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第27話 王から賜った家宝がとんでもない事になっている件

 仕掛けた問いかけをあっという間に答えられたメイシーは悔しそうにつぶやく。


 「まさか『フラウロスの炎』の能力者が何であるか一瞬で看破されるとは……あなた、ただものではありませんね……」


 いや、だってあれだけヒントあったらな。

 まあ元居た世界にそういう物語とかもあったわけだし俺にとってはその答えへの到達は難しいものじゃなかっただけだ。


「まあ、お兄さんが只者でないという点は大いに同意できるかな」


「うんうん。それは言えてるよねー。発想が色々とぶっ飛んでる人だからねー」


 アンジェラ、俺が思うに君も大概ぶっとんでる人種に仲間入りしようとしているぞ。


「この城が動く理由はよくわかった。だが今はシュラム王国の領地ではなくなり別荘地としての役割は無くなったのだろう。なぜ今も動いている?」


「うむ。元々、ミアガラッハ領だったこの地域なのだがオクトヴァ殿はあまり進んで統治に臨む方ではなかった。放任主義というか民の力を信じる的なところがあってな」


 物は言いようだがやはりそれは領主としてどうなのか……


「無論、何か大きな問題が起これば出向くこともあったのだが基本は放任だ。この居城に引きこもっていることが多かった。部屋に引きこもり大好きな読書にふけったりとな。それで、ある日この城が動くとなった時、オクトヴァ殿はこれ幸いと城ごと引きこもったわけだ」


 なるほど……本当に意味が解らん。

 何がこれ幸いなんだよ前領主殿というのは。


「城ごと引きこもるってまあ、スケールがでかいがなぁ。それでも必要な物資とかはどうするんだ。やはり街へ行くなりしないといけないだろう。」


「最初の頃はオクトヴァ殿は使用人を遣わして生活に必要なものを求めていた。だが段々使用人にもついていけないと辞めていくものもおりこのままでは引きこもり生活に支障が出ると判断した。そこで一計を案じたのだ。オクトヴァ殿は城の内部に菜園を作り、他は周囲のモンスターを狩り外の世界とのつながりを最小限にする自給自足生活を編み出したのだ」


 何だかドキュメンタリーが作れそうな感じだが冷静に見れば格好悪いぞ前領主。

 まあ、娘さんが目の前に居るのだからそうそう批判もせんがな。

 というか元貴族だけどやってることはハンターじゃねぇか。


「城ごと引きこもり数十年。その中で生まれたひとり娘であるメイシーが家督を継ぎ、この城に引きこもり今に至るわけだ。」


「ということです」


「えーと、それじゃあ今この城に住んでいるのは……」


「城主である私とそのペットのアカツキというわけです」


「ちょ、メイシー。だから私はペットではなく家臣だと何度言ったら……」


 メイシーが不意に投げた木の棒。

 アカツキはそれを尻尾を振りながら追いかけて行った。


「やっぱペットじゃねぇか!!」


「というわけで、私は生まれてからずっとこの城に住んでおります。両親が亡くなってからは城主として、この城を管理しております」


「あ、あのさメイシーさん。でももうミアガラッハ領は無いんだよね? それなら何でずっと城に居るのさ。」


「貴族としての地位は失っていますがそれが貴族としての務めです。領民の多くはミアガラッハを忘れているでしょう。知らない方も多いかと思います。」


 アンジェラはかろうじて知っていたが若い世代だと知らないものも多いだろう。

 現にこの城は悪い魔法使いの巣窟と伝わっていた。


「ですが私は元貴族として、この城の主として城を守る義務があります」


「だがそんな生活はいつまでも続くまい。今は若いがいずれ年を取った時、この生活が続けられるのか?人というのは誰かとつながらず生きていくことは出来ないぞ。さっきのアカツキも恐らく君より先に逝く。そうなると君はひとりきりになってしまうのではないか?」


 メイシーが固まりふるふると震えだす。


「べべべ、別に構いませんわ。わ、私には貴族としてのかく、かくかく覚悟がばばばば」


「無茶苦茶動揺してるじゃねぇか!!」

「と、ともかく。私はそういうわけでこの城を守っているんです。私の城なのですからその事をとやかく言われる筋合いはありません。」


 それは正論だ。

 俺が先ほど言ったのは俺の価値観でしかない。


「そうだな。メイシーにはメイシーの価値観があるのだからそこは尊重しないといけないと思っている。気を悪くさせたなら済まない。」


「ご理解いただけたなら幸いですわ。ところで、話はだいぶ戻りますがあなた方はマーナガルムをお探しと言うことでしたわね。」


「ああ。ジャージのくだりで大分それたが俺達の目的はそれだ。別にそれを持っていくとかそういうわけではない。ただ、マーナガルムを見せて欲しいんだ。」


 メイシーはしばらく考え込む。

 

「ま、まぁ減るものではないですし。あなた方も悪い人じゃないようですし……いいでしょう。それではマーナガルムを呼びますわ。」


 呼ぶ?何、呼んだら来るの?

 リゼットとアンジェラも頭の上にクエスチョンマークが浮かんでいる状態だ。

 メイシーは懐から掌に収まるくらいの黒く細長い道具を取り出した。

 表面には幾つか突起の様なものがあり……って俺はあれがどういうものか知ってるぞ。

 小型のリモコンだ。え、本当に何。リモコンで呼ぶ?

 メイシーがリモコン上部のボタンを押すと突然彼女の前に巨大で緑色な金属の塊が姿を現す。


「えぇっ!何もない空間から出てきたよ!?」


「魔道具!かなり高位の魔道具だよリゼット!!」


 なるほどなぁ、呼ぶってこういう事な。

 ボタンを押したらあっちから出てきてくれるかぁ。

 多分、イシダって奴の仕業なんだろうなぁ、これも。


「これがかつてシュラム王国より賜った家宝。マーナガルムの大楯ですわ。表面にあしらわれている狼の紋章は我がミアガラッハの家紋です。以前は城の象徴として城壁に埋め込まれておりました。」


 まあ、これだけでかいと盾として持ちまわるのは無理だ。

 5m弱はある。巨人とかでないと扱えないような代物だ。

「城壁の一部が崩れ、このマーナガルムも庭に落下してしまい困っていた時、偶々お知り合いになったシラベさんが改造をしてくださったんです。」


 いいのか? 家宝改造されちゃっぞ。

 ワープ機能付いてるぞ?


「なんかたくさんボタンがついてますけどどういう機能があるの?」


 アンジェラが興味津々といった様子でリモコンを見ている。


「そ、それは秘密ですわ。」


 物欲しげな顔でリモコンを眺めるアンジェラ。

 うん、これはやるな。こういう時、この娘は暴走する。

 そう思っていたら案の定、アンジェラは横から手を伸ばしボタンの1つを押してしまう。

 メイシーが「ああっ」と声を上げる中、マーナガルムの装甲が稼働し展開していく。

 何だその心躍る機能は。この機能を付けた奴はロマンが分かっているな。


「お、お兄さんなんか目が輝いてるよ!?」


 装甲が展開したマーナガルム。

 そこにはやはりというか座席の様なものが備え付けられていた。

 はっきりって、グッショブだ。


「わー、ねぇねぇ、これは何なの?」


「こ、これはですね……」


「メイシーの寝床だ。」


 木の枝を咥えたアカツキが戻ってくる。

 お前もう完全に犬だわ。威厳ある声と行動が1ミリも同居してない。

 だって表情は『もう一回投げて』って感じだぞ。


「完全防音。空調完備。音楽もかかり居住性は抜群。そこへ入るとメイシーは数日は出てこない。その名も引きこもり兵装『マーナガルムMk2セカンド』!!」


「ひ、引きこもり兵装……って家宝ォォォォッ!?」


 めちゃくちゃとんでもない改造されてるじゃねぇか。

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