第2話 酒場と情報
長い船旅でお腹の空いたデウスは、町に着いてから雰囲気の良さそうな酒場に入り、腹ごしらえをしていた。
「おっちゃん!このドリンクとハンバーグめっちゃうまいな!」
自分の店の料理を褒められて不快な気持ちになる人間はいないだろう。酒場のマスターもその言葉に嬉しそうにしながら言葉を返した。
「おっ!そうかそうか。それはよかった!そのハンバーグは新作なんだよ。ありがとよ!」
デウスの訪れた酒場は、朝から出来上がっている者、飲みにやってきた者、噂話を楽しむ者など、多くの客で賑わっていた。飲んで騒いでいる客がいるにも関わらず、それを鬱陶しく思わないのは先ほど述べた店の雰囲気はさることながら、人当たりの良さそうなマスターの醸し出す独特の空気感に包まれているからなのかもしれない。
彼が酒場に入ったのもお腹を満たすだけでなく、情報集めも兼ねている。なんせ酒場というのは、多くの人が集まり日頃の鬱憤を晴らすかのように、皆がそれぞれの愚痴や噂話を披露する場なのだから、面白そうな話が舞い込んでくる可能性が高いと踏んでのことだ。
もちろん、今のデウスにとって必要のない話も聞こえてくる。子どもの教育方針が違うやら、嫁姑問題が激しいやら、ジャンル問わずだ。だが、遂に興味の惹かれる話がデウスの耳に舞い込んできた。
「そ、そういえば、聞いたか?さ、最近、この辺りでお偉いさん方の屋敷が襲撃に遭っているらしい。」
「あぁ、俺も聞いた。しかも、その次の日には孤児院や貧困者に食糧や金品が分け与えられてるらしいぞ。」
「ヒック、らしいなぁ。ヒック、俺にも恵んでぐでェェェ!」
「ったく、だったら朝から飲んでねぇで働けよ!ーーーだけどよ、最近捕まって空軍支部が預かってるらしいじゃねぇか。」
「ヒック、ハァーあ!ヒック、俺らの味方様をヒック、捕まえんじゃねェ!ヒック。」
「お、おい!バ、バカ!き、聞こえたらどーすんだよ!し、静かにしろ!」
酒場で繰り広げられる様々な愚痴や噂話、それを止める者、ただ聞いている者、彼らはいつもと変わらない日常を過ごしていた。ただ、今日に限っていつもと違う『非日常』がそこに存在していた。その非日常はその話を楽しげに聞いていた。まるで数多くあるオモチャの中から、たった一つの目的のオモチャを見つけた子どものように。
その事に気付くことが出来たのは、彼の目の前に立って仕事をしているマスターただ1人。
(ん?この坊主、なんかニヤニヤしてないか?ーーーなんかスンゲェ嫌な予感しかしねぇんだよな…。)
そんなマスターの心配事は外れてくれればいいのに、物の見事に的中してしまったのである。
(なんか面白い話が聞けたな。やっぱし酒場に入って正解だったな。ーーーよし、ちょっくら会いに行ってみるか!)
マスターの心配した通り、良からぬことを考え始めるデウスであった。




