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片手の騎士と・・・  作者: 微々七巣
魔法の義手編
16/27

エピローグ片手の騎士と始まりの物語と・・・

第一章完結です。

その日の朝、雨など降っていなかった。ただ遠くの空に雨雲が見えていた。

その雲がなにか不吉なものを暗示しているようだった。

この日は新入生に対する、オリエンテーリングが行われていた。学科ごとに内容が変わるが、

騎士科は魔術科と合同で実地訓練を行う。科ごとにそれぞれ二名づつ、それと引率の上級生一名の

計五名でパーティーを組み実際に魔物と戦いを行う。魔物と闘うと言う事と、

人間と訓練で闘う事の違いを実際に味わうことと、パーティーで闘う事の重要性を学ぶために行われる。

ギンロウは引率の上級生の一人に選ばれていた。彼のパーティーの他のメンバーである下級生も

成績は平凡だったが、この実地訓練も無難にクリア出来るだろうと誰もが思っていた。

問題があれとすれば騎士科の一人が向上心が強過ぎて、自分の能力値以上のことを

やろうとしてしまう、そんなことぐらいだった。

そして訓練が始まる。はじめは特に問題はなかった。向上心が強過ぎる騎士科の生徒が

前にですぎるのを、ギンロウが諌める程度だった。昼になり一旦休憩を取り、

後は学園に帰るだけだった。そして戻ろうと支度を済ませた一行の前にそれは現れた。

それは魔物ではあったが、何処か異様な雰囲気をしているのをギンロウは感じ取った。

(オーガか?だが、大きさが全然ちがうな・・・なにより気色悪い色だな。

 もしかして特殊固体か?だとしたらまずはこいつらを逃がさね~とな!)

オーガとは頭に角を持つ人型の魔物である。特徴は人よりも一回り以上ある巨体で

特に、腕は規格外に太い。さらに金棒を所持し振るった時の威力は、岩を軽く砕く。

その巨体のため移動速度は遅く、知能が低いため武器を振り上げて振り下ろす事しかできない。

その為、動きが読みやすく比較的に倒しやすい魔物とされている。しかし目の前の魔物は何か違った。

そのオーガはギンロウが考えた通り特殊個体と呼ばれる魔物だった。

魔物にも個体ごとに少しに違いは出る、しかし特殊個体と呼ばれる魔物は

その違いがあまりにも逸脱しているのだ。例えば、通常は遅い魔物が異常なスピードだったり、

毒を持たない魔物が毒を扱ったりなど様々である。その特殊個体を見分ける方法は

その魔物の色と言われている。魔物には種族ごとに、ある程度の皮膚や毛皮の色が決まっている。

オーガは灰色、黒色、茶色が一般的で、赤色、青色は普通のオーガとは別格の強さを持っている。

だが目の前のオーガはどれにも当てはまらない薄い紫色をしている。その上大きさも

普通のオーガよりも、一回り二回りも大きい。明らかに普通のオーガではなかった。

赤や青ほどの威圧感はないものの、何より特筆すべきはその移動速度だった。

明らかに普通のオーガの5倍以上速く感じる。それでも並みの魔物より遅いのだが、

オーガのパワーを考えると非常に危険だった。ギンロウはその危険さを敏感に感じ取った。

「お前らすぐに逃げろ!それから緊急時の信号弾を使え!!」

ギンロウは全員に指示を出す。ちなみに信号弾とは、今回の様な緊急事態の際に使われ

学園の者に自分たちの居場所を知らせ、助けを呼ぶ事が出来る物である。

ギンロウの指示で、オーガの登場で固まっていた下級生たちは動き出す。

全員が逃げようとする中、向上心の強い騎士がギンロウに尋ねる。

「先輩はどうするんですか?」

彼の方を見ずにオーガを睨みながらギンロウは答える。

「奴を抑える!いいからお前たちはとにかくここから離れて応援を呼べ!!」

そう一括されようやくその場から離れる。後ろから信号弾が発射されるのを確認して

ギンロウは少し安堵する。

「後はこいつを抑えるだけか・・・いや、応援が来る前に倒しちまうか!」

そう言い剣を構えなおすギンロウはオーガに攻撃を仕掛ける。オーガもそれに気づき金棒を構える。

金棒が辺りの木々を倒しながらギンロウに向かって振るわれる。彼はそれをギリギリで躱し

オーガを切りつける。二刀流からなる二筋の剣閃は確かにオーガに当たが大して効いた様子はない。

「ちぃ!浅いか・・・予想以上に固い皮膚だな!!」

悪態をつきながらも次の攻撃に備えオーガから距離を置く。ギンロウが今までいた場所を

オーガの攻撃が通り過ぎる。その後もギンロウはオーガの皮膚の硬さに手を焼きながらも攻撃を続けた。

何度目かの攻防の時にギンロウはオーガの攻撃を避けるため大きく距離を置いた。

その時オーガの真後ろにいた人物が目に入った。あの下級生の騎士だった。

ギンロウは走り出していた。オーガにではなく下級生の騎士に向かって。

なぜなら彼が剣を構えるのが見えたからであった。オーガの後ろから放たれた攻撃は

奴の硬い皮膚を一切傷つけることなく弾かれた。そしてその攻撃でオーガは後ろに振り返る。

下級生の騎士を見つけたオーガは、金棒を彼に向かって振り下ろす。そこにギンロウが飛び込む。

下級生を抱えながらギンロウはオーガの攻撃で、下級生と一緒に吹き飛ぶ。

吹き飛んだギンロウと下級生はオーガから離れたところの地面に叩きつけられた。

ギンロウはすぐに起き上がり下級生に声を掛ける。

「おい!無事か?」

彼はせき込みながらも答えようとする。

「はい!自分は無事で・・・。」

自分の見たものに思わず絶句してしまう下級生。

「ああ、この腕か・・・平気、平気!問題ね~よ!」

「平気って・・・腕がグチャグチャじゃないですか!!」

彼の言うとおりギンロウの左腕は完全に使いものならなく程、ボロボロだった。

彼を助ける際、オーガの攻撃が直撃すれば自分も下級生も唯じゃすまないと判断したギンロウは

咄嗟に左手で金棒を殴りつけた。オーガの攻撃を完全に防げるわけではないがギンロウの左手以外は

吹っ飛んだ際に出来た切り傷や打撲程度で済んだ。しかし下級生は項垂れる。

「ぼ、僕のせいですよね?僕が言うことを守って逃げていれば・・・。」

それに対しギンロウは

「ああそうだ・・・だからお前はとっとと逃げやがれ!!」

とはきりっと告げる。その言葉に驚く下級生。

「あなたはどうするんです・・・まさかその腕で戦うなんて言うんじゃ・・・。」

「当たり前だろ!お前らを守る・・・それが俺の仕事だ!いいから行け!!」

その力強い言葉に思わず黙るしかなくなる下級生。そしてその場を離れみんなが逃げた場所へ向かう。

それを見送り、オーガのいる方を睨み付けるギンロウ。正直な話、彼は限界だった。

左腕の痛みが尋常ではなく、立っているのもやっとだった。そしてオーガが再び姿を現す。

その時、ポツ、ポツと雨が降り出した。直ぐに雨足は強くなる。それにギンロウは感謝した。

(次の一撃が最後だ!これで決まらないと俺の負けだ。完全なる不意打ち!

 雨でしか使えない奥義・・・これにすべてを掛ける!!)

そしてオーガの視界から突然ギンロウが消える。オーガは敵の行方を探し周りを見る。

そのオーガの真上に現れたギンロウは、全身の体重をかけた剣をオーガの頭に突き刺した。

どちらも動かない。そして力尽きたギンロウは剣から手を離し地面に落ちる。

しばらくしてオーガも倒れる。どうやら完全に絶命したようだ。

奥義『雨隠れ』その名の通り雨の中でしか使えない技だ。雨音に紛れ気配や音を完全に消す。

それにより完全な不意打ちをすることが出来る。これにより勝利したギンロウだったが

力尽きて気絶したようだ。その後すぐに救援が来て命に別状はなかった。

しかし雨の中運ばれる彼の様子を見て、そして彼の左腕のことを聞いたエルス達の動揺はひどかった。

結局、彼の左腕は治療できず、このままでは傷口が腐り他の部分にまで影響が出ると判断され

ボロボロになった部分は切り落とされた。


それから傷は癒えども左腕を無くしたギンロウだったが、多くの協力で新たに左腕の代わりを

手に入れる。しかしそれは新たな騒動の幕開けにすぎなかった・・・・・。

次は新章に生える前に番外編をいくつか書きます。

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