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第3話 ムキムキなクマと友情を育んだ話

 コランチェの街へ歩いていく道すがら、俺はリゼットからこの世界について様々な事を教えてもらっていた。 

 彼女は俺が異世界から来た人間とは知らない。俺の記憶が戻るようにと色々情報を与えてくれた。とはいえ、それで記憶が戻るはずも無いのだか……

 この世界には大小様々な国があるようで俺達が今いるのはナダ共和国といい、商業が盛んな国らしい。

 そして今は、冒険者ギルドについて教えてもらっているところであった。


「なるほど。冒険者ギルドに来た依頼を解決し、報酬を得。それが冒険者というわけか。」


 リゼットから聞かされたギルドと冒険者の仕組みはよくゲームで見る冒険者ギルドそのものであった。イメージしやすいものであるのは非常に助かる。


「まあ、ボクみたいな初級冒険者なんかだと受けられる仕事も大して危険なものじゃないんだよ。安全の為もあって狩場への入場はランクによって細かく決められているんだ。」


「冒険者のランクというのはどんなものがあるんだ?初級、中級、上級くらいは予想ができるが……」


「正解。そしてさらにその上に超級っていうのがあるよ。更に各級は5等から1等までランクが分かれているんだ。5が一番下で1がその級の最高。ちなみにボクは1等初級冒険者なんだよ。」


 なるほど、結構細かく分けられているな。

 こうすることで実力に会わない依頼を受け命を落とすことを防いでいるということだ。


「ランクが高くなると当然、危険度も報酬も上がるよ。それと、時々高ランクの冒険者自体が国とかから賞金首に認定されたりすることもあるんだ。そういう例は滅多にないんだけどね。」


 賞金首というものもあるのか。

 一線で活躍していたのに危険認定されるとかシャレにならないな。


「まあ、札付きになるのはごく一部の冒険者だから安心して。例えばコランチェで祀られている拳聖コウ様は100年以上前に活躍した超級冒険者なんだ。村を襲った神話級の魔物を拳だけで退治したそうなんだ。ナダ共和国政府からも聖人として認定されているんだよ。」


 拳だけで撃退か。

 余程の筋肉馬鹿なのだろうな。

 まあ、筋肉は嫌いじゃない。筋肉は正義だ。

 とまあ、こういう考え方をするところからして俺は体育会系だったのだろうか。


「超級は色々と人の域を超えた人達なんだよなぁ。ボクなんか足元にも及ばないさ。」


 リゼットは自嘲気味に肩をすくめた。

 だが、思うに彼女は本人が思っている以上に実力があるのではないかと踏んでいる。

 というのも出会ったら瞬殺ものだというコープスウルフから彼女はしっかり逃げていた。

 そもそも初級とはいえ1等というランク。見方を変えればほとんど中級じゃないか。

 もう少し自信を持ってもいいと思うのだが……


「そう言えば先ほどだがあのコープスウルフとやらはこの辺のモンスターではないと言っていたね。どういうことなんだ。」


「この辺一帯はアスコーナ森林地帯って言うんだけど比較的モンスターのレベルも低いんだ。モンスターは最下級、下級、中級、上級、最上級の5つにランク分けされていてるんだ。この森に棲んでいるのは最下級や下級がほとんどだけど中級も何種類か混じっているんだ。コープスウルフは中級なんだけど生息域が違うんだ。ここから北にあるゴルガ峡谷っていうところのモンスターなんだ。そこは本来、中級ハンター以上でないと入場できない危険地帯なんでこの辺に出てこられるとかなり焦っちゃうよ。」


 随分と新しい地名がいろいろ出てきたな。

 とりあえずこの辺は比較的おだやかな生態系が築かれているがそこに危険地帯のモンスターが紛れ込んだんでびっくりということか。

 理由としては何だろうか。そのゴルガ峡谷とやらの生態系が崩れ追いやられたとかそういうことだろうか。

 何か厄介事の気配がしてきたぞ。ゲームならイベントが起きる前触れだ。

 まあ、とりあえずそれは置いておいて気になることがあるからな。

 そろそろ回収しておこう。


「ところでリゼット。話の腰を折ったならすまない。ひとつ、教えて欲しいことがあるのだが……そうだね、右を向いて欲しい。」


「え、何だろう?いいけど……」


 右を向くと両腕に力こぶを作りポージングを決めるクマが立っていた。

 黒く光る筋肉がまぶしい。いい筋肉だ。


「先ほど君はこの森に生息している数少ない中級モンスターについて説明をしてくれたのだが……あれはその中級にカウントされているか?」


◇リゼット視点◇


 お兄さんが指さした先にいたのはマッチョベアーだった。

 紛れもないこの森に棲む数少ない中級モンスター。

 驚異的な筋肉から繰り出される攻撃はこの森では最強クラスの威力を誇るという危険生物。


「それにしても中々、いい筋肉をしているな。あのクマ。」


「えっと、あのモンスターはとんでもなく強いよ。ただ基本は自分の筋肉をみせつけているだけだからポージングを邪魔さえしなければ……」


 言い終わらないうちにお兄さんは足元にあった石をマッチョベアーに投げつけていた。

 ちょっと、何してんの!?今の話、聞いてたよね?言い終えてはないけど……

 ほらぁ、マッチョベアーが超睨んでるじゃないか!?

 どう考えても危険な兆候だよね。


「リゼット、大変だ。どうやら先方を怒らせてしまったようだ」


 だよねぇ。

 そう思った瞬間、ボクは脱兎のごとく駆け出していた。

 お兄さんもその後をついてくる。


「見ればわかるよ!一応聞くね。何で石なんかを投げたの!?」


「いや、何というか邪魔したらどうなるかと好奇心に負けた。大変申し訳無いと反省している次第です」


 そっか、好奇心かぁ。

 それじゃあ仕方がない……わけがないじゃないか!

 背後からは木をなぎ倒す音が聞こえてくる。

 ポージングを邪魔され怒り狂うマッチョベアーがボク達を追いかけている音だ。

 つまりあれはボク達にとって破滅の足音。

 

「こうなったらできる限りクマから離れて……」


 振り向くとこちらの助言に反し足を止め、マッチョベアーと対峙するお兄さんの姿が目に入った。

 本当にこの人はぁぁぁ!!


「ちょ、お兄さん。本気で何をして……」


「さあ、来い! その筋肉の躍動を俺に見せてみろ!」


「意味わかんないよぉぉぉ!!」


 マッチョベアーが飛び上がり肥大化した右腕で強烈な一撃をお兄さん目掛け叩き込んだ。

 衝撃――

 ああ、終わった。前にマッチョベアーのポージングを邪魔したイーラドラゴンをあの一撃で倒しているのを目撃したことがある。

 イーラドラゴンというのは獣脚種に分類される中級モンスターだ。


 体長は3mほどだが「ドラゴン」の名を冠しているだけありその強さは折り紙付きだ。

 草食性だが短気なので無暗に縄張りに入るのは命取りだ。

 そんなドラゴンを退けるムキムキ熊。

 たとえお兄さんがそれなりに強いとしてもあれを防ぐことができるとは到底思えない。


「ほう、なかなかいいパンチじゃないか。やるな!」


 あ、割と無事だった。

 お兄さんは両腕を顔の前で揃え攻撃を受け止めていた。

 本当にこの人はどうなってるんだろうか。

 マッチョベアーはいきり立って更にお兄さん目掛けパンチを嵐のごとく叩き込む。

 怒涛のラッシュによりお兄さんの身体は後退するも姿勢はそのままだった。つまり、防いでいる?


「その筋肉は君がたゆまぬ鍛錬により得た至宝。わかるよ。繰り出される一撃一撃から君の汗と涙が伝わってくる!」


 マッチョベアーを褒めたたえたお兄さんは防御姿勢を解くと突き出されたマッチョベアーの腕をとり、そのまま後方へそり投げ地面に叩きつけた。


「投げたー。このお兄さん、クマを投げたよ!!」


 マッチョベアーはすかさず起き上がるも攻撃はせずお兄さんとにらみ合っていた。

 そして……


「邪魔をしてすまなかった。いい戦いだったよ。」


 どちらからともなくお兄さんとマッチョベアーは抱き合ったり、握手をしたりしてお互いの健闘を讃え合った。

 やがてマッチョベアーはお兄さんに別れを告げ、森の奥へと消えていった。どうやら友情を育んだらしい。


「うむ。凶暴という割には結構いいやつだったな」


「もう、何なんだよこれ!!」


 助かりはしたけどもう色々ボクの理解を超えている出来事であった。

 本当にこの人、何者なんだろう……

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