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理解
「どうだった?」
勇者は何を期待してなのか、全くわからないテンションで尋ねてきた。まるで楽しいことでもあったみたいに晴れやかな表情。
いや、勇者はいつもこの表情だった。
俺は何も答えずにそっとその場に胡座かいて座る。
勇者が何を聞きたいのか分からない。分からないのに答えるのは愚かだ。
「あの人族達に対して何て思った?」
勇者は俺の方に歩を進めながら、より詳細な質問を投げかける。
これなら、答えられる。
――剣の素人だった。
念話で伝える。
「それだけ?」
勇者は俺の眼の前でしゃがみこみ、俺の顔を覗き込む。覗き込んでも俺の顔は認識出来ないはずなんだが。その行為に俺は少しだけ顔を仰け反らせる。
――何故奴らは俺を目の敵にしたのか気になった。
「へー」
勇者は珍しそうに目を細めながら、薄い唇をへの字に曲げた。
そしてまたニコリと笑い、自分の膝で頬杖をつく。
「先代魔王の時代にさ、暗雲の範囲が広がっただろ」
ああ、そういうことか。
俺は納得した。
続きは12時から投稿します。




