第十一話片手に騎士と精霊と・・・
精霊と契約についての話です。
「ふふ・・・それで、君達は何の用で私の住処に来たんだ?」
一同が突然の邂逅に動きを止める中、目の前の美少女精霊が話しかけてくる。
話し掛けてくる精霊の様子は、神秘的雰囲気は薄れ悪戯っ子がするような笑みを浮かべている。
雰囲気が変わったことでさらにどうしていいのか分からなくなってしまう一向。
そんな中、一番に動き出したのギンロウだった。彼は精霊に『ビシッ!』と指をさし、こう告げる。
「決まっているだろ!君を・・・俺のものにするためだ!!」
そんな堂々とした宣言にその場にいた全員があっけにとられてしまう。
そして精霊は顔を俯かせ、体も小刻みに震えてる。それを見て女性陣は
ギンロウの不遜な物言いに怒ってしまったのでは思った。しかし、
「く・・・くく・・・あ~はっはっはっはっ!は~はっはっはっはっ・・・・。」
と急に声を上げて笑い出した。そして精霊は
「私を君のものにするか・・・なかなか面白いことを言うね!
私がどういう存在か分かったうえでの発言かな?」
一転、今度はは真剣な雰囲気で聞いてくる。それに対しギンロウが何か言う前にユフィが答える。
「はい!あなた様が大精霊というのはすぐに感じました。
しかし、我々はその大精霊に会いに来たのです!」
そんな真剣な様子に精霊は考える様子で
「ふ~ん・・・大精霊に会いに来た・・・か。そして、君は私をものにしたい・・・か。
なるほど!つまり私と契約したいのか!」
と自分たちが来た目的を当てて見せる。ユフィはすぐに肯定の意を示す。
「その通りです!我々・・・いえ、彼との契約を結んでもらえるようお願いしに参りました。」
それを聞いて笑みを浮かべる大精霊。
「私が何の大精霊かも知らずに来て、しかもいきなり契約しろ・・・か。
自分たちが、かなり失礼な事を言っている自覚はあるかい?」
笑みを浮かべながらも声に凄みを持たす。その様子にエルスは慌てて、
「申し訳ありません!しかし、どうしても大精霊である貴方の力をお借りしたい事があるのです!!」
と謝罪と懇願をする。そのあまりに真剣な態度に「ほぅ!」と感心しながらも全員を見渡す大精霊。
(ふむ、ここにいる全員が本気と言うわけか。なら・・・!)
少し考えた後、精霊は口を開く。
「まずは君達、いや正確にはそこの彼か?が、何故私との契約を結びたいのか?
その理由を話してくれないかな?話はそこからだ!」
一向は、ギンロウの腕の状態と魔法の義手の事を説明した。それに合わせて自分達が何者か説明した。
全てを話し終えると、
「なるほど、魔法の義手か!君達は面白事を考えるね!う〜ん・・・そーゆー事なら契約するのも
やぶさかではないんだが・・・。」
あっさりとした感じて言いながらも最後は言葉を濁す精霊。その様子にネートは問いかける。
「何か・・・問題があるの・・・?」
その問いに精霊は返す。
「まず、ギンロウが私と契約できる〝資格〟を持っているかという点だね!
これを持っていなければ、当然、契約自体結べない。
そして、次に私の出す契約の〝条件〟が飲めるのかということだよ!」
その答えにカエデは疑問を挟む。
「〝資格〟と〝条件〟はどう違うので御座るか?」
その疑問にはユフィが答える。
「〝資格〟とは契約者自身が持っていなくてはいけないもので、〝条件〟は簡単に言うと
精霊からのお願いみたいな感じですかね?結局のところ両方共にクリア出来なければ、
契約は出来ないんですけど。」
一同が納得した所で精霊が話を再開させる。
「まずは、私と契約する為の〝資格〟は何が必要か?からだね!エルフであるユフィは
気付いていただろうけど、私自身かなり特異な精霊だからね。〝資格〟も色々面倒なんだ!」
そう言いながらユフィを伺う精霊。他の者もユフィを見る。ユフィは頷き
「はい!あなた様が普通の精霊とは違うのは分かっていました。ただ私も実体を持つ精霊は
始めて見ました!そんな精霊が存在するのも今日初めて知りました!」
ユフィの言葉に一同はさらに疑問が浮かぶ。
「精霊とは実体を持たないものなのか?前にユフィが呼び出したのを見たがあれは実体ではないのか?」
エルスの問いに答えたのは精霊自身だった。
「精霊とは本来、意識の集合体の様なもので、人間の様な決まった形は持っていないんだよ!
ただ人の前に現れる時なんかは分かりやすい様、適当な体を魔力で作る事も上位以上の
精霊には可能なんだ!まぁ、あまり長い時間は無理だけどね!」
その答えにさらなる疑問がわく一同。
「じゃあ・・・なんであなたは実体を持っているの・・・?」
ネートの質問に答える精霊。
「それはね、私がとある一本の剣から生まれたからだよ!宛ら私は剣の精霊と言う所だね!
まぁ、詳しい話はまた後にして〝資格〟についての話に戻そうか?」
全員を見ながら確認を取る。全員が頷くのを見て再度、話し始める。
「私と契約するための〝資格〟それは・・・血だ!もちろんただ血が流れていればいいわけじゃない!
私は元々剣だった。その時に私を打った鍛冶師、そして私を振るった剣士。
この両名の血を引いてる者でなければ、私と契約することはできない!」
そんな〝資格〟の内容に女性陣は固まってしまう。唯一固まらなかったギンロウは、
「それってどうやったらを分かるんだ!〝資格〟に必要なら当然調べられるよな!」
まっすぐ精霊を見つめ問う。そんな彼を見つめ返すと微笑む精霊。
「真直ぐだね君は!正直な話、君が彼らの血を引いてるなんてそんな偶然はないと思っているよ!
でも、その真直ぐさに免じて調べるだけはやってみようか?」
その問いにしっかり頷くギンロウ。
「ああ!んで、どうやんの?」
「手を出してくれるかい?」
そう言いながらギンロウに近づく精霊。ギンロウは目の前に来た精霊に向かって手を出し・・・
そのまま精霊の大きな胸を揉む。掌に収まらないその胸を二度、三度と何度も揉む・・・
事は出来なかった。お約束で吹き飛ばされたわけではない。
精霊も、そしてギンロウも互いに見つめあい動きを止めていた。
その様子に周りの女性陣も二人の動向を見守っていた。
ギンロウは戸惑っていた。唯の悪戯のつもりで彼女の胸に触れた。その瞬間、『ドクン!ドクン!』と
心臓が、いや、血液そのものが脈打つ。思わず彼女を見ると彼女も自分を見ていた。
精霊は歓喜に震えていた。彼が自分の胸を揉もうとするの分かっていた。少しくらいいいかと思い
あえて見逃した。彼の手が私に触れたその瞬間・・・私の体が、いや、魂そのものが震えた。
そして理解した。彼こそが私の求めていたものだと。そして、彼を見つめる。
そして、精霊はギンロウに勢い良く抱き着いた。