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第38話 崩れゆく城

 アンジェラの攻撃が防がれた。

 どうも少女は魔法使い系である様だ。


「あれは……月魔法?かなりレアな属性です!一部の亜人族にしか使えないやつですよ!」


 と、アンジェラ。

 確かに月属性という魔法はあまり聞かない。

 神秘的な響きもあり強そうだ。


「私の名はレティシア。金狼族の戦士です!」


「金狼族!お兄さん、確か東の大陸はザムザの山に住んでいるっていう戦闘部族だよ」


 この世界の地理には疎いのだがどうも外国に住む種族という認識でいいのだろうか。

 となると何やら訳ありのようだな。

 いずれにせよ激突は避けられないのかもしれない。 

 緊迫する空気の中、飛び込んでくる影があった。


「うっひょー! やっと取れたぞメイシー!! 咥えたと思ったら壁につっかえて中々出られなくて難儀したものよ。早速で悪いけどもういっかい投げてくれね?」


 木の棒を咥え満面の笑みを浮かべる駄犬……いや、元は人間だったというアカツキであった。


「……空気を読みなさいこの駄犬」


 ああ、飼い主であるメイシーもそう思ってたんだ。


「え、何?我めちゃくちゃ注目されてる?総ウケしとる!?」


「……何ですかこの超ウザい犬は……」


 敵であるレティシアも冷ややかな表情でアカツキを見ていた。

 そんな彼女に気づいたアカツキは……


「………ギガッとズッキューン! 犬耳かわいこちゃんキタァァァ──!!」


 大事そうに咥えていた棒を放り出し天を仰ぎ雄たけびを上げた。

 尻尾もすさまじい勢いで振っている。


「……うわ、気持ち悪っ!超気持ち悪っ!!」

 

「ねぇねぇ、君何処から来たの!? というか独身? 良かったら二人で野山を駆けない?」


 アカツキ、あんた完全にひかれているぞ…… 

 確か元は人間だったんだよな。何かもう戻れない感じになってきてる気がするんだが。


「ひっ、ち、近寄らないでっ!! 月光衝矢(リュシラル)!!」


 アンジェラがよく使う魔法の月属性版と思われる魔法が放たれる。

 アカツキはそれを平然と避けると一歩、レティシアに近づく。


「ねぇねぇ、好きな食べ物は何かな?我は焼きターフーが好きなんだけどね」


 ちなみにターフーとはタフ豆という豆を加工して作った食品で……まあ、要するに豆腐だ。


「ひっ!月光連魔衝矢(ガトン・リュシラル)!!」


 4本の矢が時間差で発射されていくがアカツキは歩みを勧めながら紙一重で避けてレイチェルに近づいていく。


「ひぃぃぃっ!?」


「な、何だってんだこの犬コロ!? お、おい何とかしやがれい」


「そ、そんなこと言われても……」


 まあ、変態ぶりが目立つのだがさり気なく凄いよな、こいつ。

 そんな彼はレイチェルの前にたどり着き……


「好きです!我と結婚してください!!」


「いやぁぁぁぁっ!!」


 顎を蹴り上げられダウンする。

 本当に何しに来たんだろうこいつ。 


「ガ、ガンジール。『炎』は頂いたのですから早く撤退しましょう」


「な、何を俺様に命令なんか……」


「早くっ!!!」


「は、はいっ!!」


 さっきまでガンジールに虐げられていたレイチェルだったがここに来て立場が逆転。

 それほどまでに気持ち悪かったんだな、アカツキの求婚。


「あれ、今炎って言ったけど炎って……」


 見るとガンジールの手には火が灯ったランタンが握られていた。


「む、いかん。それは『フラウロスの炎』!?」


 起き上がったアカツキが叫ぶ。


「何だって!?」


 確かこの城を動かす動力になっている能力じゃなかったかそれ。


「呪いの中では数少ない分離しての持ち出しが可能な能力なのだ。もしあれが無くなるとこの城は……崩壊する!」


 おいおい、それってヤバくないか!?

 そんな事を考えているとレイチェルとガンジールの影から不気味な姿をした全身が黒ずくめな人型の何かが現れる。

 人型の額に当たる部分に唇がついており眼はどこにもない異形だった。


「シェイド、超いいところに来てくれました!!」

 

「……炎は手に入れたのか?」


「へへへ、あたぼうよ。この大泥棒ガンジール様にかかればこんなもの」


「………ならば行くぞ」


 シェイドと呼ばれた奴の身体から黒いオーラが飛び出し二人を取り囲む。


「いけない、奴ら逃げようとしてるぞ。アカツキ、頼む!あんたなら行けるはずだ!!」


 俺ではこの距離は間に合わない。

 だがアカツキなら至近距離に居るのだ。

 しかも元はサムライらしい。ふざけた奴だが実際はかなり強いはず。


「言われずともそのつもりよ! おい、かわいこちゃん! 連絡先の交換をお願いします!文通からはじめましょう!!」


「違うわボケェェ!!!」


 こいつに期待した俺が馬鹿だった。


「超断ります!」


 その言葉を最後に、3人の賊は姿を消してしまった。


「フラれたぁぁぁっ!!」


「「「「「……駄犬」」」」」


 俺意外の5人が呟いた。

 まあ、俺も呟きたかったんだがな……

 とかなんとか考えていると城が大きく揺れ、地面に亀裂が奔る。

 城の崩壊が、始まったのだ


「マズイ、早くここから逃げないと……アンジェラ!」


「はい!」


 アンジェラが魔法の絨毯を展開する。


「アンジェラ、後ふたりはいけそうか?」


「ギリギリだけど……何とか!!」


「わかった!おい、君達もこれに乗れ!脱出するぞ!!」


 俺の呼びかけにアカツキが慌てて絨毯に飛び乗る。

 アンジェラは彼にほうにゅしたら放り出すと言い聞かせていた。

 もう完全に駄犬そのものだ。


「…………」


 そんな中、メイシーはただ茫然と崩壊していく庭に立っていた。


「メイシー、君も!」


「わかってました。ミアガラッハはもう終わりだって。でも外へ出るのは怖くて………………」


「メイシー……」


 彼女は自分が生まれ育ったこの城と運命を共にしようとしているのか?


「……ここには私の想い出が……いいえ、ここにしか無いんです。だからもう……」

 

 離れた所でリゼットとアンジェラが俺を呼んでいる。

 もう時間はそんなにない。


「なら外を知ろう!」


「……無理ですよ」


「俺には記憶がない。ナナシという名前も便宜上名乗っているだけだ。自分がどんな人生を歩んで来たか、それを探している。正直、自分の想い出が何処にあるのかわからない。もしかしたらどこにも無いのかもしれない。でも……思ったんだ。想い出ががここにしか無いなら、新しく作るしかないって」


「新しく……」


 メイシーの立つ周囲が大きく沈み始めた。


「俺達と行こう!新しい想い出を作りに!!」


 俺は落ちそうになるギリギリのところでめいっぱい腕を伸ばした。


「何でそんな事……届かないかもしれないのに」


「だとしても俺はこの手を伸ばす!!」


「!!」


 メイシーは何かを決意し足場を蹴り飛び上がると俺の手を掴んだ。

 絶対に離しはしない。何が何でも助けて見せる!!

 俺はその手を掴むと力いっぱい引き上げた。


 俺の足元も崩れ始める。

 これは流石に……


「疾風の時刻み!!」


 背後でアンジェラの声が聞こえ、気づいた時には俺とメイシーは魔法の絨毯に上に居た。

 絨毯も高度を上げて城から離れつつあった。


「今のは……」


「疾風の時刻みを無理やり使いました。何か空気読んでくれて9秒も時間くれちゃって……それで、何とか二人を乗せて上昇したんです。まあ……かなり疲れちゃったけど……」


 メイシーは絨毯を撫でながら呟く。


「こんな魔道具が……」


「感謝してよね。ナナシさんがあんたを救おうとしてたから……」


「いや、ボク達この子の家に不法侵入して大暴れしちゃった張本人だから中々複雑な事情だよ?」


「まあ、そうだけどさ……」


 メイシーは崩れていく生家を見下ろしながら唇を噛み項垂れた。


「そう言えば俺達が戦った連中は……」


「どうやらあっちも脱出に成功したみたいだよ」


 リゼットの指さす方向には女騎士が操る飛竜が一匹。

 その背には侵入して来て俺達が倒した連中の姿が……

 飛竜はそのまま彼方へと飛んでいく。


「こっちも帰りましょう。私も、いつまで絨毯を維持できるかわからないし。空のモンスターはリゼットがブレスで倒してくれるから安心よね」


「うえぇっ!?あ、あれはブレス攻撃ってわけじゃ」


「えっ、この方は竜人族の方なんですか?」


「だから違う!!」


 こうして動く城の冒険は幕を閉じた。

 そして……

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