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とばされたりゆう。





シトシト・・・。






暗闇の中、静かな水音。


雨でも降ってるのかな。


雨はきらいだよ。


おひげが元気なくなっちゃうもの。






草のにおいがする。


身体もつめたい。


びしょぬれになった毛はぴったりと身体に張り付いていて気持ち悪い。


雨宿りしたいのに目が開かなくて、このまま死んでしまうのかなと思ったけど・・・。


ご主人様のところにいけるのかもしれないと思ったら、ああ、それでもいいかって思った。






そんな時・・・。






カサ・・・。






濡れた草を踏みしめる音が聞こえて、すぐ後に人の声が聞こえた。






「・・・?なんだ?ぞうきん?」






失礼な言葉に思わずパチっと目をあけてしまった。


そこに立っていたのは、とてつもなく大きい人間。


え?人間だよね・・・?


大きすぎない・・・?






「今、動いたか?」






その人間の男は確認するかのように私を指先で摘みあげて持ち上げると、目の高さまで持ち上げたものだから、一気に視界が上がる恐怖というものを味わっちゃったよ。






「みぁ・・・。」


「っっ!?」






驚いたみたいに身体を硬直させた男は、次に私と目を合わせた時には大きく目を見開いていた・・・んだけど・・・。






怖いっっ。


何この人間凶器のような顔はっ!?


整っている顔はしているのに、人相悪すぎる・・・・っ。






濡れぞうきんのようにびっしょりで泥まみれの私と、その私を摘み上げて固まっている顔面凶器の男。


ぅ・・・レーザービーム発射何秒前ですか?






何もされる様子がないと気を抜いた瞬間、私は意識を手放していた。






***






んぅー・・・。


あったかぁい。






次に意識を取り戻した時には、ぽかぽかぬくぬくの毛布の中だった。


くぁ・・・と欠伸をして、きょろきょろ周りを見渡していたら、数人の人間の話し声が聞こえた。


多分あの大きな扉の向こう側から。


毛布の中から四苦八苦しながらもなんとか抜け出すと、扉までゆっくりと近づいてみた。


ゆっくりと扉に耳を近づけると、あの男の人と知らない人の声が聞こえる。






「・・・ですが。あのような生き物初めて見ました。傍に置くのは危険です。それに、どんなに凶暴かもまだ分からないでしょう。」


「言いたいことはそれだけか?」


「隊長っっ!」






・・・・。


えっと・・・。






私のような生き物を見たことがないって、それってここは日本じゃないってこと?


少し混乱したけど心当たりはあるんだ。


あの黒い空間に飛び込んだとき、私は死ねると思って飛び込んだ。


だけど、もしかしたらあの空間は別の世界と繋がっていた・・・そう思えば納得できちゃうもの。






猫がいない世界・・・?


それって、私がどれだけ見た目が変わらなくても、そういう生き物だと判断してもらえる世界ということでもあるのかな?


もしも、それが本当なら・・・。






私、神様に助けられちゃったことになる・・・。


あんなに恨んでしまったのに。


あんなに苦しいって言ったのに。






神様。私をこの世界に飛ばした理由はなんですか?







幸せになれるかもしれないという気持ちと、ご主人様を助けられなかった私が幸せを望んでいいのかという葛藤に立ち尽くしている間にも、人間たちの会話は続いていた。




「あんな小さな生き物が危険なわけないだろう。それとも、あんな小さな生き物が凶暴だったとしてお前は俺が無事では済まないと思うほど弱いと?見くびられたものだな。」



「い、いえ。そういうわけでは・・・。」



「まあいいではないですか。隊長のところにいれば獰猛な獣だとしても小動物のようになってしまいますよ。」





3人目の人物がいたことに気づいた私は、この扉のむこうには3人の男がいることを知ったけど・・・。



凶暴とか獰猛(どうもう)とか・・・。



こんな小さな爪と牙でどうにかなるなんて、初めから考えてないんだけどなぁ。



どうなるにしても、安心安全な生き物だって気づいてもらわないと、右も左も分からない場所に放り出されちゃう。




無条件で子猫だって認識されて可愛がられていたあの世界ではないから、とにかくなんとか分かってもらえるように頑張る・・・っ。




今後のことを考えるのは安全にいろいろ考えられる状況になってからにしよう。うんうん。




じゃあ・・・とにかくこの扉開けてもらわなきゃ。





「みぃっ。みぁっ。みゃぁっ。」




扉の手前で必死に大きな声で『あけてぇー』って訴えると、扉の向こうの会話はピタリと止まった。




あ。気づいてくれたのかな?




コツコツと近づいてくる足音に緊張しながら待ってると・・・。





ガチャ。




・・・・ガンっ!!




「みぁっっ!」



「っっ!?」





手前に開く扉だとは思っていなかったから、まともに真正面から扉とこんにちはしてしまって、私はゴロンと後ろへ転がった。




い・・・いたいよぉ・・・。





結果、へちゃりと仰向けに転がっている私と、その様子に驚いてまたもや固まってこっちを見下ろしている怖い顔の男。




そして同じく驚いたようにこちらを見ている2人の男が立っていた。




その手には・・・刀っ!?


ううん、違う。あれは、剣・・・?




切られたり傷つけられたことはたくさんあるの。


私の傷はすぐ治ってしまうけど、でも、痛みがないわけじゃない。




思わずふるふる震えてしまった体を初めにあった男の人が抱き上げてくれた。



それでも震えの止まらない私の視線を追った男の人は、視線の先に剣が握られているのを見て、スッと目を細めた。




「エイル。リーフ。剣をしまえ。怯えている。」


「は、はい・・・っ。」


「しかし・・・。」




1人は慌てて剣を下げてくれたけど、もう1人の銀色の長髪の男はまだこちらに剣を向けている。




「リーフ。聞こえなかったか?もう一度しか言わない。剣をしまえ。」


「はい・・・。」




渋々剣を降ろした様子に体の力が一気に抜けた・・・。




けど、頑張って自分の居場所は確保しなきゃっ。


頑張れ私・・・!







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