第一話「逝って来ます!」
(`・ω・)短めですが、とりあえずの一話目でござるの巻。
「では、宜しいですか?」
「……お願いします」
「分かりました。では…」
ベッドに横たわる男の頭や身体のいたる所にはコードが繋がれ、そのコード類は機械へと繋がれていて、白衣を着た男性医師がその機械を操作する。
その機械の計器類には様々なデーターが表示されており、心音や心拍数の数値が徐々に落ちていくのが見て取れ、男に残された命があと僅かである事が分かる。
「ソウルデーター確認、デジタルパターン形成、アストラルデーターへと変換……、変換確認」
22世紀初頭、この時代では人類は既に人の魂をデジタルデーターへと変換する技術を手に入れていた。
そして、数多くのデジタルワールドが創られていて、既に数千万単位の人々が其処で過ごしている。
しかし、一旦魂をデータ化してしまうと元に戻す術は無かった。
故に、その使用には厳しく制限が掛けられており軽々と使う事は出来なかった。
では、どの様な時に使うのか?
それはこの男の様に余命幾ばくも無い者が死の苦しみから解放される為など、そういう時のみと決められていた。
例外として凶悪犯罪者などを収容する為の「電子牢獄」などがある。
「では、良き第二の人生を。アストラルデーター、インストール開始」
そして医師は機械に取り付けられていたカバーを取り外し、その中のスイッチを押す。
医師がスイッチを入れると同時に男の身体に繋がれているコードに光が流れ、デジタルワールドを形成しているサーバーへと彼のアストラルデーターはインストールされて行く。
「長きに渡る人生、お疲れ様でした。お休みなさい、そして逝ってらっしゃいませ」
コードを流れる光は消え、脳波や心拍数を表す波は《ピーー》という音と共に一本の線に変わる。
見守っていた家族は嗚咽を漏らしながら鼓動を止めたその身体にしがみ付く。
家族達の救いはその死に顔に苦痛は見られず、僅かな笑みさえ見て取れた事であろう。
享年108歳、家族に看取られての大往生。
彼にとってはこれ以上は望むべくも無い最高の最後であっただろう。
☆
「さてと、此処で最後のデーターを構築するわけじゃな」
彼が辿り着いたのは辺り一面に緑色の数字が濫立する空間。
その数字は0から9までを無秩序に入れ替えて行く。
男が両手を前に出すと其処にキーボードとモニターが現れ、彼は其処に様々なデーターを打ち込んで行く。
此処ではデジタルワールドでの自らの身体、《アバター》を自分で創る事が出来る。
容姿、年齢などは自由に変更できるが流石に性別を変える事は出来ない。
「見た目はこう、髪型が…これっと、服装はこれがお似合いじゃな、それからあーなって、こーなって、最後にこう。名前は『ジルフォナ・アルフ』っと」
《アバター形成しました。最終確認、アバターデーターはこれで宜しいですか?》
Yes/No
最後の確認にYesとNoの表示が点滅し、彼は迷う事無くYesの表示をクリックする。
《Yesを確認。これよりアストラルデーターとアバターデータを融合、RPGサーバー、『レインボー・F』への最終インストールを始めます》
そして老人であった彼の姿は光の粒となって消えて行った。
☆
中世風の町並み、その中にある広場の噴水の前に光の柱が下りて来る。
その中から現れたのは一人の少女、否……それは。
「ふぅ~~ん、此処が始まりの街『グリファニカ』か」
一見、少女の姿に見えるが性別は男性。
紫色の髪はくるくるカールのツインテールに纏められ、服装はセーラー服みたいな緑色のスーツ、背中には小さめのリュック、腰にウエストポーチ、膝までのズボンに短めのパレオをまるでスカートの様に身に付けている。
「さてと、今日から此処でボクの第二の人生が始まるんだ、ガンバるぞ~~~!!」
両手を高く上げ、青空を見上げながらそう叫ぶのはたった今ログインして来たばかりのネオ・キャラクター、『ジルフォナ・アルフ』。
そして、彼の生前の名は竹中厳三郎。
生前は盆栽と時代劇を愛する好々爺であったが、何処をどう間違ったのか90歳を越えた辺りから厨二病を発症した享年108歳である。
恐ろしい事に、彼がアバターとして創り上げたのは見た目がキャピキャピ少女の男の娘キャラであった。
彼の冒険の旅は此処から始まるのである。
=どっとはらい=
☆
RPGサーバー
これはRPGゲームの世界観を模したデジタルサーバーである。
未来風、現在風、中世風などの数多くのサーバーに分かれていて、彼が選んだのは中世風のサーバーで『レインボー・F』と呼ばれている。
☆
電子牢獄
殺人などの凶悪犯罪を犯した犯罪者を収容する為に創られたデジタルサーバー。
此処に収監されるという事は事実上の死刑である。
強制労働などの苦痛を与えるものは何も無いが、同時に娯楽になるようなものも無く、ただ衣食住が保障されているだけの世界である。
罪の軽減策として、RPGサーバーなどでモンスター役や敵役、魔王役などを演じる事で他のサーバーへ移動する事が出来る。
役目が終わるとネオ・キャラクターとして希望のサーバーに移る事が出来るようになる。
もっとも、敵役にハマリ過ぎてそのまま永住する例もあったりするらしい。
☆
ネオ・キャラクター
其々のサーバーにログインしたばかりの人物を指す名称。
(`・ω・)と、言う訳で思い付いたままに書いて見た駄文です。
続きは、亀の子更新になるでしょうが何とか書いて行こうと思います。
ちなみに、ジルフォナ・アルフの口調ですが、ぢぢいが意識して喋っている訳では無く、初期設定の際にボクっ子口調で喋る様に設定している為です。