#7
「ただいまー」
帰ってきても誰もいない。
前だったらお母さんが「おかえりー」ってニコニコ笑って迎えてくれてたのに・・・。
「・・・寂しいなー」
隆ちゃんも先生だから帰るのは10時くらいだし。
ブー、ブー
携帯のバイブが鳴る音が聞こえ、私は鞄の中から携帯を取り出した。
隆ちゃんからメール・・・。今思えば初メールだ。
【本文: 今日夕飯用意しといて。早く終わりそうだから】
・・・それだけか。
でも早く帰ってきてくれるのは嬉しいかも・・・。
時刻午後5時。
冷蔵庫の中を見て食材が足りないことに気付き買い物に出ていた。
「今日は、パスタにしようかな」
なんて呟いて食材を選んでいた。
「だよね~、あの子あんまり可愛くないし~」「ああ、里香のほうが可愛いよ」
・・・んん?この声は・・・。
そう、昼間の彼。拓也とか言ってたっけ?
あれは・・・昼間いた彼女じゃない。あれが新しい彼女!?ありえない。
ってあの子・・・、坂井里香じゃん!あ、あのモデルの!?まあ、それなら別れる・・・んなわけない!
「ちょっと、あんた!」
私はいつの間にか彼の前に立ってお説教をしようとしていた。
「女作っては捨ててさ。女を道具としてしか思ってないわけ?新しい彼女出来たから、じゃーな?意味分かんない!女にとって恋は一生の思い出なのよ!」
スーパーマーケットに響く私の声。
私は我に返り、周りの目を見て赤面する。
「何この女。知り合い?」
「知らねえ、ってか道具にしか思ってないって女も一緒だろ。経験薄いくせに気取るな」
な、ななななな、なあ!?なんなんだこいつ!!
「行こうぜ」「うんっ」
く、くそ野郎!どうせ経験薄いですよ!だから何?恋愛は一度でいいのよ!
「むかつく!」
買い物を済ませた後も頭にずっと血が上っていた。
あんな恥かかされて、それに何も言い返せなくなるなんて!
「くそ!」
足元に合った石ころを蹴る。
「いてっ!」
誰かに当たっちゃった!?
「すみま・・・って隆ちゃん、おかえり」
「美咲か、買い物帰りに石蹴るって子供かよ・・・」
「別にいいじゃん。イラってくる人がいたのよ。さ、帰ろ!」
そういって私たちは家に入っていった。
そう、こんなところ見られたら終わりって分かってた。
でもね?どうしてこんなときに見られちゃうんだろうってなるんだよ?
「へ~、そういうことか」