたエルマーが突撃していく。
ベルグは何かわけのわからないことを叫びながら蔦をエルマー目掛け伸ばす。
「破天荒ッ!!」
振り下ろされた一撃が蔦を叩き斬りベルグのボディに大きな傷をつける。
「ヒィィッ!?」
ダメージに恐れおののくベルグをすり抜け、エルマーはネージュの傍へと駆け付けた。
「エルマー、あなたあたしを助けに……」
「御免なぁ、遅くなっちまってよ」
何やら入り込めない空気を醸し出す中、ベルグの傷口に黒く光る結晶体が見えた。
「お兄さん、あれ!」
「そうだな。どうやらあれを潰せばどうにかなると俺は思うんだがリゼット、君はどうかな?」
「奇遇だね、ボクも同じ意見だよ!」
「それではエルマーへの結婚祝いを兼ねてあの結晶体を壊して幕引きと行こうか」
「お兄さん、お兄さんが心に思い浮かべたままの事をやってみて!ボクはそれに対応するから!!」
心に思い浮かべたままの事……いや、確かにあるがそれでいいのか?
そんな事を考えているとリゼットは空中へと飛び上がる。
そうだ、どういうわけか知らないが俺が思い浮かべた事はそれなんだ。
「よし、行くぞリゼット!!」
俺も飛び上がりリゼットの両脚を掴む。
リゼットは剣を頭上へとまっすぐ構えている。
俺はリゼットの脚を持って角度を整えた。
そう、切っ先がベルグの方へ向くように。
そしてそのまま空中を蹴りリゼットと共に加速。
更に回転を加えながら槍のごとくベルグへと突っ込んでいく。
「行くぞ─っ!スパイラルギムレット──ッッ!!」
「うぇっーーーーやっぱ怖いィィ!!」
回転する槍のごとき一撃はベルグによるありったけの迎撃を弾き弱点となっているであろう結晶体に突き刺さりそのまま抉り砕いた。
ベルグは身体から黒い煙を出しながら人間の姿に戻り崩れ落ちる。
対象の撃破を確認すると俺はリゼットの脚を離した。
くるくると回転するリゼットをお姫様抱っこのような形で受け止め地を踏みしめる。
「半端ねぇ……あ、あれは心が通じ合うパートナー同士が使えるという。」
「合体技!!」
エルマーとネージュが顔を見合わせる。
「すげぇ、すげぇよダルガルマの兄ちゃん!!」
ジョゼは何か勘違いが加速している。
だからダルガルマじゃない。
「うえぇ~目が回る……お兄さん、この技色々考えなおした方がいいよ……」
「ああ。再考の余地は十分にあるな。だがリゼットが合わせてくれたおかげで素晴らしい技が出来た。ありがとう!」
この日、俺達は合体技を習得した!
季節の変わり目かちょっと最近体がだるいです。
ポイントとかポチッと増えると現金人間なのでやる気出るかもです(笑)




