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体育祭編3

第8話 種目スタート

鈴目線です。本編だよ。


「で、さっき蒼は何を言いかけてたん?わざわざ顔真っ赤にする演技までしてあげたんだしさ、教えてくれてもいいよね?」

こんにちは。鈴だよー。今ね、あのウザいツンデレキャラ作ってる生徒会長の挨拶などがあった開会式が終わって、白組の1年C組のテントにいるんだー。

え?なんかキャラ違うって?

あー言ってなかったけど、私ね普段は上の会話みたいにかなりサバサバした偉そうな口調で喋るの。

学校では何かと都合がいい猫被りをしてるのよ。

蒼の前だけはこの偉そうな口調でいるのよ。幼馴染みだし。杏里沙だと、裏人格がいて、この口調がむやみに使えないのよ。あのリリィってやつこうゆう猫被ってる子とか、ギャップのある子が大好きな百合っ子なのよ。百合っ子大っ嫌いだし、裏人格のときの杏里沙はまるで別人のようで同じ見た目でも目つきが女子に対して卑猥だしとかまあ、色々あって猫被りを普通のときから杏里沙の前ではしてる訳。少しだけだけどね。感づかれるのも嫌だし。

「別に。鈴にカンケーねーだろ。上から目線相変わらずだな。ムカつくよ、凄く。あ、杏里沙に対しては….幼馴染みとしか思ってない。」

考えを断ち切られ、少し赤い顔の蒼と今の言葉で大体察した。つまり、蒼は杏里沙が大好きだ!恋愛対象としてね。多分昔から杏里沙の話になると少しだけ顔が赤くなるのだ。まあ、昔からそうだったから感づいていたけどね。予想する限りは気になるやつぐらいだったのが、ここ最近のハプニングのせいで本気で惚れて、大好きになったんだろうけどさ…分かりやすすぎるわ。杏里沙が恋に鈍感でなかったらとっくのとうにバレてるわ。多分杏里沙も蒼のこと大好きだと思う。

だってさ、開始5分前になっても蒼が来ないもんだから、すごい深刻な表情して

「蒼のやつ、どこいったのよ。あんだけ守ってくれた癖にほっとくなんて酷いよ…私ってあいつの事……。」

なんてブツブツ呟いてたんだよ。あれはもうじき好きだって事自覚するわ。普通あんなに心配しないし。いくら心配性だったとしても、あれは度を超えてる。

はあ、結局こいつら両思いじゃねーかよ。

「はいはい。でもさーアタシ杏里沙の事は聞いてないんだけど、さっきって言っただけで。」

茶化すようにそう言ってみた。

すると、顔を真っ赤にして

「別にと、特別な意味は…な、いからな。て、てかお前はその…気になるやつとかいないのか?からかってばっかりだけどよ。」

はあ、その質問したら杏里沙が好きだって事認めてるようなもんだわ。まあ、付き合ってやるか。赤面した蒼、天使級に可愛いし。

「へー。まあ、いいや。気になるやつね…いるよ。」

ちらっと入場門に向かう2人の男子の方を見た。

1人は朱色の少し毛先を遊ばせた短髪、琥珀色の大きな瞳、少し焼けた肌、身長180cmと高身長な男子、奈々田 明瑠。ななだ あけると読む。男子人気ランキング15位だ。30位中の丁度真ん中だから、イケメンの平均があれだ。かなりレベルが高いというのが分かっただろうか?

もう1人は常にポーカーフェイス、短髪の黒髪、青藤色のキリリとした切れ長の瞳、白い肌、薄い唇、身長183cmと高身長、漂う不思議な雰囲気と只ならぬ色気がある男子、春賀 龍。はるが りゅうと読む。男子人気ランキング5位だ。トップ5はランキングの中でもかなりレベルが高いイケメンだ。

「え、どっちだ?鈴が気になるやつっていうのは。」

少しオドオドしつつも、かなり興味津々といった感じの反応みたいだ。

「龍。春賀 龍の方よ。なんか気になるのよ…なんかっていうのは分かんないけど。それが恋愛感情だって事はわかるんだけどね…具体的なものが無いんだよね。」

あえて、本当の事を話したがこれで良かったのだろうか?

「ま、マジで!り、龍なのか⁉︎これは…かなり面倒な事になった。」

声を潜めてそう返してきた。ん?面倒なこと?

「面倒なことって何?龍に何か問題でも?」

つい、きつく聞いてしまった。でも、かなり気になる。その面倒なことというのが。

「…鈴。覚悟して聞いてくれ。」

急に真剣な眼差しでこちらを見つめてくるもんだから、思わずうなずいてしまう。覚悟してないのに。

「あのな…さっきツンデレ生徒会長の挨拶あっただろ?そん時に、ほとんどの人が生徒会長の方を見てたのに、3人の男子が杏里沙の事を見ていたんだ。俺を入れたら、4人だがな。その内の1人が龍だったんだよ。あの中で杏里沙を見るなんて確実に恋愛対象と思って無い限りありえねーぞ。だからよ…どんなに鈴が好きになろうとも、永遠に龍には届かないんだよ。諦めた方が身のためだ。」

顔が青ざめていくのが分かった。目の前がぼやけてきて、熱いものが頬を伝ってくる。とめどなく流れるものを拭く気にもなれず、1人頭の中で考えていた。

は?あたしがどんなに好きになろうとも、龍は振り向かない?なんで、このあたしが…女子人気ランキング1位の加賀美 鈴が4位の杏里沙に恋愛で負けなきゃいけないの?あんな美男子系女子のどこをどう見れば、好きになるの?なんで、なんでなの?杏里沙も杏里沙だわ。4人の男子に好かれてて気づかないなんて鈍感すぎるわよ。何がブスよ。ブスなやつが4人の男子に好かれる訳ないじゃない!本当呆れるわ。無自覚で何の努力もしないでモテるなんて。いっその事、龍に私を好きにならせる!ならしてみせるわ。そしたら、杏里沙に好意を抱く男子も皆んなこちらに向くわ。これで私がずっと学校1の美少女でいられる。そうなれば、杏里沙なんて怖くなんてないんだから。

「…な、何が、あ、きらめろ、よ。ぜ、ったいに、龍をふり、むかせてや、るんだから。あ、杏里沙なんかにま、けるなんて、あ、りえないん、だから。」

震える声で言い放った言葉に力はなく、余りの自分の無力さに余計落ち込んで…こんなに自分が弱かったなんて思ってなかったよ…。

「…泣くなよ。俺だって不安になったり、悔しくなったりするんだぜ。情けねーよな。男なのにメソメソ泣いたりするなんてよ。でもよ、それが励みにだってなるんだ。俺が今戦ってるのは3人。恋のバトルのジャッジを下すのは結局は本人だからよ、まだ希望はあるんだよ。最後まで諦めないでいれば、いつかきっと報われる日が来るはずだからよ。」

なんて言ってざらでもないのに励ましてきちゃってさ。なんで優しくするの?私なんかに。杏里沙にすればいいじゃないの…。無駄な優しさは人を傷つける事を蒼は知らないみたいだ。もっと苦しくなったのに。

「な、泣いてないわよ。ただ太陽が眩しかっただけ。励ますなんて、ざらでもないのにするなんて、変ね。別に龍1人ぐらいあたしにかかれば、チョチョイのチョイよ。杏里沙なんて全然怖くないんだから。」

そう言って強がってみたものの、何か自分に足りないものがある気がして、余計虚しくなるだけだった。

すると、頬に柔らかい感触がして目を開けると、そこには蒼のタオルがあった。

「はいよ。これで顔でも拭けよ。これ以上見てたらこっちが泣きたくなるから。」

蒼は一言そう言ったきり、黙ってた。

受け取ると柔らかい淡い青色が目に入った。龍の瞳の色と似ていて、また溢れてきた涙を隠すようにタオルに顔を埋めた。


しばらくして涙は止まった。

第1種目の男子選手リレーが丁度始まるところだった。うちのクラスからは明瑠と龍が出る。あたしは今タオル片手に見ている。蒼がしばらく持ってていいと言ってくれたから、ご厚意に甘えて、持ってるのだ。

白組の第一走者は隣のクラスの真田 剛と同じく隣のクラスの谷中 正樹だ。

位置について、よーい、パーン!

ピストルの音とともにスタートした選手たち。

真田が2位、谷中が3位の状態のまま、うちのクラスの明瑠に真田が、龍に谷中がバトンを渡した。

他の組は赤組が1位と5位、青組が4位と6位になっている。

ここで龍が赤組1位の選手と明瑠を抜き、差を広げ、すかさず、明瑠が赤組1位の選手を抜き、1、2位を白組が独占し、この順位のまま、アンカーの高3の先輩がたは1、2フィニッシュした。

少しして、退場曲が流れ、選手たちは退場していった。

「龍さん、明瑠ちゃんご帰還だぜ!」

お調子者が声を張り上げ、みんなして拍手を2人に浴びせた。

「龍、お疲れー。いやー凄かったねー2人抜きと歓声。龍が走り出した瞬間から歓声がうるさくて仕方なかったぜー。」

「明瑠ちゃんお疲れー。平均イケメンが奮闘とか、ちょっとかっこ良かったよ!」

などなど、拍手の後の称賛の声に龍は相変わらずのポーカーフェイス、汗もほとんどかいてない。明瑠は終始顔を赤らめて、照れ臭そうに笑ってた。汗だってかいてる。

お疲れ様。カッコ良かったよ。

そう心の中で呟く。

『ありがと。でもね、残念ながら君を好きにはならない。それを頭に入れておいてくれ。』

そんな声が響いてきた。後ろを振り返ると、少しだけ口角を上げ、こちらを見る龍がいた。

いつの間にか、違う競技の招集がかかっていた。

女子選手リレーだ。ってあたしが出る奴じゃん!

大急ぎで、入場門に向かった。


「とは言ったものの、あの子はモテ王子の方が好きみたいだしね。無理だったら、あの子でもいいかもな。女子人気ランキング1位の加賀美 鈴…なかなか面白い。まあ、本命は4位の涼川 杏里沙だからね。精々楽しませてくれよ、鈴猫。猫被りの美少女にはお似合いだな。」

と龍が呟いていたのを知る由もない鈴だった。




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