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マーナガルムのものがたり

 昔々あるところにたいそうおなかを空かせた狼がいました。

 ある日、食べ物を求め狼が里に下りると鶏小屋の鶏たちがいました。


「こんにちは、鶏さん」


「やあ狼さん、こんにちは。今日はもうご飯を食べましたか?」


「いやいや、お腹がペコペコでたまらないよ。だからあんた達をいただくとしましょう。」


 狼は鶏たちをペロリ、と食べてしまいました。

 それでもお腹は空いたままです。

 次に狼は牧場の羊に出会いました。


「こんにちは、羊さん。」


「狼さん、こんにちは今日はもうご飯を食べましたか?」


「ええ、鶏小屋の鶏を頂きましたがまだお腹がペコペコでたまらないよ。だからあんたもいただくとしましょう。」


 狼は羊をペロリ、と食べてしまいました。

 それでもお腹は空いたままです。

 次に狼は大きな牡牛に出会いました。


「こんにちは、牡牛さん。」


「やあ狼さん、こんにちは。今日はもうご飯を食べましたか?」


「ええ、鶏小屋の鶏と牧場の羊を頂きましたがまだお腹がペコペコでたまらないよ。だからあんたもいただくとしましょう。」



 狼は大きな牡牛をペロリ、と食べてしまいました。

 それでもお腹は空いたままです。

 次に狼は畑仕事をしているお百姓さんに出会いました。


「こんにちは、お百姓さん。」


「狼さん、今日はもうご飯をたべましたか。」


「ええ、鶏小屋の鶏と牧場の羊と大きな牡牛を頂きましたがまだお腹がペコペコでたまらないよ。だからあんたもいただくとしましょう。」


 狼はお百姓さんをペロリ、と食べてしまいました。

 それでもお腹は空いたままです。

 次に狼はおかゆを焚いているおかみさんに出会いました。


「こんにちは、おかみさん。」


「狼さん、今日はもうご飯をたべましたか。」


「ええ、鶏小屋の鶏と牧場の羊と大きな牡牛とお百姓さんを頂きましたがまだお腹がペコペコでたまらないよ。だからあんたもいただくとしましょう。」


 

 狼はおかみさんとおかゆをペロリ、と食べてしまいました。

 それでもお腹は空いたままです。

 狼は更に進みます。

 次に狼は狩りをしている猟師さんと牡鹿に出会いました。


「こんにちは、猟師さん。」


「狼さん、今日はもうご飯をたべましたか。」


「ええ、鶏小屋の鶏と牧場の羊と大きな牡牛とお百姓さんとおかみさんとおかゆを頂きましたがまだお腹がペコペコでたまらないよ。だからあんた達もいただくとしましょう。」


 狼は猟師さんと牡鹿をペロリ、と食べてしまいました。

 それでもお腹は空いたままです。

 狼は更に進みます。

 次に狼は結婚式の行列に出会いました。


「こんにちは、結婚式の行列の皆さん。」


「狼さん、今日はもうご飯をたべましたか。」


「ええ、鶏小屋の鶏と牧場の羊と大きな牡牛とお百姓さんとおかみさんとおかゆと猟師さんと牡鹿を頂きましたがまだお腹がペコペコでたまらないよ。だからあんた達もいただくとしましょう。」


 狼は結婚式の行列をペロリ、と食べてしまいました。

 それでもお腹は空いたままです。

 狼は更に進みます。

 次に狼はお葬式の参列者達に出会いました。


「こんにちは、お葬式の参列者さん。」


「狼さん、今日はもうご飯をたべましたか。」


「ええ、鶏小屋の鶏と牧場の羊と大きな牡牛とお百姓さんとおかみさんとおかゆと猟師さんと牡鹿と結婚式の行列を頂きましたがまだお腹がペコペコでたまらないよ。だからあんた達もいただくとしましょう。」


 狼はお葬式の参列者達をペロリ、と食べてしまいました。

 それでもお腹は空いたままです。

 狼は更に進みます。

 次に狼は砦を守る兵隊さん達に出会いました。


「こんにちは、兵隊の皆さん。」


「狼さん、今日はもうご飯をたべましたか。」


「ええ、鶏小屋の鶏と牧場の羊と大きな牡牛とお百姓さんとおかみさんとおかゆと猟師さんと牡鹿と結婚式の行列とお葬式の参列者達を頂きましたがまだお腹がペコペコでたまらないよ。だからあんた達もいただくとしましょう。」


 狼は砦を守る兵隊さん達をペロリ、と食べてしまいました。

 それでもお腹は空いたままです。


 やがて狼は天にも届くほど大きく大きくなっていました。

 狼は天に煌めく太陽に出会いました。


「こんにちは、太陽さん。」


「狼さん、今日はもうご飯をたべましたか。」


「ええ、鶏小屋の鶏と牧場の羊と大きな牡牛とお百姓さんとおかみさんとおかゆと猟師さんと牡鹿と結婚式の行列とお葬式の参列者達と砦を守る兵隊さん達を頂きましたがまだお腹がペコペコでたまらないよ。だからあんたもいただくとしましょう。」


 狼はぬっと太陽を飲み込もうと口を開けました。

 しかし太陽は怒りました。


「私を食べようだって?何て罰当たりな奴だ。お前の様な悪い狼はこうしてくれる。」


 太陽がひときわ光り輝くと狼は目がくらみそのまま谷底へ落ちていきました。

 ばーんっ!!

 狼のお腹がやぶけ、中から鶏小屋の鶏と牧場の羊と大きな牡牛とお百姓さんとおかみさんとおかゆと猟師さんと牡鹿と結婚式の行列とお葬式の参列者達と砦を守る兵隊さん達が飛び出して来ました。

 狼はお腹が空いたのとお腹が痛いので泣き叫びました。

 その様子を見てお月様が不憫に思い言いました。


「お前が心を入れ替えて私のために働くというなら助けてあげましょう。」


「お願いします。もう悪いことは致しません。どうかお許しください。」


 泣いて謝る狼をお月様は助けてあげました。

 狼はお月様を守るため天に上りました。

 この狼はマーナガルムと呼ばれることとなりました。


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