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2日後

第6章 体育祭準備

あの事故キス事件から2日後、7月17日にある体育祭のための練習が始まった。

えっと、クラス内で私と蒼の関係を疑われてます。まあ、あの事故キスと普段から鈴と蒼以外と全く喋ってなかったため、私が百合っ子じゃない限り、蒼と付き合ってる可能性しかないとなってるみたいだから仕方ないけど。

蒼のことは何というか特別なんだよね。蒼といる時は不思議と裏人格のリリィが出てこないから、虐めたくならないけど、恋愛感情が裏人格が居るせいで麻痺しているため、好きかどうかが分かんない。

蒼がどう思ってるかは分からない。

今は2時間目の体育だ。体育祭の競技、ダブルダッチダッシュの練習をしている。

これはダブルダッチを1分間引っかからず跳び続け、跳んだ後に、20メートル先のゴール目指して走るという内容の競技だ。

今練習してるのはダブルダッチだ。ちなみに私は縄跳びが大の苦手だ。そのため、さっきから引っかかってばっかり。

眩しすぎるぐらいの日差しと時々吹く涼しい風。夏の気配がする。

もう何回引っかかったか分からないほど、引っかかっていると、後ろから

「ぷっ、お前マジで何回引っかかってるんだよ。本当昔から縄跳びだけは出来なかったよなー。他は何でも出来るのによ。」

笑い声まじりに話しかけてきた。

「うるさい!蒼のバカ!仕方ないじゃんか、苦手なんだもん…。」

段々言い返せなくなって、声が小さくなっていくのが分かった。声が震える。あぁ、強くなったはずなのにね、まだ弱いや。これぐらいで泣くとか。

「おいおい、泣くことでもないだろう?苦手なら得意にすればいいだけだ。」

そう返してきた。

「じゃ、じゃあどうすればいいのよ…。あんたに何ができるのよ、何が分かるのよ。縄跳びが出来ないだけで仲間外れにされたことないくせに。」

反論になってないのは分かってた。でも、他に返せる言葉なんてないし…

「教えるんだよ。俺が1から10まで全部な。」

思わず、目を丸くしてしまった。

「は?今こいつなんて言った?教える?笑わせんじゃねーよ。お前に全部教えること出来るのかよ。説明下手なくせに。」

思った事をつい全部言ってしまった。

「へぇ、よくそんな口がきけたもんだ。本番まであと1ヶ月しかないのによ。そんなんで出てみろ。みんなから笑い者にされるぞ。それでも良いなら、俺はもう戻るけど。水分補給に来ただけだし。じゃあな、せいぜい頑張れよ。」

く、悔しい。私の突かれたら痛いとこ全部突いてきた。グサッてくるし。でも、事実だし…

「待ってよ。」

そういって、蒼の体操服の袖をちょっとだけ引っ張った。顔が熱くなっていくのが分かる。

「何、早くしてくんない?待つの嫌いなんだけど。」

ムカつくけど、言わなきゃ多分恥かくのは私だし。

「あ、あんたはいつもストレートに物事が言えないし、なんか言い方ムカつくけど…けど、あんたが昔から何やっても完璧なの分かってる。私はそれが羨ましかった。だから、あんたにそうやって優しくされるとムカつくの。でも、今はあんたの優しさに免じて許すわ。だから、その…縄跳び教えてよ。」

顔を真っ赤にしてそう言った。目なんて合わせらんないけど…頑張ってお願いしてみた。

「……べ、別に、良いぜ。じゃあ、早速だが縄跳び持て。個人練習用のヤツ。」

「これ?」

指差したのは赤の1人用縄跳び。

「そう、それ。で、まずは…」


こんな感じで始まった縄跳び練習。

放課後も毎日毎日やり続けた。体育祭に向けての練習のため、部活が休みになると、練習はもっと厳しくなっていった。

2週間後には、二重とびまで出来るようになっていた。明日からはダブルダッチの練習を始める。

他の競技は時々練習するぐらいで十分だった。縄跳び以外は何でも出来るからだ。自分で言うのもなんだがな。

明日のダブルダッチの練習のために、早く帰って寝ようと、帰り支度をしていると

「こんにちは。あの1年C組の涼川 杏里沙さんですよね?僕は緑野と言います。同じ1年生なんですよ。で、今日は杏里沙さんにお話があってここに来ました。少しお時間いいですか?ここじゃ、あれなんで場所変えましょうか。」

身長は私より高く、167cmぐらい。少し茶髪気味の髪に、朱色の瞳が印象的なヤンチャな少年といった感じの見た目だ。

「短くしていただけるならいいですけど。」

「はい、すぐ終わるんで。」

そう言って連れて来たのは校舎裏。

「あ、あの。良かったら僕と付き合ってくれませんか?あなたのことが好きで好きでたまらないんです。」

そう言って来た。

「はぁ?何言ってんの、いきなり。キモイんですけど。あ、答えなら、ゴメンなさいだから。ふられてますけど。早く消えてくんない?マジ目障り。僕に一緒近づくな。」

そう言って、私は帰ろうとした。

「は?お前に断る権利ないし。」

そう言って校舎内の空き教室に連れて行かれた。

多分連れて来たのはそうゆうことをするためだろう。

「たく、痛い目にあわないと分からないのか。」

そう言って、取り出したのは縄。

手足を縛った。あの事件と同じだ。だ、ダメだ。これ以上は。リリィが私を乗っ取ってしまう。

すると、男は耳を舐めてきた。

「ひゃう…や、やめろ。お前これ以上やったら死ぬぞ。」

耳、首筋、脇腹は弱い。そのため、抵抗ができない。

「お、中々可愛い反応してくれるね。」

そう言って来たと思えば、首筋を舐めてくる。脇腹もくすぐってくる。もう限界だ…そう思い、不意に

「そ…う、た、すけて…。」

と呟いていた。すると

「夏山 蒼のことか?あいつは来ねーよ。仲間によって取り押さえられてるからな。」

そう言って笑った…はずだった。

「あぁ?誰が取り押さえられてるだって?ここにいるだろうが、バーカ。杏里沙のこと見捨てるわけないだろ。」

空き教室の扉を開け放ち、入って来たのは、蒼だった。

「あいつらは、どうした?」

「…ん?雑魚なら廊下で伸びてるよ。てか、俺の杏里沙に気安く触れてんじゃねーよ。」

そう言って、緑野の腹に一発ぶち込んだ。

緑野は気絶したみたいだ。一安心してると

「杏里沙、大丈夫か?顔を赤いぞ。まあ、とりあえず立てるか?ここから出るぞ。」

そう言って手を差し出した蒼。

「うん。」

手を取ったものの、ふらついて蒼まで転げる羽目に。驚いて目を閉じると

「いっ、てー。大丈夫か、あ、りさ…?」

と言った。何か起きたみたいだ。恐る恐る目を開けるとそこには、床ドンと言うものができていた。

蒼が上で、私を押し倒す体制になっていた。

蒼がすぐ飛びのいてくれたからいいけど、距離が近過ぎてキスしそうだった。

「わ、悪い。せ、背中乗れ。」

顔を真っ赤にして、しゃがみこんだ。

すぐに乗って、おぶられた状態でその場を後にした。


まあ、その後緑野たちは退学処分。私と蒼は少しの間だけの事情聴取。それだけで家に帰れた。


涼しい風が頬をかすめ、顔の火照りを消し去っていく。明日に期待と不安を抱き、私は家に帰って行くのだった。


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