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片手の騎士と・・・  作者: 微々七巣
魔法の義手編
15/27

第十四話片手の騎士と魔法の義手と・・・

シキと契約した一行は、学園に戻ってきていた。学園に入る際一つ問題が生じた。シキの存在だ。

普通の精霊ならば契約しても実体が無いので特に問題にはならない。

しかし、彼女は実体が有る上に女性であった為、ギンロウと同じ男子寮で暮らすのは不味いと

学園側は判断した。そこで、女子寮に彼女用に部屋を用意し、更に実体を持つ彼女が学園内を

行動しやすい様、仮の生徒として入学させた。もちろん学園内では学生服の着用が義務ずけられた。

女性陣でシキを制服に着替えさせると早速、ウッドが居る『ルーン文字研究室』へ向かった。

研究室でウッドに帰還と、シキとの契約の事などを報告した。

「とにかく大精霊との契約は上手く行ったんですね。こちらの方も、材料に関してはアルク先生より

 送られてきて揃っています。術式の方も後は姫様に確認と検証を行っていただき、

 問題なければ完成です。」

ウッドの報告に一同は喜ぶ。その後直ぐにユフィが術式の確認と検証を実施した。

二日後には問題ないと確認出来た。こうして魔法の義手発動の準備が全て揃ったのだった。

そして一同は魔法を発動させる為、ギンロウに処置を施す。まず、左手の残っている部分を

聖なる泉から採ってきた水を使い清める。聖なる泉はユークリッドの森に在り、

その水には微精霊が多分に含まれる。微精霊によって浴びた所は魔力が活性化するので、

エルフ族は魔法を使った儀式をする際はその泉で水浴びをしていた。

次に左手の残っている部分の付け根に、彼の血と魔法のインクを混ぜた物と針を使って

術式を刻んでいく。魔法のインクは自分の体に術式などを書く際に使用され、自身の血を混ぜると

書いたものが二度と消えなくなる。今回は更に針を使って直接体に刻むことで、二重に術式が

消えないようにしている。さらに使う針も蘇生針と呼ばれ物を使う。これは刺すことで

死んでしまう細胞を、抜く際に蘇生させ刺す前よりも細胞をより強くす針である。

これにより術式を針で刻んだ際に滲む血によって、術式が変化してしまうのを防ぐことが出来る。

ただし無理やり細胞を蘇生させるため普通の針で行う時より、激痛が伴う。

最後に、この術式を使う時の条件やルールを精霊と結ぶ。今回のように特殊な術を使う際に

精霊の力を借りる場合、通常の契約とは別に新たに契約を結ぶ必要がある。

今回のルールや条件は以下となった。

一つ、この術式は契約者が眠っていたり意識が無い時以外は常に発動していること。

一つ、この術が発動している時は契約者の魔力は全て精霊の自由に使えるものとする。

一つ、この術によって出来た腕は基本的に契約者の自由に動かせること。

   特殊な動きをさせたい場合は精霊に願い、許しを得ること。

こうしてすべての準備が整った。

「後はギンロウ様が術を発動させば完成です。」

ギンロウにそう告げるユフィ。ギンロウは頷き、術を使用するため集中する。そして、

「うん!ギンロウから魔力が流れてくのを感じるね!問題なく魔法が発動したはずだよ!」

全員が一斉にギンロウを見る。ギンロウは自分の左腕が会った場所を見つめながら嬉しそうに

皆に告げる。

「ああ!多分だけと発動している。上手く言えないけど、光の線が左腕の輪郭を描いていて、

 ちゃんと掌の形もある。掌をグーに握ると、握った感触も感じられる!

 後は何かに触ったり、持つことが出来れば完璧だな!ちょっとエルス・・・いいか?」

エルスを呼ぶギンロウ。エルスは近づきながら

「ん、どうしたんだ?とゆうか、術者以外には見えない義手だから成功したか分かりずらいな・・・」

そう言う。エルスの言葉に他の者も頷く。その様子にギンロウはにんまりと笑い、

「じゃあ体でわからしてやるよ!」

そう言いながら、見えない左手でエルスの胸を揉む。

「な!・・・・ん・・・ひゃん。」

エルスは一瞬驚くも、直ぐに何時もどおり手を払いのけようとして出来なかった。

揉まれた時の感触がいつもと違ったのだ。服越しではなく、直接触られたような感触だった。

エルスにリアクションに驚きながらユフィが聞く。

「どうしたんですか?変な声を上げて・・・。」

そう問われエルスは何とかギンロウから距離を取り、話し始める。

「ん~なんだか何時もと感覚が違ったんだ・・・。まるで直接・・・・おい!シキ!

 何を笑っているんだ!?お前が何かしたのか?」

自分が味わった感触を喋ろうとしたとき、皆の後ろでおなかを抑え笑っているシキが目に入り

彼女が何かしたんだなと思い、問い詰める。シキは笑いながらも答える。

「ふふふ!そうだよ!私がちょっと悪戯したんだ!まあ、やったのは服なんかの薄い物を

 無視させるようにしただけだけどね!直接揉まれたような感触でしょ!」

悪戯っ子な笑みのシキに、エルスは顔を真っ赤にして睨み付ける。そんなやり取りにウッドが突っ込む

「とにかくギンロウ!まず、剣を持てるか試すのが先だろうが!それが出来ないと

 俺たちの苦労が報われないだろ!!」

その突込みにギンロウは頷き、

「すまん。俺的には重要な事だったんだが・・・まあいい、じゃあやってみるぞ!」

そう言いながら剣を魔法の義手で鞘から抜くため、柄に手を掛ける。

一同は緊張な面持ちでギンロウを見つめる。ゆっくりと剣が鞘から抜かれていく。

「一応、持てるな!後は実際に素振りでもしてみてからだな。まあここじゃ出来ないから

 訓練場に移動する・・・ん、どうしたんだ、お前ら?」

剣の感触を確かめていたギンロウは周りの様子がおかしいのに気付いた。彼に返答するカエデ。

「う、うむ!なんと言っていいか困るで御座るが・・・。何もない所に、

 剣だけ浮いているのでなんとも奇妙な光景だなと思ってしまったで御座るよ・・・。」

カエデの意見に全員が頷く。ギンロウは少し不満そうに

「しかたねぇだろ!そーゆー魔法なんだから!あ、でもまてよ?」

言いながらも何か思いついた様で、近くにあった布で左腕を巻き付ける。

「これで少しはマシだろ?ま〜後でもっときちんとしたやつを用意しないとな!

 そんじゃあ、訓練場へ向かうか!」

ギンロウの意見に全員が頷く。


訓練場へ移動し、簡単に素振りをして感触を確かめるギンロウ。それが終わると今度はエルスと

簡単な打ち合いを始める。

「エルス、もう少し速くても大丈夫だ!」

「分かった!」

ギンロウの言葉に、エルスは攻撃の速度を上げてゆく。その速さにも、剣二本を自在に操り

対応するギンロウ。その後は相手をカエデに変え、暫く訓練を続けた。



ギンロウの腕の具合を確かめた後、全員で研究室に戻ってきていた。

「これで俺の新しい腕も問題ないな!この腕が出来たのも、みんなのおかげだ、有り難う!」

真剣な表情で礼を言うギンロウに、みんな思わず笑顔になる。

「礼などいい!私たちがやりたくてやったことだ!」

「そうですね!」

「うむ!当然のことをしたまでで御座る!」

「うん・・・。気にしないで・・・。」

皆がそう言うが、納得いかずギンロウは

「う~ん・・・でもな・・・やっぱりなんかお礼をしたいな!」

そう言う。そんな彼に何か思いつきたエルス。

「そこまで言ううなら明日、一日付き合ってもらおうか!」

エルスのお願いにギンロウは聞き返す。

「付き合えって・・・つまりデートって事か?」

エルスは頷く。

「ああ!まだ長期休暇は続くからな。たまには息抜きをしたいしな。」

「ふふ、それはいいですね!じゃあ、次の日は私に付き合って下さい。」

「その次の日は拙者が!」

「その次は私も・・・お願い・・・。」

「最後に私もお願いしようかな?」

エルスの提案にユフィ、カエデ、ネート、シキも続く。

「シキもか?まあいいけど・・・でも本当に皆、そんな事でいいのか?」

ギンロウの問いに笑顔で頷き返す女性陣。

「せっかく恋人同士になれたんだ。そういうらしい事をしてみたいじゃないか・・・。」

エルスの言葉にようやく納得したギンロウ。

彼らの休暇はまだ始まったばかり・・・・・。

次で第一章の終了です。


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