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なんだこの可愛い生き物。【エイル視点】



僕の名前はエイル。


この聖域で炎の守護精様であるイフ・サラマンダー様の補佐官をすることになって早16年経つ。





ここに来た時の僕は24だったけど普通に数えるともう40になるはずの僕の見た目は来た頃と変わらない。


そう気づいたのは5年ほど経った頃だったか。




聖域に『選ばれた』時点でもう二度と生まれ故郷である場所へは帰れないことは分かっていた。




ここはいくつも存在する宇宙を管理する神のような存在、守護精様たちが暮らされる場所なのだから・・・。



流れる時間も自分の寿命もすべてが違う故郷と聖域だから、この役目を終えた頃にはきっと、戻っても知っている友も肉親も存在しなくなっていることでしょう。



この聖域という場所は『元人間』だった存在の時間を止めてしまうようで、イフ様はもう70年近く炎の守護精様でおられるようだ。



そして目の前にいるリーフ様は王立研究院の隊長をされていて、彼もまた67年という時を聖域で過ごしておられる。



時々リーフ様の口からイフ様の呼び名が『隊長』と呼ばれるのは、イフ様とリーフ様は同じ宇宙の同じ星で『軍』というところに所属しておられた先輩後輩の間柄だからだそうだ。



イフ様が炎の守護精様としてこの神域に『選ばれた』後、王立研究院で管理者としての適任者を探しておられた時、『軍』の研究所で解析など優秀であったリーフ様をイフ様が『捨てる覚悟があるなら共に来い』と選ばせたらしい。




「どうして獣など拾ってこられたのですか!どれだけ小さくても危険かもしれませんのに・・・。」



突然呼び出されたリーフ様はとてもご立腹で、数刻前にイフ様が聖域の森を散策された時に拾ってこられた小さな生き物のことで押し問答状態。



さっき僕がボロぞうきんのような獣を目を覚まさないうちにとシャンプーした所だったけど、汚れを洗い落としていくうちに現れた真っ白に輝く毛皮は美しかった。



小さくても凶暴な獣はいくらでもいるから、僕がこの珍しく警戒心の欠片も表さないイフ様をお守りしなくては・・・。



皮肉も込めてリーフ様と同じように『隊長』呼ばわりをしてしまった時には恐ろしく眉間の皺が刻まれてしまったけど・・・。



考えを巡らせていたら扉の向こうから可愛らしい鳴き声が聞こえた。



カチャ・・・。



イフ様もそれに気づいたようでそのまま扉の前まで移動すると、扉を開こうとした。



リーフ様と僕はその後ろで腰に下げていた剣を鞘から抜くと身構える。




ゴチン・・・っ。




「っっ!?」




イフ様が息を飲んだのが分かって扉の向こうへ視線を走らせた僕は、小さく真っ白な獣が仰向けで転がっていて驚いたけど・・・扉にぶつけたんだと思うと笑いそうになってしまった。




その後イフ様に咎められて剣を収めた僕とリーフ様をキョロキョロと見ているチェリーピンクのキラキラと輝く瞳にノックアウトされたのはきっと僕だけじゃないはずだ・・・。




・・・なんだこの可愛い生き物っ!!







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