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片手の騎士と・・・  作者: 微々七巣
魔法の義手編
14/27

第十三話片手の騎士と『シキ』と・・・

今回は精霊の過去の話です。

精霊に名は無かった。元々が剣であったため、剣には名があった。しかし精霊化したのは

剣に名を付けられてから、かなりの年月が経ってからだった為、なんとなく自分の名とは感じなかった。



その剣は東の島国で作られた。東の島国は龍人族とただの人族が暮らしていた。

当時、お互いに仲が悪かった訳ではないが、あまり積極的に交流もしていなかった。

そんな中ある魔物が現れた。その魔物は強く龍人族、人族がバラバラに挑んでも太刀打ちできなかった。二つの種族は協力して魔物をたおすこととなった。協力する事で被害は減ったが、

魔物を倒す事は出来なかった。そこで、魔物を倒せる武器を作る事になった。

精霊の力が宿った不思議な鉱石を材料に、人族の鍛冶屋の男が二本の剣を作り上げた。

更に龍人族が崇める龍神に頼み込み、その剣が最大限の力を発揮出来るように加護を授かった。

こうして出来上がった剣だったのだが、一つの問題が浮上した。使い手がいなかったのである。

元々は龍人族の中で最も強い者が振るう予定だったが、精霊の力を宿した剣であった為に

魔力の低い龍人族では扱える者がいなかった。人族の方でも試して見たが魔力の高い者は

剣自体を扱えず、剣を得意とする者は魔力が低かった。どうしようかと二つの種族が悩んでいた時、

西の大陸からある女剣士がやって来ていた。その女剣士は剣の扱いもうまく、魔力も高かった。

東の国の人々のに頼まれ彼女はその剣を振るい、見事に魔物を倒した。

その後、剣は龍人族と人族の友好の証として大切に保管された。

それからその剣が振るわれる事はない平和な世が続いた。



声が聞こえる。何処からだろう・・・でも確かに聞こえる。私を呼ぶ声が・・・。

でも私には答えることが出来ない。何故なら私は・・・ただの剣だから・・・。

え・・・?じゃあなんで私は今、こうしてものを考えることが出来るんだろ?唯の剣なのに・・・。

あ・・・。また声が聞こえた。とにかくこの声は何を言っているのかちゃんと聞いてみよう。

「・・・て下さ・・・んのか・・・さま・・・します・・・。」

聞こえてきた。もっとはっきりと聞きたい。

「た・・けて下さい。・・んのかみさま・おね・・します・・。」

もっとはきりっと!!

「助けてください!剣の神様!お願いします!!」

聞こえた!!どうやら剣の神様とやらにお願いがあるみたい・・・もしかして私の事かな?

でも・・・助けてくださいか・・・どうにかしてあげたいけど・・・。

今の私はただの剣・・・ちょっとまって、何でただの剣がどうにかしてあげたいなんて思ったんだろ?

・・・そっか!そうなんだよ・・・私の中にとても強い二つの意思を感じる事が出来る・・・。

きっとそれが今の私の思いの始まりなんだ・・・。


一つは剣を作った鍛冶屋の優しさだった。私を作っている間ずっと

『この剣が人々が平和に暮らせる世の中を作る役に立てればそれでいい!

 ただそれだけでいい!頼む・・・剣よ私の思いに答えてくれ!』

そんな思いを込ていた。

彼は元来、優しい青年だった。鍛冶屋として腕はよかったのだが鍋や包丁などの生活用品が主で、

武器を作ったことは一度としてなかった。そんな彼に魔物を倒す剣を作る話を依頼されたのは、

他の腕利きの鍛冶屋では精霊の力の宿った石を剣にするのが不可能だったからだ。

初めはのうちは断っていたが、多くに人々が魔物によって傷つく現状に剣を作る決意をした。

彼は争いや何かを傷つける為ではなく誰か守る為、そして平和な世を作る礎とする為に剣を作った。

二つ目は剣を振るった女剣士の勇気だった。彼女は初めて訪れたその国で、

見ず知らずの人の為に闘った。それはある偶然の出会いがきっかけだった。

彼女は冒険家であった。見ず知らずの場所を渡り歩くのが好きだった。

東の国に来たのも偶然だった。そんな中彼女は怪我を負ってしまう。

身動きが取れない中、自分の死も覚悟した。彼女を救ったのは鍛冶屋の青年だった。

最初のうちはお互いに警戒していたが、彼の家で療養するうちにその優しさに触れ、

徐々に心を許せる仲になった。そんな日々を過ごしていると彼に剣を作る依頼が来た。

初めは悩んでいた彼も、剣を作ることに決めたときは確かな覚悟を持っていた。

そして剣は完成した。しかし、剣を振るえるものがいなかった。

彼の思いと覚悟を知っていた彼女は自らその剣を振るい、魔物を倒そうと考えた。

初めのうちは異国の女性ということで反対もあった。しかし、彼女しか剣を扱えなかった為

彼女にその剣が託された。結果的に彼女は魔物を倒し、無事に鍛冶屋の青年の元へ帰った。


そんな二人の意志が、今の私を作ったんだ。だからこの助けを求める声に答えたい、そう思ったんだよ。

よし!それじゃどうしようかな・・・?きっと出来るはずなんだ・・・。

そうだ・・・イメージするんだ・・・自分の体・・・そうだな・・・かつて私を振るった女剣士!

あれを思い浮かべるんだ!髪は・・・黒い方がいいかな?彼女と同じ銀髪は、この地では目立つかな?

胸は・・・うん大きかったな・・・よし!なんかいい感じだ!!だんだん自分が出来てくる・・・。

後は・・・そうだ・・・目を開かなきゃ!そうしないと見えないんだよ!

そして彼女は目を開く。そこには十歳ぐらいの子供たちが、自分の方を見て驚いている様子が映った。

改めて自分を見た。確かに自分の手と足と体が有った。そして今まで自分がいた場所を確認する。

そこはどこかの洞窟だった。

(思い出してきた!魔物を倒した後、この洞窟の祠に収められたんだっけ?

 でも、人払いの結界なんかが掛けられていたんだけど・・・?

 あれ・・・どうやら効力が無くなっているね!それだけの時間私が収められてから経ったみたいだね。

 まあいいか・・・どのみち、もう剣はここにはないんだからね。)

そして改めて子供たちを見つめる。まだ驚きが抜けていないようだ。当然だろう。

彼らにしてみれば、突然目の前の祠から女性が出てきたのだから、驚くのは無理もない。

取り敢えず声を掛けることにした。

「やあ!君達・・・私に何か用かい?」

そう問うと、皆どう反応していいのか分からないようだったが、一人の少年が質問してきた。

「お姉ちゃんだれ~?」

逆にそう問われ、自分が何者か改めて考える。

(今の私って何者なんだろう?子供たちが言う剣の神様ではないしな~・・・。

 たぶん・・・精霊?・・・そうだ精霊だ!私の中ので、何かがそう言ってる気がする・・・。

 でも、子供にそれを説明しても分からないよね!うん!剣の神様とゆう事にして置こう!!)

「私は剣の神様だよ!君たちの呼びかけを聞いて出て来たんだ!!」

自信満々にそう告げると、子供たちは一瞬驚き、直ぐに笑顔になった。

そして口々に喜びの声を上げる。

「やった~!本当にいたんだ!」

「うん!これでお姉ちゃんを助けられる!!」

「あのお話って本当だったんだ・・・。」

精霊は一同が落ち着くのを待ち再度、質問する。

「それで・・・君たちは私に何の用があるんだい?」

子供たちのリーダー各の少年だろうか、彼が皆を見渡す。全員がしっかり頷くのを確認すると

今度は精霊の方に向き説明を始めた。

お願いの内容は魔物退治だった。その魔物はある日、突然村に現れ、そしてある要求をしてきた。

村には戦えるものは居らず、その要求を呑むしかなかった。その要求とは生贄だった。

生贄に選ばれたのは村一番の美少女で、その少女は村の子供たちの姉代わりの様な人だった。

子供たちは何とかお姉ちゃんを助けたかった。そこで村に伝わる昔話を頼ることにした。

それは村の近くにある洞窟の祠の中には、悪い魔物を倒した剣の神様が眠っているというは話だ。


話を聞き終えた精霊は、

「うん・・・話は分かったよ!その魔物を倒せばいいんだね?」

と軽く答えた。その答えに子供たちは喜びを表す。

「本当!本当に倒してくれるの?」

「絶対だよ!約束だからね!」

「ありがとう・・・神様のお姉ちゃん!」

そんな子供たちに自信満々に返す精霊。

「ああ!任しといてくれよ!!」

その自身の通り彼女は魔物をあっさり倒してしまう。

そして村人たちを呼び、魔物の脅威が無くなったことを報告した。村人たち大変喜んだ。

その後、村人たちから村の守り神になってくれないかと頼まれた。しかし、精霊は断る。

理由は彼女の力にあった。彼女の力で村を平和にするのはいいが、いずれその力を聞きつけ

その力を狙う輩が現れないとも限らない。そうなると村に争いが持ち込まれてしまう。

それを彼女は是とすることは出来なかった。彼女は村を去ることにした。

村を去った彼女はこれからどうしようかと考えた。その時、女剣士が住んでいた西の大陸を思い出す。

どうせだったら自分が知らない場所へ行ってみようと思った。彼女は西の大陸へと渡った。

初めのうちは見ず知らずの場所で楽しかった。しかし、時が経つにつれて彼女には寂しさが芽生えた。

彼女は一人だった。精霊ではあるが異質な生まれの為、他の精霊とはきちんと会話できなかった。

大陸には様々な種族そして多くの人がいたがその中でも彼女は特に異質であった為、

自分の居場所は出来なかった。それならばと契約できるものを探した時期もあったが、

特別な〝資格〟がいるため見つからなかった。そんな旅の途中、彼女はある山に洞窟を見つけた。

その洞窟は故郷の洞窟に似ていた。その洞窟の奥にたどり着いた時、彼女は決めた。

ここでもう一度眠りにつくことに。そしていずれ、私が生まれたときのように、

私を求めてくれる人が現れるのを待つことにした。

ちなみに洞窟を見つける前に、山道を歩いてる彼女を偶然見かけたエルフ族が

人型の精霊を見たと友人に話した事で、ドボール山に精霊がいるという噂が広がった。



「とゆうのが、私が生まれてドボール山に住むまでの流れかな。

 正直、こんなに早く私の求めた相手が見つかるとは思わなかったよ。」

一行は精霊との契約完了後、村の宿屋に来ていた。ななだかんだで遅くなってしまい帰るのは

明日からと言う事に決まった。また宿屋は三人部屋を一部屋しか借りられなかった。

全員で会話するうちに精霊の事を聞くことになった。そして、精霊の話も終わる。

「本当に剣が精霊になったのか・・・ユフィ、そんなことってあり得るのか?」

疑問をユフィに聞くエルス。

「正直に言いますと私にもわかりません。ですが・・・材料に使われた精霊の力が宿った鉱石が、

 何らかの作用して今のようになったのかもしれません。」

自信無さげに答えたユフィ。ギンロウが別に疑問を精霊に聞く。

「その剣てどんなものだったんだ?」

その疑問に精霊は

「剣には名前があってね!一本は春夏、もう一本は秋冬!合わせて春夏秋冬と呼ばれ

 四つの顔を持っているんだ!!」

と答える。その答えにさらに疑問が湧くギンロウ。

「二本なのに四つの顔・・・一体どういう意味なんだ?」

「うん、それはね!春夏は春と夏に、秋冬は秋と冬にそれぞれ任意で切り替えられるんだ!

 そしてその季節ごとに違う属性の力を振るえるんだよ!春は風!風を纏った刃は一振りで

 幾重もの斬撃を生む!夏は火!炎を宿した剣は全てを燃やしつくす!秋は土!

 大地のエネルギーは圧倒的な破壊だけでなく、自らを癒すのにも使える!冬は水!

 氷の力で万物全てを凍てつかせる!この四つの属性を使い分けれるんだよ!!」

その答えに一同驚く。そんな中カエデは聞く。

「それは凄まじい剣で御座るな!しかしその剣自体は、精霊殿になった時点で

 消えてしまったので御座るか?」

その質問に精霊は首を横に振ると、

「いいや!まだ私の中に有るんだよ!私自身望めば出てくるし、もちろん契約者なら

 振るうことも出来るよ!やってみるかい?」

と言いギンロウに目を向ける。女性陣もつられて彼を見る。そんな視線を浴びる中、彼は首を横に振り、

「いいや、遠慮するよ!出来れば今後も、そんな物を振るような事態にならない事を祈るよ!

 それよりも、もっと気になることがあるんだけど・・・!」

と精霊を見ながら言う。

「なんだい?」

「おまえの名前は剣の名である春夏秋冬でいいのか・・・長いけど?」

精霊の相槌にギンロウがさらに問いかける。その問いに精霊は首を横に振り

「いいや・・・それはあくまで剣の名前だよ。少なくとも精霊かする前の名だからね・・・。

 なんとなく自分の名前って感じないんだよ・・・。」

寂しそうに答える。そんな精霊に

「それじゃあ今は名前が無いんだな?」

ギンロウは聞く。精霊は少々声を荒げ返す。

「だから!そうだっていたよね!」

その答えに考え込むギンロウ。しばらくして何か思いついたようで、

「・・・・う~ん・・・おお!そうだ!よし、決定!お前の名前はシキ!これからはシキだ!」

自信満々に言ってくる。その言葉に思わず固まってしまう精霊。

「へ?・・・え?・・・えーと?」

周りの女性陣はひそひそ声で

「もしかして春夏秋冬の四季から来ているのか?」

「そうみたいで御座るな・・・しかし何とも・・・。」

「安直・・・すごくいい加減・・・。」

「確かにそうですね。名を着けるのは良いとしましても、もっとちゃんと考えて上げないと・・・。」

会話している。そんな会話に突っ込むギンロウは

「おい!聞こえてるぞ・・・それに精霊は喜んでるかもしれないだろ?な、いい名だよな?」

と言いながら精霊にも感想を求めた。精霊はようやく

「シキ?それが私の名前?」

と答える。ギンロウは

「そうだよ!で、いい名だよな?」

と再度聞く。精霊はしばらく考えると

「シキか・・・と~っても安易だけど、契約者が言うんじゃ仕方ないよね?

 これからはそう名乗ってあげるよ!」

どこか嬉しそうにそう答える。女性陣はその答えに大笑いし、ギンロウはふて腐れる。

そんなギンロウたちを見ながらシキは笑顔になるのを止められなかった。

皆が思ってる以上に嬉しかったのだ。彼女にとってそれは初めて与えられた大切なものとなった。

こうして一向に剣の大精霊シキが加わった。



次回、ようやく魔法の義手の完成です。

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