クリスマスのお話 ~うさぎ・桜・東条家コラボ~
12月23日
<SIDE MIKOTO>
街はすっかりにぎやかなイルミネーションに彩られて、道行く人もどことなく楽しそうに見える。
明日はクリスマス・イブ。早く達也先輩に贈るプレゼントを探さなくちゃ。
いつもならお休みの日も達也先輩と一緒なんだけど、今日は“お母さんと買い物なんです”ってウソをついて、一人で街に出て来た。
だってあんまりにもいつも一緒だったから、今日まで先輩へのプレゼントを買いに行くことが出来なかったんだ。
どこのお店もクリスマス仕様の飾り付けで、うろうろすればするほど何をあげようか迷ってしまう。
少し疲れたので街路樹の下に置いてあるベンチに座って一息つくことにした。
「か~のじょ♪ カワイイねぇ。一人なの? お茶でも飲みに行こうか? 俺、おごっちゃうし」
なんだか軽そうな男の人(大学生くらいかな?)が3人、僕の顔を覗き込むようにして声をかけてきた。
……彼女って言ったよね。今日はこの間、達也先輩のご両親からクリスマス・プレゼントって言ってもらった白いモコモコのコートを着てるんだけど。確かに女の子が着ても違和感ない感じのデザインではあるけど、女の子に見えるわけないんだけどなぁ。
「…………」
「あれ? ひょっとして男の子、かな?」
あ、わかってくれました? 無視しようかと思ったんだけれど、これで離れて行ってくれるだろうと思って、コクリとうなづいた。
「うそぉっ、マジで?」
「ほんとに? でもこんだけ可愛かったら男の子でも全然OK!」
「だな。行こう行こう。お兄さんたちがおいしいものご馳走したげるから。あっ、それともカラオケのほうがいい?」
口々にそんなことを言いながら僕の腕を掴んで、立たせようとする。
「行かない。放してください」
声は小さかったけどちゃんと断ってるのに、グイグイと引っ張ってくる。
「いいじゃん。行こうよぉ」
「そうそう。楽しいよぉ」
とうとう僕の身体はベンチから離れてしまって、それでも頑張って踏ん張るんだけど、ズルズルと引きずられて行く。
「やだっ! 放せ!」
せっかくもらった白いコートが汚れるのはイヤだけど、もう地面に座り込んでやろうかと思ったとき、僕の腕を掴んでいた手が横から伸びてきた手にクイッと捕まれて、ヒョイッとねじられるのが見えた。
「イッテェェーッ!」
「何すんだっ、てめぇ!」
僕を助けてくれた手から視線を上げていくと、それは背の高いちょっと渋い感じのカッコいい男の人だった。
「いやがってる」
低いけれどよく通る声がひと言。
それから、助けてもらったお礼も言わずにポカンと見上げている僕の肩に、ふわりと優しく手が置かれた。
思わず振り返ると、そこにはものすごく綺麗な男の人……。
「大丈夫?」
咄嗟に声が出なくて何回もコクコクとうなづいた。
なんか透明感があるっていうか、女の人みたいな綺麗とは違うんだけど。なんかほんとにすごく綺麗。
ほけっと見蕩れていたら僕の頭を、大きな手でポンポンと叩く感触がした。
最初に助けてくれた背の高い人だ。
僕を強引に連れて行こうとしていた人たちは、いつのまにかいなくなっていた。
「あ、ありがとうございました」
遅くてもちゃんとお礼は言わなくちゃ。ほんとに助かったし。
「……いや」
……怒ってる、のかな?
せっかく助けてもらったのに、僕がもう一人の人に見蕩れてなんかいたから。
ちょっと情けない顔になっちゃったのがわかったのか、僕と背の高い人を見比べてもう一人の綺麗な人がニコッと笑った。
「斗馬は怒ったりしないよ。少し無口なだけ。あ、僕は静耶って言います」
「あ、小路尊です。あの…、本当にありがとうございました」
もう一度、二人に向かってちゃんとお礼を言う。えっと、声は小さかったけど……。
「いえいえ、どういたしまして。これからどこへ行くの? よければ送っていくけど」
そんな迷惑はかけられない。っていうか、まだまだ探さなくちゃいけないし。
プルプルと首を振ると、
「そう?」
少し心配そうに見てくれる。背の高い人も……。
ほんとに無口だけれど、でも優しい人なんだ。表情で何が言いたいかなんとなくわかるような気がする。
「あのっ、まだプレゼントを探さなくちゃいけなくて……」
「そうかぁ。でも気をつけてね。小路君、可愛いからまたあんなのが出てくるかもしれないし」
「……誰か」
「そうだね。誰か一緒にプレゼント探ししてくれる友達とか呼んでみたら?」
斗馬という人のひと言に、すぐ静耶さんが反応する。すごいこの二人も僕と先輩みたいに少しの言葉でも相手の言いたいことがわかっちゃうんだ。
ここ数日僕が悩んでいるのを見て、奈々ちゃんたちが一緒にって声を掛けてくれてたんだけど、先輩へのプレゼントはやっぱり自分で探したかったから“ごめんね”って断ったんだ。
「一人で、探したいから……」
二人はおもむろに顔を見合わせると、
「そうか。大切な人にあげるプレゼントなんだ」
静耶さんはそう言ってまたにっこりと笑ってくれた。
「静耶、さっきの……」
「あっ、そうだよねっ。あのね、僕達もお互いのプレゼント探しに来て、さっき素敵なお店を見つけたんだ。ほら、こういうの買ったんだよ」
そう言って、せっかくきれいにラッピングされていたものを開けて見せてくれた。
それはちょっとアンティークっぽい雰囲気に作られた腕時計で、二人ペアになっていた。
「ほんとは男女のペア・ウオッチなんだけどね」
でも男性用だろう大きなほうは少し厳つい感じで斗馬さんにはピッタリだけど、静耶さんの細い手首には女性用の繊細なデザインのほうが似合うと僕も思う。
「すごい、素敵です」
「でしょ? 行ってみるといいよ。場所はね……」
そのお店の名前と場所を教えてもらって、もう一度お礼を行って、僕は二人にさよならをした。
素敵な二人だったなぁ。ペア・ウオッチするくらいだから、先輩と僕みたいに男同士だけれど恋人なのかな。また、どこかで会えるといいなぁ。
斗馬さんと静耶さんに教えてもらった店は、にぎやかな表通りから一本入ったところにあって、看板とかも目立たない感じで知る人ぞ知るっていう雰囲気だった。
恐る恐るドアを開くと、チリンと可愛い音でドアベルが鳴る。
少し抑え気味の照明が灯った店内は、外国のアンティーク屋さんみたいな落ち着いた雰囲気で、狭くも無く広くも無く、ものを探すのにちょうどいい大きさ。店の奥のほうに一人、お客さんらしき人がいるぐらいで、その人も何か探しているような感じだ。
僕が見えている範囲には店員さんもいない。なんだか不思議なお店。
それでも置いてある品々はどれも上品だったり、ユーモアが感じられたり、独特のデザインだったり。眺めているだけでも楽しいものばかりだ。
時間を忘れてあれこれと手に取ったりしながら眺めていたら、シルバーのものばかりを集めている飾り棚に十字架をデザインしたすごく素敵なキーホルダーを見つけた。
「これだ!」って気がしてスイと手を伸ばしたら、横からも同じように白い指が伸びてきた。
「あ……」
思わず声が出て、指が伸びてきた方に顔を向けると、そこにはびっくりするぐらいきれいな子が、僕と同じように驚いた顔でこちらを見つめていた。
お互い相手に気づかず、そのキーホルダーへと視線が引きつけられるままに手を伸ばしていたらしい。
それにしても今日はきれいな人をたくさん見る日だなぁ。
「えーーーっと。これ、見たいの?」
鈴を転がすような声って、こういうのを言うのかな。
でも声を聞いて男の子なんだと気がついた。僕と同じ歳くらいかな。
「あ……。でも……」
見たいけれど、肝心のキーホルダーは彼の手の中だ。彼もこれを誰かへのプレゼントに考えているのだろう。
「いいよ。はい……」
彼は僕のほうにキーホルダーを差し出してくれる。
「でも……」
まだためらう僕に彼はニコッと笑うと、
「僕はね、あっちにあるブレスレットが第一候補なの。ほらっ、ちょっと見て見て」
彼が僕を引っ張って、別の棚へと連れて行く。
「ほらっ、これっ。ね、素敵でしょ。でもこれだと学校には着けて行けないし、キーホルダーなら毎日持ってくれるかな~とか思っただけなんだ。このブレス、ひと目見たときに“これだ~~っ”て思ったから、やっぱりこっちだと思うんだよねぇ」
矢継ぎ早に話しかけられて、僕は目が白黒してきちゃう。
指差されたブレスレットは大きな鎖のひとつひとつに彫り物がしてあるデザインのもので。
「あ、えっと、どっちも素敵……」
「だよねぇ♪ あ、僕、真昼っていうの。君は?」
「尊…です」
「尊は? このキーホルダーに決まり?」
「あ…、うん。真昼君さえよければ……。僕もこれ見たとき“これだ~”って思ったから……」
「そっか。じゃあ、やっぱり僕はブレスだな。そういう運命なんだ、きっと! ひょっとしてこれ、彼氏へのプレゼント?」
あまりにも屈託なく聞かれて、ついうなづいちゃった。
「あ、うん。……えっと。真昼君、も?」
「そうっ! 超カッコいいんだよぉ~~♪」
二人、思わず顔を見合わせて“えへへへ~~っ”って感じで笑い合っちゃった。
「よしっ、じゃあ買おうっ。すみませ~ん。決まりましたぁ」
真昼君が店の奥にあるドアに向かって呼びかけると、奥から山羊さんみたいなひげを生やしたおじいさんが出てきた。
お金を払ってきれいにクリスマスらしくラッピングしてもらって。
その間、こそこそっと真昼君から彼氏のカッコよさとかを教えてもらって、二人でクスクスと笑っていたら、ドアベルが軽やかに鳴る音が聞こえてきた。
「あ、いたっ。やっぱり、ここだった。真昼~~、急に居なくなるなよぉ」
ドアを開けて入ってきた人に目が点になる。達也先輩もカッコいいけど、この人もすごい。なんかモデルみたい。これが真昼君の彼なんだ、きっと。確かに自慢するだけはあるかも。
「……見つかっちゃった。でも、いいや。もうプレゼントは買えたし」
いたずらっ子みたいな笑顔で真昼君が言う。何を買うか内緒だったんだ。
その人はチラリと僕を見て、
「だれ? その女?」だって。
ま、また間違われた……。僕、男です。
「何言ってんの、光? 尊はれっきとした男の子ですっ。今、友達になったんだよ。尊も彼氏へのプレゼント探してたんだって」
それを聞いて光と呼ばれた人は、急に機嫌良さそうに笑った。
「なるほど。“尊も…”ってことは、真昼は俺へのプレゼントを探してくれてたわけだ」
可愛い顔をプーと膨らませて、ううってうなる真昼君を見て、僕は思わずクスクスと笑っちゃった。
「ふくれてないで帰るぞ。もう夕方だし。尊も彼氏が心配するぞ。送ってってやるから」
“いいです。一人で帰れます”って言ったんだけど、“真昼ほどじゃないけど、お前も相当カワイイから一人はダメ”って言って、結局、真昼君と二人して最寄りの駅まで送ってくれた。
僕なんか一人でも全然大丈夫なのに……。
そう言ったら、なぜか二人してため息つかれちゃった。
でもせっかく仲良くなれたので、遠慮しながらも送ってもらえて楽しかった。
今日はほんとに優しい人にたくさん会えた日だったなぁ。
これも神様からのクリスマス・プレゼントなのかな。
明日はクリスマス・パーティ。父さんと母さんは僕が水上家のパーティに誘われていると知って、さっさと二人だけのディナーを予約したらしい。
お泊りで先輩んちにお邪魔するのは初めてなので、ちょっと緊張しつつ、ものすごく楽しみだったりする僕だった。
12月24日
<SIDE MIKOTO>
クリスマス・イブ。加山さん達が「イブは恋人のための日なんだよ♪」って言ってたっけ。
僕は今まで家族や道彦としかクリスマスの日を過ごしたことがないから、今年は達也先輩っていう人がいて、一緒にイブを過ごせることにちょっと(実はかなり…)ドキドキしてたりする。
あ、道彦は彼女が出来たらしくて、今年は彼女と過ごすんだって。「尊はどうする?」って訊かれたから「僕も友達と……」って言ったら、「そうかぁ。クリスマスを一緒に遊べる友達が出来たかぁ」って喜んでくれた。
ほんとは恋人なんだけど、少し恥ずかしくて言えなかった。男同士ってこともあるし、道彦に言うのはもう少し勇気が出てからにしようと思ってる。
イブの夜は達也先輩のおうちでクリスマス・パーティをするんだって。その後は達也先輩のお部屋に泊めてもらう約束をしてる。
でも昨日一日、一緒に過ごせなかったから(僕の都合なんだけどね)今日はお昼過ぎからデートしようって。クリスマスの雰囲気に溢れた街を二人で少しブラブラすることにした。
僕の家に先輩が迎えに来てくれて、二人して街中に出る。
「せ、先輩?」
するりと繋がれた手に、うれしいけれどちょっと戸惑って先輩を見上げると、クスクスと笑う顔。
「大丈夫。尊、女の子に見えなくもないぞ。別にちゃんと男だってわかってもいいけど」
とても寒い日で達也先輩の掌のぬくもりで、気持ちまでポカポカしてくる。ついでにほっぺたもちょっと熱い。
そんな僕のほっぺたを繋いでいるのとは反対の手の指先でプニッとつまんで、「尊、赤くなってる。ほんとかわいいヤツ」とか言われてしまった。恥ずかしっ。
街の中心に立つ大きなツリーの前で、自然と足が止まる。
「……すご。きれぇ~」
「ほんとだな。夜にはイルミネーションも点いて、もっときれいなんだろうな。……夜、もっかい見に来るか?」
見に来たいなぁ。でも今夜は……。
「……でも」
「だよなぁ。おふくろ達がうるさいか」
うるさいっていうか、せっかくのクリスマス・パーティなのに、僕達だけが抜け出したりしたら、おじさんもおばさんもお兄さんもがっかりするんじゃないかな。
そんな僕の考えを読み取ったように、達也先輩が優しくふっと笑う。
「来年はきっと、二人で見に来ような」
「はいっ」
達也先輩の言う“来年”の言葉がうれしい。繋がれた手に少し力をこめると、先輩もまたキュッと強く握り返してくれた。
二人でなんとなく顔を見合わせあって笑っていたら、遠くから僕の名前を呼ぶ声が聞こえた。
「み~こ~とぉ~。メリー・クリスマスゥ~~」
この鈴を転がすような声は……。
「真昼君?」
通りの向こうからものすごく目立つ二人連れがこっちに向かって来る。
「今日も会えるなんて、うれしい♪」
キューッと僕に抱きついてきた真昼君を見て、達也先輩の目がまん丸に見開いてる。
後から追いついてきた光さんが慌てて僕達をひきはがし、それを見ていた先輩が僕を自分の背後に引っ張る。
「あ…、昨日はありがとうございました」
慌ててお礼を言う僕に、真昼君はニヤンと笑うと。
「この人が尊の彼? なるほどぉ~、カッコいいね」
それから昨日、お店で会ったことを話して改めて自己紹介なんかをしあって。僕と真昼君は携帯のメアドを交換した。
大きなツリーの前で4人で立ち話をしていると、なんだか周囲の視線が熱い。確かにね、達也先輩も光さんも超カッコいいし。それになぜか男の人たちの視線は真昼君に集中している。
話に夢中の真昼君の腕を引いて、さりげなく周囲の視線から自分が盾になるほうへ隠している光さんがおかしかった。と、同時に僕も先輩に腕を引かれて……。
あ、そうか。真昼君の位置が変わったから、話しやすいほうに僕を誘導してくれたんだ。先輩、やさしい……。
二人と別れて、それからも街を堪能した僕達は日も暮れかかる頃、達也先輩のおうちに戻った。
玄関でミコやブル達にひとしきり歓迎を受けてリビングに入ると、そこは今まで見ていた街に負けないほど華やかなクリスマスの飾りつけがされていて、広い部屋の一角には見事なツリーが立っていた。
「うわぁ、すごいきれい……」
部屋をぐるりと見渡してからツリーの側まで行く。こんな大きなツリーが家の中に飾られてるの初めて見た。
「兄貴が2、3日前から必死で飾りつけしてたぞ。尊に見せるんだって、張り切ってさぁ」
お兄さん、やさしい。ありがとうございます。
「おばさんにご挨拶……」
「ああ、キッチンだろ。“おばさん”って呼ぶとまた怒られるぞ」
先輩は苦笑混じりで言うと、行ってきなっとポンと軽く僕のお尻を叩いた。
そうなんだよね。この間、友達のお母さんとかを呼ぶのと同じ感覚で“おばさん、こんにちは”って挨拶したら「私のことは“ママ”って呼んでね」って言われちゃった。うちの母さんのことも生まれてこのかた“ママ”なんて呼んだこともないので、ちょっと恥ずかしいんだけどね。で、結局“ママさん”って呼んでる。
キッチンに行くとおばさん……、違った、ママさんが忙しそうにお手伝いさんと料理の準備をしていた。
「ママさん、今日はお招きありがとうございます」
「あら、尊ちゃん。いらっしゃい。そんな堅苦しい挨拶しないのよ。いずれうちの子になってもらうんだから」
たまに言われるんだけど、僕のこと養子かなんかにしてくれるってことなのかな? 冗談だとは思うんだけど。
「何かお手伝いしますか?」
「ありがとう。ほんとに尊ちゃんはいい子ねぇ。うちの息子達にも見習ってもらいたいもんだわ。でもこちらはいいから、ブル達と達也のお守り、お願いできる?」
達也先輩のことまで一緒くたにしてる言い方がちょっと面白くて笑いながら「はい」って返事したら、いつのまにか後ろにいた先輩に「こらっ」って頭を小突かれた。
それから僕がお守りしてって言うより、ブル達に遊んでもらっているうちにどんどん準備は進んで、おじさんとお兄さんの昂也さんも帰って来て、パーティの食事が始まった。
よそのおうちでの食事なんて、僕にとっては緊張のひと言なんだけど、夏以来、何度もお邪魔している先輩のおうちは、僕にとってもほんとにくつろげる場所で。
おじさんから「母さんを“ママさん”て呼ぶなら私のことも“パパさん”って呼んで欲しいなぁ」って言われたり、それを聞いた先輩や昂也さんが“パパさん”をからかうのに笑ったり、夏に別荘にお邪魔した先輩のおじいさんからの電話に出たりして、ほんとに楽しく過ごせた。
パパさん、ママさん、昂也さんからプレゼントをもらって、僕も用意していたプレゼントを渡して、いよいよ達也先輩にも渡そうと思ったらコソッと耳元で「後で部屋で交換しよう」って言われて、またドキドキしちゃった。
ようやく達也先輩の部屋に入ったのは、もう日付も変わろうかという頃だった。
二人してベッドに並んで座って、プレゼントを渡し合う。
気に入ってくれるかどうか、祈るような気持ちで包みを開く先輩の様子を見つめる。
「ああ、いいなぁ、これ……。渋くてカッコいい。どこで見つけたんだ? 今度、俺も連れて行ってくれな」
よかった。喜んでもらえたみたい。
「はい。……あの、これ、うれしい」
僕が先輩からもらったのは、先輩がいつもしているのと同じデザインのピアス。付いている青い石がダイヤモンドみたいな白い石に変わっているだけだ。……まさか本物のダイヤじゃないよね。(実は本物です。でも言うと気にするだろうからガラスだと思っとけ/笑。by達也)
「月曜日の帰りにお医者さん行って、ピアス穴空けてもらおう。……ああ、尊がイヤじゃなければ、だけど」
「空けたい…です。同じの、付けたい」
「……尊」
「あの、このキーホルダーもよければ使ってください。ずっと、達也…さんと一緒なのがいいと思って……」
恥ずかしい気持ちを押し殺して、“先輩”って呼ぶのを止めてみた。えっと、今だけ……だと思うけど……。
達也さんは僕をギュッと抱きしめて。それからゆっくりとキスをした。
いつものことだけれど、今夜もまたキスをしている間に、いつのまにか僕は何も身につけていない状態で、達也先輩の胸に抱きしめられてたくさんの口づけを受けていた。
素肌のあちこちをついばまれる唇のひとつひとつから、身体全部へと熱が伝わっていく。そうなるとだんだん僕の頭の中は、ふわふわとしたもやに包まれたようになって、ツンと恥ずかしく尖ってしまった胸の先や、ついと指先で撫ぜられただけでヒクンと反応してしまう僕自身への羞恥も、ただ気持ちよさだけに変わっていく。
始めは階下や近くの部屋に昂也さんがいることが気になっていたのだけれど、声を我慢すればするほど容赦がなくなっていく先輩の指や唇に、やがて溺れるように何も考えられなくなった。
<SIDE TATSUYA>
互いの身体にこもる熱を吐き出すと、ストンと尊は眠りの世界へと入って行った。
そろそろ2時か。もう家中が寝静まっているだろう。
俺はそっと尊を抱き上げると、静かにバスルームへと運びこもうと部屋を出た。
骨組み自体が華奢な細い身体。閉じられた瞳の幼い寝顔。
全身を洗ってやっても少しむずかるぐらいで、はっきりとは目を覚まさない。
この全てが自分のものであることの幸せを噛み締める。
昨日はどうしても俺へのプレゼントを買いたくて、俺にウソをついてまで一人で街に出たらしい。
一人にするのがどうにも心配で……。それでも俺へのプレゼントを“一人で探したかった”と言う言葉に喜びがこみあげる。
この聖夜に誓おう。これからもずっと二人でいることを。
尊が高校を卒業したら、尊のご両親にもちゃんと話して、俺達のことをわかってもらおう。
ずっと、二人で歩いていこうな。
素敵なクリスマスをお過ごし下さい。
メリークリスマスvv




