わかるの?
どうして数字じゃないのかなって考えていたらエイルさんが呆れたように見ていることに気づいた。
「イフ様。その子は言葉は理解できるようですが、時間を教える必要はないのでは・・・。」
そうかもなの。
私が時間読めたって1匹で行動することなんてあるのかな?
ましてや待ち合わせなんてしないと思うの。
「・・・念のためだ。」
納得したらしいイフさんだったけど、窘められたことには納得したくなかったみたい。
そうこうするうちに・・・。
きゅぅ・・・・。
「・・・・。」
「・・・・ぷっ。」
私のおなかの小さな虫が空腹を訴えた。
だってだって昨日からなんにも食べてなかったんだもん。
そう思うけど和んだようなイフさんの細められた目と、ぷっと思わずといった感じで笑ったエイルさんを横目に恥ずかしくなった。
「みぁーっ。」
おなかへったにょっ。
そう言いながらイフさんの近い顔におでこをごちんとぶつけてスリスリするとイフさんはふあふあの私のおでこに擦り寄ってからエイルさんに向き直った。
「エイル。ユキの食べるものはなんだろうか?」
「そうですねぇ・・・って・・・。ユキ?もう名前つけたんですか?」
驚いたような顔をしたエイルさんは私をまじまじと観察する。
「ああ。ユキだ。ユキ自身が気に入った名だからな。」
「へぇ。この子、いや、ユキちゃんが決めたんですね。よろしくね?ユキちゃん。」
「みぁー。」
きゅるるるぅ~・・・。
「「「・・・・・。」」」
よろしくねーって鳴いた瞬間にまたおなかの虫が主張してきた。
エイルさんは肩を震わせながら、笑いを耐えた顔をしている。
「ユ、ユキちゃんの、ご、ごはんでしたね・・・。ええと、コホン。やはり獣なわけですから肉・・・というのが妥当じゃないでしょうか?」
「肉・・・。」
「ああ、でも凶暴でない感じもしますから、野菜とかフルーツかもしれませんね。」
「草食・・・。」
うんうん悩んでる2人は一向にその場を動こうとしない。
きゅるりぃ~~・・・。
ぅーっっ。もう限界なのぉ~・・・・。
「みぁーっ。みぃっ。んみぃ!」
3回目のおなかの虫が鳴いた時には思わず鳴いてしまったけど、ハッとした2人は私自身が答えられるんだから聞けばいいということにやっと思い当たってくれたらしい。
「肉は好きか?」
「にゃあ。・・・にゃぁっ。」
「うーん??あまり好きではないみたいですねぇ・・・。」
お肉。食べれるけど、あんまり得意ではないなぁ。
「では野菜は?」
「にゃあ・・・・みぁ。」
「微妙な返事ですね・・・。食べれなくはないけど美味しくないといった
ところでしょうか?」
「みぁっ。」
「ああ・・・。そうみたいだな。」
すごーい。なんだか会話になってるのーっ。
エイルさんが結構鋭いところついてくるね♪
「ではフルーツは・・・どうだ?」
「・・・・みぁ?」
「・・・?なんだかユキちゃんって分かりやすいですね。疑問系の鳴き声の動物私は初めて見ましたよ。食べたことないから分からないってとこですか?」
「みゃあっ。」
エイルさん。さすがイフさんをサポートしてるだけあるねっ。
すごい観察能力だぁ。
「あとは、なんだ・・・。ああ。魚とかはどうだ?」
「みぃ♪」
ぴんぽんぴんぽーーーーーーーん♪
それなのー♪
イフさんの腕の中でまたもやおでこをごっちんスリスリする私にエイルさんとイフさんは目を合わせて『これは・・・当たりか』とほっとしていた。
「皆集まっている時間だろう。行くか・・・。」
「あ。はい。謁見前ですがユキちゃんの落ち着いていられる時に顔合わせするのもいいかもしれませんね。」
「みぁ?」
みんなってだぁれ?
そう思ったけどおなかが減りすぎて頭の中が既にごはん一色の私は道中のエイルさんとイフさんのお話をしっかり聞いておけばよかった後から後悔した。
***
食堂というには華やかすぎる広間にくるといい匂いがしていて、広間の真ん中には大きくて長いテーブルがどどーんと置いてあって、そこには向かい合わせるようにずらっと椅子が置いてあった。
既に先客がいて、エイルさんと同じような格好をした男の人が3人と、イフさんのように長いマントをつけている男の人が3人座っている。
リーフさんの姿は見当たらないけど『王立研究院』という場所は別の建物だと想像できるからそっちで食べてるのかもしれない。
「イフ。遅いよーっ。エイルも早く座りなよー。」
「・・・行儀が悪い。ジン様。お座りください。」
立ち上がってイフさんたちに持ったままのフォークをブンブンと振っていた金色の髪の碧の瞳の男の子は、隣にいた男の人に怒られて頬を膨らませながら座りなおした。
ひとつ溜息を漏らしたイフさんは静かにテーブルに向かうとエイルさんと並んで椅子に腰かける。
くるるるるぅ・・・。
「「「・・・・・・。」」」
そこにいた全員が無言になったけど、ジンと呼ばれた男の子はくりくりの碧色の目を面白そうに細めてコロコロと笑い出した。
「あははははっ。イフ!!イフのおなかの虫の音っ。初めて聞いたよっ。ぷはっ。」
「・・・確かに・・・。そんなにおなかが減っていたのですか?」
イフさんの隣りにいた水色のロング髪の青みの強い瞳の色の優しげな雰囲気の男の人は心配そうにイフさんへと視線を移した。
イフさんはいつもより低い声で心外だというように唸った。
「俺じゃない。・・・ユキ。腹が減っているんだろう?出て来い。」
イフさんの声に反応した私は視線を集めているのにも気づかずに真っ赤なイフさんのマントコートからひょっこり顔を出してみた。
「みぁーっ。」
おなかへったにょっっ!!