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消失
この日、この魔族領というものができて数千年間、300代と続いてきた魔王という肩書きが消えた。
眼下の民衆は、人族も魔族もまるで勇者に操られる様にこぞって城を破壊する。
数々の歴代、先代の魔王達の肖像は壊され、燃やされこの大陸から消えた。
きっと数十年ここを治めた魔王ならば、哀しみの咆哮1つくらいあげたかもしれない。
でも俺は何もしなかった。いや、何も出来なかった。その様を見守り続ける事が、せめてもの償いと信じて見つめた。それでも石の様に硬くなった心が、冷たく冷えていくだけだった。
その事が逆に例えようもない寂寞感を抱かせる。俺がこの殺風景な城に愛着を持つには、まだ時間が必要だった。
長寿な魔王の中で、俺の任期は過去最短。
たったの半年だったから。




