プロローグ
―緑。そう、深緑。木々の隙間から漏れる光は焼けつくように熱く、それでいて心地よい。
2年。そう、たったの2年。世界が滅びてから、まだそれだけしか経ってない。
幸運なことに自分とこの森は生き永らえた様だが、木々の回りに広がる草花―言うなれば、緑色の結界は日に日にその円を狭めていた。
森にも限界はある。
海から水が流れ込む様に川を引いておいた。念の為、塩分をこしとる様濾過装置(といっても、ただの砂利に過ぎないが)を置いてある。
効果はあったようで、一時は消滅を食い止めたが、日差しに弱い植物は枯れてしまった。種子を残して置けば、日差しに強い植物をカバーにして育てることが出来たが、生憎、気付くのが遅かった。
そういえば、海。
これだけの光が降り注ぎ、大地を焼き、ほぼ全ての水を蒸発させたというのに、海だけは悠然とそこに身を置く。
海水は加工すれば飲める上、生きていく上に大切なミネラルや塩も得られる。
原料は無限だ。
魚もいる。
しかし海辺で生活する人は少なかった。
生存者が少ないとか、その様な物理的な問題でなく、割合の問題で。
世界が滅びて、日光は勢いを増した。下手をすると大地から陽炎が昇る程。酷いときは黒い布を置いて置けば、ものの数秒で自然発火して消滅した。
当然、当たっていれば暑いし、病気にもなるだろう。
その日差しを避けるものが、海辺には無かった。
大陸に住む人は唯一世界に残る土と海水を使い日干し煉瓦などで家屋を作り、その日差しを防いだ。
しかし、海辺に土はない。そこにあるのは砂のみ。砂で屋根は作れない。
作ろうとして、生き埋めになったものもいるだろう、川を引きに来た際あちこちから埋もれた死体の一部がはみ出していた(その大半は、焼け焦げていたが)。
だから、海辺に生きるものは少ない。
だからといって、大陸の中心に立てば水不足と飢饉のみが待ち受ける。屍肉を食わねばならぬほどに食料もない。
生き地獄。自ら生を立つ人々は、そういって小刀をその腸に突き立てた。
この森に流れ着いたものも同じことをしたのだろう、初めここに流れ着き、気が付いた時は死体が散乱していた。
今は森の中心に姿を据える大木(生命線と思えてならない)の根本に土葬してある。
楽園で甘い汁を啜る人々は、その汁の一部この森にたらし、少しでも支えてくれている。
だが、俺は諦めない。死んだ友のため、その意志を継ぐため、俺は、俺は生存して見せる。
そして、世界を再生する。
様々な思案を巡らせながら、片腕赤毛の青年、レオーネ・ライランドの意識は覚醒した。




