番外編ユフィとギンロウとウッドと・・・
ユフィとついでにウッドの物語です。
私の名はユフィーリアと申します。親しい方々からはユフィと呼ばれています。
これは私がギンロウ様、エルス、カエデ、ネートに出逢ってから直ぐのことです。
当時の私にとってギンロウ様は最も親しい異性の友人でありエルスの思い人、そのような認識でした。
そんな私が彼に好意を持つようになった、ある日の出来事をお話しします。
その日の授業を終え私が寮へ帰ろうと廊下を歩いていると、大声で誰かに文句を言う様な
男子生徒の声が耳に入ってきました。声の方に目を向けるよく知っている人物の声でした。
大声を上げていた男子生徒はウッド・クレインでした。彼の一族は、代々私の一族に仕えてきた家系で
彼も幼いころから私に仕える事を使命として育てられてきました。その為、幼いころからの
顔見知りではありました。しかし彼は真面目な性格の為、主従関係にこだわっているようで
友人としての関係は築けませんでした。正直な話、その日までは彼の事は少し苦手でした。
一方、文句を言われている人物もよく知る人でした。そう、ギンロウ様だったのです。
彼らは私に気付くことなく言い争いを始めました。
「もう一度言うぞ!二度と姫様に近づくな!!」
「だから、姫様って誰だよ?」
「ユフィーリア様の事だ!!」
「・・・ああ!ユフィの事か!・・・絶対嫌だね!!」
「貴様・・・姫様を呼び捨てに・・・いや、今はそんな事より・・・嫌、だと~!
貴様のような奴が、周りをうろちょろするなど姫様にどんな悪影響が出るか分からんのか!!」
私はその物言いにイラッと来てしまいました。いくらなんでも私の交友関係にまで
口出ししてくるのは行き過ぎだと感じました。文句を言おうとも思いましたが
ギンロウ様がどう出るか興味があったので、気付かれないように様子を見ることにしました。
「悪影響ね~・・・つうかそれはユフィに頼まれて言いに来たのか?」
「違う!自分の意志だ!!」
「ふ~ん・・・つまりユフィが心配なんだな?」
「心配に決まっている!姫様は我々ユークリッドの森の一族の長の娘だぞ!我々にとって
どれほど重要な存在か・・・。」
「だまれ!!」
驚きました。ギンロウ様のその一言でウッドも言葉を続けることが出来ないくらい驚いていました。
ギンロウ様は怒っていました。
「お前に言う心配ってのは彼女自身の事じゃなくて、彼女の立場とか一族の事なのか?」
「ち、違う・・・。」
「違うんなら何でそんなつまんね~ことを俺に言うんだ!」
「そ、それは・・・。」
「初めのうちは正直関心してたんだぞ、お前がユフィの事を純粋に心配していたのを感じたから。
でも長の娘だとか、存在がどうとか・・・お前はユフィがそんな立場だから心配してんのか?」
彼の言葉にドキッとしてしまいました。それはずっと私が気にしていることでもありました。
一族での立場は私にとって重荷でしかありません。だからそれを理由に心配されると余計に
私の中でのウッドに対する反発心は強まってしまいます。しかし次の彼の言葉は、
私の思いとは反対の事でした。
「違うだろ・・・そうじゃね~んだろ?」
違う?違うとはどうゆうことでしょう。だってウッドは私の立場を気にしているはずです。
他のエルフも同じです。そんな人々の中にいたからこそ、私には友人が出来なかったのです。
そう信じていました。でも、彼はそれを違うと否定しました。
「当たり前だ!ただ、その~・・・私は口下手で・・・とにかくそれだけじゃない!
確かに姫様の立場は重要だがそれだけでこんなことを貴様に頼みに来ない!」
「頼みってゆうか、命令口調だったけどな・・・。」
「ぐっ・・・とにかくユフィ様には近づかないでくれ!」
「それは絶対に嫌だ!だから何でそんなことをお前に言われないといけないんだよ!
少なくともユフィの意見は聞いておけよ!」
「そ、それは・・・。」
「まあなんとなく想像はつくな。あいつに話し掛けづらいんだろ?」
「な・・・!」
「図星か!あいつって意外と心に壁を作ってるからな~!」
彼の言葉は私の胸に突き刺さりました。今まで壁を作っているのは周りの方だと感じていました。
しかし彼は私の方が壁を作っていると語ります。確かに思い当たることはあります。
周りの人に族長の娘だから、特別な人間だからと言われるのが嫌で自分から距離を置き
そうじゃない人さえも拒絶してきました。でも何故でしょう、そんな自分の殻に引きこもっていた
私に、彼は何故あんな事をしてきたのでしょう。ウッドも疑問に思ったのか彼に聞きました。
「では何故貴様は姫様に近づいた?心に壁があると分かっているんだ、拒絶される可能性の方が
高いだろ?やっぱり何か狙いが・・・?」
「やっぱりってなんだよ・・・まあ出逢ったのは偶然だけどな。そうだな・・・簡単に言うと
ユフィの目を見たときにすんげ~寂しそうだったんだよ!だからほっとけない感じでさ・・・。
少々強引に心の壁を突き破ったんだよ・・・まあ、美人だったからてのは否定しないけど!」
ギンロウ様の意見に、ああ彼らしいなと思わず思ってしまいました。彼はきっと
自分の感じたまま素直に生きているんだと改めて思いました。そんな彼にウッドは
呆れてはいましたが、先ほどのまでの怒りはありませんでした。
「お前って奴はよく分からん男だな!でもお前の言うとおりだな・・・今度はきちんと
姫様の意見を聞いてくる。話はそれからだ!」
そう言ってウッドは去っていきます。その後すぐにギンロウ様は私がいる方に目を向けました。
「そこにいるんだろ・・・ユフィ!」
「ばれていたんですね?」
私は正直ドキドキしていました。ウッドと彼の話を聞いて、彼が私の事をちゃんと見ているんだなと
感じました。そのせいか私の彼に対する思いも少し変わった気がしました。
「ま~な!あいつは気付いてなかったみたいだけどな!」
「そうですか!申し訳ありません。覗き見するつもりはなかったんですが・・・
結果的には同じになりましたね。」
「う~ん・・・それは後で償ってもらうとして・・・取り敢えずどうするんだ?」
「そうですねきちんとなにかお詫びを・・・どうするとは何をですか?」
「だから、あいつが言ってたろ!俺の近づくなとかどうとか・・・。」
「ああ!ふふ・・・そんなことどうこうする必要ないでしょう?
私が一緒に居たい人は自分で決めます。だから今までの関係のままでお願いします!」
「そっか・・・そうだな。それじゃさっそくお詫びを・・・。」
ギンロウ様はそう言いながら、私の後ろに回り込みました。また胸を揉まれると覚悟しましたが、
その刺激は思わぬところから来ました。
『ペロン』
「ひゃう!!」
耳を思いっきり舐められました。
「な、な、何をするんですか!」
「い~や~、エルフの尖った耳は敏感だって言うからちょっと確認を・・・。」
「耳は本当に敏感なんです!せめてもう少し優しく・・・。」
「優しくやればいいんだな?」
「え・・・ちが・・・あ、や、ひゃ・・・。」
その後しばらく舐め続けられた私は、必ず彼に責任を取らせようと心に決めました。
その後、ウッドだけでなく他のエルフの学生も私の元へ訪れました。ギンロウの事だけでなく
色々なことを話しました。そのおかげで私と彼らとの間にあった壁はほとんどなくなりました。
ギンロウに事も特に女性陣は色々感づいたようで、私の事を応援してくれると言ってくれました。
男性陣はウッドを除き納得したようです。ウッドも彼に会うたびに喧嘩をしていましたが、
いつの間にか仲良くなっていたようでした・・・・。
「・・・・・・・。」
「おい!」
「・・・・・・・。」
「お~い!」
「・・・・へ?え~と・・・?」
「どうしたんだよボーっとして?」
「え?いえ・・・ちょっと昔の事を考えていて・・・。」
「昔の事?」
「はい!ギンロウ様とウッドが出逢った時の事を・・・。」
「なんでその時なんだよ?せめて俺とユフィが出逢った時を思い出せよ!」
「ふふ・・・いいじゃないですか。さ!デートの続きを楽しみましょう!」
そう言って、私は彼の手を取りデートを再開させた。
次回はカエデとネートのお話です。